アサーン製50' PS-5344ボックスカー
昨年夏前の発売で、既に旧聞に属するとは言うものの、私にとっては愛好するBNが保有しなかったことから全く食欲が湧かず、全く見てもいなかった製品です。
それが先日覗いたイチフジ・モデルに在庫があったものですから、試しに1両を求めてみました。もっとも先日、ジェネシス・シリーズで貨車を一挙に6種類発売とアナウンスがありましたから、遅きに失した感は否めないのですけれど、一応、報告しておきたいと存じます。
実車は、とれいん誌2000年5月号p61やMRG誌2001年1/2月号p17などの紹介記事に拠れば、プルマン・スタンダードPS社が1977年から81年に掛けて製造とのことです。
さて、梱包を開けての第一印象は、新鮮味が無いというのが正直なところです。モールドのシャープさや塗装・レタリングの切れは従来品でも十分なレベルで、ディテールの別添えパーツ化が進んだとはいうものの、他社製品で経験している身にはアッと驚くような面はありません。縦リブのキワやサイドドアの深いコルゲート・モールド部分でのレタリングのカスレは、仕方の無いところでしょう。
アサーン製品としては、床板周辺の構成が大幅に変わりました。
従来は、床板と梁(いわゆる魚の骨)でウェイトの鉄板を挟むものでしたが、この製品では床板が梁と一体となっていて、その上にウェイト鉄板を載せます。それもあって、ドアが固定となり、外見重視のモデラー向きの趣きです。この辺りは、品番が5460番台のメカニカルリーファーで始まった構造です。
比較する旧製品は"outside-braced "RailBox" boxcar"で、カラーリングが同じイエローの"ミシシッピー・エキスポート"鉄道です。
ウェイト鉄板は、従来と材質、寸法共に全く一緒で、錆防止に塗装の手間が必要です。
床板への取付方法について説明書には「ACCを使え」とありますが、これは確か瞬間接着剤のことですから衝撃で外れ易く、お勧めできません。一般には合成ゴム系が使われ、私は住宅用の水性コーキング材を常用しています。(後には厚手の両面テープに変更)
床下のブレーキシリンダー、動作弁、空気ダメは、配管・ロッド・リンクと共に別の一体モールドとなっています。ただし、細いモールドを折らずにランナーから切り出すのが一仕事でした。切る場所は現物だけでは判断できず、示された説明図でよく確認する必要があります。折角なら、もう少しマシなモールドと、台車へのプルロッド追加などの発展性を備えてほしかったところです。
カプラーについても大きく変わり、別体のポケットに収める構造になって、ケーディー・タイプのE-Zカプラーが付属しています。
ここでの注意点は、ポケットのフタの裏表で、タボがある面を内側にしないと床板へ取り付けた際に密着しません。組立および取付には、ポケットのピンと、別添えの短いピンを使います。説明書に指示はありませんが、私は脱落を心配してサラサラタイプの接着剤を流しています。機器の艶が異なったり、無塗装であることを気にされる方は、この段階で床下周りを塗装した方がいいでしょう。
なおカプラー高さは、このままでケーディータイプの規定値どおり10mmとなりました。当たり前のことですが、アサーン製品としては画期的なことです。
台車は紹介記事にもある通り、従来製品そのままです。おまけに車輪径も33インチ(9.5mm)のままですから、このプロトタイプのような100トン積(多分)貨車でスケール通りの36インチ(10.5mm)に交換すれば、カプラー高さが計算上0.5mmだけ上がってしまいます。この場合は、カプラー取り付けにシムを噛ますことになります。
ボディの付属パーツは、サイドのグラブ・アイアンに使われている金属線材と、ハシゴなどのプラスチック・モールドです。これらの取付穴の仕上げが購入者に任されていて、3種類のドリル径が説明書に示されています。
いわく、グラブ・アイアンが#79(0.015"=φ0.4mm)、ハシゴとステップが#76(0.020"=φ0.5mm)、タックボードとドアラッチが#65(0.035"=φ0.9mm)です。私は、グラブアイアン用のみ0.5mmφで開け、他はサラサラタイプの接着剤を孔に垂らして柔らかくした上で、パーツを押し込む方法を採りました。
グラブ・アイアンは、この製品の“売り”の部分でしょう。しかし、そのままでは黒い金属素材のままですので、取り付ける前に塗装しなければなりません。私の購入した品番5831、Lamoille Valleyはイエローですので、手近にあったタミヤのキャメル・イエローとしました。面積が小さい場合は、少しぐらい色調が異なっても、全く気になりません。塗装作業はシンナーで洗った後、バルサ材に突き刺してプライマーとイエローを吹きました。足の長さが短いので、突き刺しに少しテコズっています。
プラスチック・モールドのハシゴとステップなどは、十分過ぎるほど細く、却って完成後の破損が心配です。私の購入した製品は、ハシゴの一個所が折れていて、一部が少々変形していましたが、ハシゴだけ倍の個数が添付されていましたので事無きを得ています。サイドドアのラッチは、孔らしき窪みがあるものの、よく分からず、適当に接着しました。
なお、妻面下部中央に小さな穴が3つ開いているのは、カプラー上のプラットホームの取り付けを考慮したモールドですけれど、パーツは入っていません。旧シリーズを含め他の製品では必ず表現されている部位だけに省略は解せませんが、多分、プレイノPlano社のエッチング抜きパーツで品番128辺りが適合するのだと思います。私は無しのままとしました。
というわけで、この製品は総体的に見て“バランスが悪い”というイメージです。特に私のような怠け者には“面倒臭さ”がどうしても先に立ちます。しかしその一方で、塗装済の車体を弄らず床下機器等を作り込みたいという方々とっては格好のベースなのでしょうね。
ところでジェネシス・シリーズの貨車は、アサーン やトレイン・デポ のHPに既に案内されています。貨車については先日もBullmoose稲垣さんが、プロトティピカルと壊れ易さの間での悩みを綴られていましたが、一般的には、安価で、組み易く、手間が掛からず、また扱いに神経を使わなくて済む製品であってほしいものです。
【追記】写真の修正と撮り直しを行いました。
なお、この車は70トン車、車輪径は33インチ(9.5mm)で正解でした。標記の"LDLMT 158200"と、"LT WT 61800"を足すと、220,000ポンドとなり、110米トン。換算して99,790kg、約100仏トン。で、100トン車か、というと、さにあらず。これこそが70トン車の証左なのです。「100トン・ハイキューブ・ボックスカーの掟」をご覧ください。2011-08-20 2016-01-17
【追記2】2024年4月のアサーン新製品紹介にこのモデルが出ていました.定価33.03ドルは今日としては安いと思います.そろそろ長期ストック品を仕上げなければいけませんね.2024-04-07
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