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2004/07/02

GEとGM(EMD)の経営者と鉄道

back issue Vol.62 Oct. 5, 2001, re-edited on Nov. 30, 2010

“ジャック・ウェルチ”といえばGEの有名な前会長で、さらにこのGEとは、我々の世界ではディーゼル機関車のトップ・メーカー、ジェネラル・エレクトリック社のことというのは皆さん、よくご存知のことでしょう。

 このGE前会長の回想録の連載が日本経済新聞の「私の履歴書」欄で10月1日から開始されました。もちろん、私は鉄道関係の事績が登場しないかという興味で読んでいますが、さっそく2日に記載がありました。
 いわく、小さい頃はセーラムに住んでいたこと。父親はボストン&メーン鉄道の車掌をしていて、ボストンからニューベリーポートまでの10駅、60キロの区間に乗務いていたとのことです。今後も、我々の趣味の範疇について本人の口から言及されることを楽しみにしています。【表紙写真は紀伊国屋書店BookWebから転載】

 ところで、2年前にもニフティへ同氏の評伝についてアップしたことがありましたが、ご参考までにこれと、さらにライバル会社であるジェネラル・モータース(EMD)の名経営者であったA.P.スローンJr.の自伝についての駄文も再掲しておきましょう。

99/10/06【米国型】GE会長ジャック・ウェルチと鉄道

 今,話題のベストセラー「ジャック・ウェルチ-はっきり言おう」ジャネット・ロウ著,平野誠一訳,ダイヤモンド社刊を読んでみました.というのは,この人物が会長を務めるGE=ジェネラル・エレクトリック社が,アメリカのディーゼル機関車における2大メーカーの一つという意味で,関心を持ったからです.

 ジャック・ウェルチJack Welchは,経営者として注目を集めている人物ですから,皆さんも一度はその名前を聞かれたことがあるかも知れません.ジェネラル・エレクトリック社General Electricの会長兼最高経営責任者CEOを1981年以来務め,「もっとも尊敬されるCEO」に3度も選ばれているそうです.そういうわけで,本自体の主題は経営手法ですから,その面では中々示唆に富んだ書物でありました.

 一方,鉄道関係の記述も思っていたより多く,ダッシュ7~9の登場と重ねあわせると,感慨深いものがあります.以下に,鉄道関係の記述個所を列挙しておきます.なお,内容は我がK&K Worksの手で要約していますが,特に「」内は原文の表現ですので,念のため.

p17:生まれたのはマサチューセッツ州ピーボディで,生後まもなく魔女裁判で有名なセーラムに移る.父親は「ボストン・メイン鉄道」の車掌だった.

p188:80年代に「ハイテク」の「安価な機関車を開発して」売り出したのに対して,「市場が下降局面」になり「受注数台」という「底ばい状態が数年続い」た.

p198:「壁のない組織」がどういう効果を上げているかの例として「遠隔診断の技術は……走行中の機関車の性能をチェック……することができる」

p225:「1979年,ペンシルベニア州エリーにある機関車製造部門を強化」し始め,「3億ドルを投資したが,鉄道輸送は復活しなかった」.しかし,1987年に「中間工程の見直しに成功し」て,33%程度だったシェアを75%という「独占的な」数字とできた.

p266~:「GEとウェルチの歩み」
    1878年 「エジソン・エレクトリック・ライト・
       カンパニーが……誕生」
    1889年 「エジソン・エレクトリックと,トムソン・
       ヒューストン・エレクトリックが合併し,
       ゼネラル・エレクトリックを設立」
    1895年 「GE,世界で最も馬力のある機関車を
       製造し始める」
    1935年 ウェルチ誕生
    1960年 ウェルチ,GEに入社
    1981年 ウェルチ,GEの会長に就任
    1982年 「機関車部門の製造自動化に3億ドル…投資」

 この1895年に製造された「世界でもっとも馬力のある機関車」とは,何を指しているのでしょうね?  それ以外では本の内容で趣味的に,ほとんど得るところはなさそうです.ただ,組織の中でのリーダーのあり方などというテーマに興味を持たれている方には面白く読んでいただけることでしょう.
  モデルには関係ありませんが,“基本的”知識という意味で,ご紹介しました.

00/06/09 【米国型】EMD創設期の最重要参考文献を発見

 通勤途上の私鉄駅前に「ブックオフ」という名前の古本屋が開店したので昨夕、寄ってみました。「コミックとタレント写真集ばかり」と聞いていたのですが、どうして、各種単行本もあって、またカメラや電化製品まで置いてあるのには驚きました。安さもソコソコです。コミック・コーナーが立ち読みの若者でいっぱいだったのには、他人事ながら、店の行く末を心配してしまいましたけれど……。【表紙写真は2003年に出た改訳版で、紀伊国屋書店BookWebから転載】

 さてその中で、興味深い本を見つけました。「GMとともに-世界最大企業の経営哲学と成長戦略」という題名で、ジェネラル・モータースの副社長に1918年に就き,1956年に会長を退いた,A.P.スローンJr.という人物の自伝です。総600ページという大冊の目次を探すと「ディーゼル電気機関車」という章に16ページも割いてあったので、900円という安さに釣られて買ってしまいました。

 基本的には自動車屋の本ですから、キャデラックやビュイックの経緯など、大部分はそれと経営の関係で埋められています。
 機関車もそのスタンスで語られていて、小型機関車を手掛け始めていたEMCと、船用エンジンを生産していたウイントンの2社を、ディーゼル機関の将来性に目を付けたケタリングという人物が中心となって買収して自社のEMDとしたこと。まだ売り物とは言えなかったエンジンを1933年のシカゴ世界見本市に出展したら、CB&Qのラルフ・バッドという社長が注目して流線型動車パイオニア・ゼファーの就航につながったこと、蒸機と一緒のオーダーメードだったものをレディーメードとした結果、コストが下がり爆発的に普及したなどとあります。

 なお、「蒸機の置き換え需要が一巡しつつあるので、これからは外国だ」という様なグローバルな視点は経営者として当然のことでしょうが、私としては少し寂しさを感じました。

 オリジナルは1963年刊の「My Years with General Motors」、邦訳はダイヤモンド社1967年初版、私が入手したものは1981年27版、しかも4,500円というのですから、多分ベストセラーの部類に入り、経営指南書として確固たる地位にあったのでしょう。少しカビ臭い本ですが、多くの古本屋で探せると思います。

 ところで、機関車の章に鉄道書に付き物の写真や図版は全く無く、また「ディーゼル水力機関車」などという言葉が出てきたりと、和訳は必ずしも読み易い文章ではありませんが、GM-EMDに御興味のある方にお勧めしたいと紹介させていただきました。

【追記】“GMと共に”は、“やはり”新訳が出ました。が、5,250円という値段には驚愕です。アート紙を使った写真集ではないのですから‥‥。旧訳が29版を重ねたとのことで、広く出回っているはずのこちらで我慢する手はあります。2010-11-30

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