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2004/06/03

GSBのSD40-2はアサーンになぜ敗れた

Why GSB's SD40-2 wonder lost to Athearn's?
melma! Back Number Vol.53 2001/09/14

 鈴木俊一氏と、ディーゼル機のキットバッシュについてダベっていると、必ず話題となる製品があります。それが、1983年にGSB Railというメーカーの売り出したSD40-2です。アサーンの旧製品も、ほぼ同時に発売されて大ブレークしましたけれど、これを遙かに凌駕する出来栄えだったGSBが、どうして消えていってしまったのだろうかという話です。
 氏は、新発売された直後に天賞堂で大枚18,000円を払って求められたとのことで、その証拠に何と、とれいん誌の83年8月号に製品紹介が載っていて「天賞堂に入荷予定」とあります。

 これに対して私は、メインライン・モデラー誌の広告などで知るだけでしたので、是非とも現物を見たいと思っていたところ、先日、とある模型店にアンデコの委託品が並んでいて、勇んで買い求めました。SD40-2は99年にカトーが発売し、アサーンも改良版を出した後ですから、GSB製品に一般的な値打ちが存在するはずが無くて、骨董品的な意味を見出している私にとっては安い買い物だと一人、ニンマリしてしまいました。

とれいん誌83年8月号p77の製品紹介によれば、BN、Chessie、ATSF、UP、L&Nおよびアンデコが輸入されたという。 このアングルからでも全体構成のシャープさを感じていただけることだろう。箱の表面に印刷された図面はMR誌からの転載で、細密感を盛り上げるのに一役買っている。

発電ブレーキ回りはアサーン製品同様に取り外して、その有り無しを作り分けられる。

バッテリーボックスのディテールは別付け、手ブレーキハンドルはラチェット式と丸形から選択できる。

ラジエターグリルを別付けとして、格子タイプかコルゲートタイプかを選択できる。

 いやあ、見れば見るほど良くできています。もちろん20年前のレベルとしてですが、グラブアイアンとアイボルトが金属線材の別添え、ラジエターグリルはメッシュとコルゲート、ハンドブレーキもレバー式と丸ハンドル式、ダイナミックブレーキ・ユニットは当然有りと無し、またエクステンディッド・レンジのフタも別添え、床下の燃料タンク外殻はプラスチック・モールドなど、我々の様に各部を作り分けたい人種にはもってこいのスペックを持っています。また、車体とシャーシの固定も外見に影響を及ぼす構造ではありません。なお、ショートフードは81インチ・タイプの一体型で、これが取替式でないのは、ボディシェルの強度を維持する目的だと思われます。

ハンドレールが破損が確実なスチロール樹脂というのは、不思議の一語に尽きる。一般にはアサーン製品の流用がなされていた様だ。グラブアイアンなどは折曲済の洋白線?が添付されていて、この当時としては驚異的である。

 一方、このGSBがアサーン旧製品に劣るのは、ハンドレールが太くて平面的なスチロール成形であることと、ロングフード点検フタが筋彫りで表現されていることです。また、端梁が厚く、モールドがシャープさに欠けるのは、射出成形技術の差でしょうが、近年のRPP製品よりはマシです。

 ということで、これほどまでに優秀だったGSB製品がなぜ、消えてしまったのかという疑問が湧いてくるわけです。

 想像できる理由の第1は、メーカーとしての資本力、販売力の差でしょうか。いくら優れた品物でもモデラーの前に現物が存在しなければ、誰も買えません。20年前のことですから、アメリカでも通信販売がそれほど進んでいなくて、全米で売るためにはソコソコの生産量を上げる必要があったという仮定です。その面でアサーンの方は当時でも全米最大のメーカーですから、遥かに優勢でした。

 第2の理由は、製品の見映えではないかという予想です。特にハンドレールの太さで、アサーン製品の方が当時としては格段に細い鉄線を持っていたので、トレインセットを求めるクラスの方々が選択したのではないかということです。すなわち、“弄る”ことを目的とするモデラーには歓迎されても、その人数も当時はタカが知れていたという状態だったという可能性です。もちろん、今でも事情はそんなに変わっていないということも考えられますけれど……。一つ不思議なのは当時の広告写真で、このハンドレールがアサーン同等の線材に見えます。


モーターはマシマ製。ドライブシャフト式の高級志向とはいうものの、材質的には耐久性がちょっと心配である。燃料タンクはプラスチック射出成形の外側とウエイトの金属とを上手く構成していて、この辺りはアサーン製を遥かに凌駕している。

 第3は、これは鈴木氏が特に主張されているのですが、GSBのシャーシ周りが華奢だということです。他社の製品がほとんど全てアルミダイキャストの一体構造となっているものを、GSBはプラスチック製で、また動力伝達のカップリングも細めの造りとなっていますから、走行距離が嵩んでくるとトラブルを起こしたのではないかという推察です。特にSD40-2は、多重連でのハードな運転が似合いますから、ありそうな話ではあります。また、走行安定性に寄与するフライホィールもありません。

 価格の面で比較すると、GSBの定価は39.98ドル、アサーンが32.50ドルですが、小売り段階ではデスカウントされて29ドルと19ドル前後と比率が広がっています。3:2と、出来映えに相応して割高感もあったことでしょう。

 ところで私も買ってはみたものの、弄る気は全く無くて、単なるサンプル的なコレクションのつもりをしています。ただ、このGSBの採用した構造は、MM誌などを賑わしている“Cannonazed”、キャノン社製のパーツを最大限に使って、既製品に無い形式を作り上げる際に格好の手本となると思います。
 なお、SD40-2は別にバックマンも出していましたが、こちらは、とてもスケールモデルと呼べるシロモノではありません。

報道に拠れば、事件以来、運行が停止された航空機に代わって、アムトラックに乗客が集中しているとのことです。空が再開されれば、直ぐに元の木阿弥になることは目に見えているとは言うものの、幾ばくかは定着するでしょうから、突き付けられていた補助金打ち切りの最後通牒に対して、一縷の望み、一条の光ではあります。しかし、この大事なときに、信頼を損なう事故を起こしてしまうとは、運がありません。
 また、テレビのニュースで「ペンシル“ベ”ニア」と呼んでいてビックリしました。綴りは“Pennsylvania”ですから、絶対に「ペンシル“バ”ニア」だと思いこんでいたのですが……。もっとも、手持ちの辞書も英和が“ベ”で、和英の方が“バ”という混乱ぶりです。

Mm8403b【追記1】メインライン・モデラー誌1984年3月号にあったGSB Rail LTD.の広告を引用しておきます。何と1頁大を1年ほど続け、それから86年頃まで半分ほどのスペースとなって継続していました。
 この広告に拠れば、前述の鉄道に加えて、ミルウォーキー鉄道とシーボード・システムも発売されています。2010-02-06

【追記2】Tony Cook氏のサイトに、このGSBの情報が一部紹介されていて、2010年中にもう少し詳細を披露すると予告がされています。2010-03-04

【追記3】アメリカの掲示板Trainorders.comに興味深いエピソードが紹介されました。NMRAコンベンションでGSBが試作品を展示したときのことです。ブースを訪れたIrv Athearnが金型を誉めようとしたんですね。そうしたら、GSBのメンバーがアサーン製品の品質をけなしたようです。そこでIrvはモーテルの部屋に戻って自社の担当者に電話で発破をかけたということです。2019-07-25

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