EMDディーゼル機のダイナミック・ブレーキ
back issue Vol.17 May 31, 2001, re-edited Nov. 25, 2010
「SDのDB」だけで何のことか判ってしまうのは、やはり尋常な人種ではないんでしょうね。
BBS掲示板で、新宮氏と鈴木氏との間でやり取りされているお話なんですが、電気式ディーゼル機関車でのブレーキ方法の一つにDB、すなわちダイナミック・ブレーキ=発電制動があります。この装置は、車輪を回すモーターに、発電機の作用をさせて、起こした電気を機関車に積んだ抵抗器で消費するという仕組みでブレーキを掛けるというものです。
EMD GP38-2 (N-scale Atlas product) 2024-01-11画像追加
長い下り勾配が続く線区で、車輪を擦る制輪子=ブレーキ・シューを使うと、制輪子や車輪の摩耗量が嵩む上に、温度が上がって摩擦係数が下がりブレーキが利き難くなってしまいます。これに対してダイナミック・ブレーキは、単にモーターが回って抵抗器が発熱するだけですから、摩耗部分が無く安定的にブレーキ力を保つことが出来ます。
日本の例では電気機関車でEF64がこれを持っています。GM/EMD社製のダッシュ2までの機関車には、ロングフード=機関室の中央上部に装備されていて、4軸機で1つ、6軸機で2つのファンが、この直下にある抵抗器で発生した熱気を排出する役目をしています。
ところで、最初は主にこの抑速ブレーキが目的だったのですけれど、どうもSD40-2の頃から停車時にも使用する鉄道が現われた様です。ただし、発電機となったモーターはソコソコの回転数以上でないと電気を十分に起こすことが出来ませんから、停止直前まで効率的にダイナミック・ブレーキを作用させようとすると、特別な装置が必要となります。これがエクステンディッド・レンジ(有効速度域拡大)ダイナミック・ブレーキというわけです。
お二人のやりとりで、ダイナミック・ブレーキのバルジ(張り出し部)にある点検フタがどうのこうのとおっしゃっているのは、この部分のことで、SD40-2ではこの形態が1980年から変更になっている様だというお話です。このエクステンディッド・レンジ装置をバーリントン・ノーザン鉄道BNは採用しなかったので、残念ながら私は余り関心がありません。(その点検フタが冒頭写真の赤丸部分です)
HOスケールにすれば5mm角ほどの部分ですけれど、鈴木、新宮両氏をネタにメール・マガジンを1本、仕立ててしまいました。
ところで、ダイナミック・ブレーキのファンは、ラジエターのそれと異なり、1980年以降もQファンとなっていません。これは何故なんでしょう。ダイナミック・ブレーキが利くときだけ回るなんてことがあるのでしょうか。そんなことをしたら、ファンのベアリングが痛むと思うのですが……
【追記】以下は、鈴木俊一氏よりのメールです。2001-06-01 ダイナミック・ブレーキの話題、早々に採り上げて頂き有難うございました。
Extended Range DBはおそらく停止制動に使われているとの事でしたが、手持ちビデオにそのものズバリの場面がありましたのでお知らせします。
SPとKCSのSD40M-2(嬉しいことに両方共、元ネタはSD45!)が減速しつつヤードに入って来る場面を撮ったものですが、エンジン音以外にかなり大きな音が聞き取れます。これがおそらくDBファンで、オルガンの重低温にも似た迫力ある音です。 ナレーションでも「Dynamic Brakes were roaring……」ってな事しゃべっていました。
このVHSビデオは、ルイジアナ州シュリーブポートよりミシシッピ州メリディアンに至るMeridian Speedway呼ばれるKCSの路線をとり上げたPentrexのもので、タイトルは“KCS - Across the Meridian Subdivision”です。ただ、DBの音を聞くのが目的でしたらSP等の山越えモノの方が面白いでしょうね。お手持ちのビデオも改めてチェックすると意外な発見があるかもしれません。
【追記2】そのものズバリの解説を見つけました。EMDのダッシュ2では限流値制御によりグリッド抵抗の短絡を3段階で行うと読めます。2024-01-11
Railroad.net Maximum Dynamic Braking on the EMD Dash 2 Locomotives will happen in the area of 24 to 28 mph with 700 Amps on your Loadmeter if things are set right. What Extended Range Dynamic Braking does is this, it shorts out Grid Resistance to enable you to have greater dynamic braking effort at lower train speeds. Step 1 will pick up in the area of 19 mph +/- and Step 2 will happen around 14 mph +/- and Step 3 will come in around 8 mph +/-. By this happening, it will allow you to have up to 700 amps of grid current at these lower speeds other then only having it at 24 to 28 mph. This by the way is not being controlled by the Axle Alternator, it just so happens in these speed ranges but this is controlled by Traction Motor Field Amps and Dynamic Braking Grid Current. When the Traction Motor Field Amps are greater then the Grid Amps, extended range contactors will pick up and when Grid Current becomes greater then Traction Motor Field Amps the Extended Range Contactors will drop out. Traction Motor Field Amps are set for 960 Amps and the Grid Current is set for 700 Amps.
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