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2004/08/09

感動秘話:我、カトーの剥離に成功せり!

How to remove coating of paint over Kato models by isopropyl alcohol, part 2 melma back number Vol.79, Dec. 5, 2001, re-edit Mar. 19, 2010

カトーSD40のショートフードやキャブなどをイソプロパノールで剥離したところ

 「カトー製品の塗装剥離は今まで難しいとされていたが、RMJ誌10月号にイソプロピル・アルコールの91%が有効と書いてあった。しかし、市井の薬屋には50%と70%しか置いてなかったので、あきらめた」と本誌Vol.74(2001年11月6日号)でお伝えしていましたが、当然、心の片隅では引っ掛かっていまして、たまたま通りかかった某大学病院正門前の薬局に入ってみました。

 しかし案の定、陳列棚には見つからず、レジにいた女の子に尋ねると首をひねるばかりです。奥から「何や?」と出てきたゴマ塩頭の親父は品名を聞くなり、「あったはずや」と言ってそこら中の戸棚を開けたり、奥に引き込んだりと大騒ぎをした末に、1本のビンを出してきました。

 そのラベルには「イソプロパノール」とあるだけで成分表示が何もないので、「本当に91%か?」と首を傾げると、「これは原液だから、薄めて使え。70%が殺菌力が一番強い」との答え。「じゃあ、無水アルコールか?」と問うと、「そんなもんだ」と言うので、もらって帰ってきました。値段は、親父の毒気に当てられて覚えていません。500ml入りが、千円札で釣りをもらえたのは確かです。

 肝心のモデルの方は、カトー製品が剥がし難いことを私は予め認識していますので、手持ちは総てBNグリーンかアンデコ=無塗装となっていて、試してみる対象がありません。
 仕方がないのでヤフー・オークションで出物を物色すると、タイミング良くCSX色のSD40が出品され、競争者無しで落札出来てしまいました。郵送料と送金手数料込みで約6千円ですから、お買い得といえると思います。また、同じSD40でも、つい先頃、再発売されたものではなくて、これは10年ほど前のロットのはずです。

 モデルが届くと早速、瀬戸物の容器にアルコールを注ぎ、分解したキャブを浸してみました。

 ところが不思議なことに、10分経っても、20分経っても変化がないのです。そのまま2時間置いても変わりません。RMJ誌に「古歯ブラシで擦る」とあったのを思い出して、ゴシゴシとやってみたものの、屋根のブルーは落ちてくれないのです。一方、側窓下の車番はだんだん薄くなってきて、さらに擦ると完全に取れてくれました。グレーの上にブルーの文字の部分です。「それでは」と、ティッシュペーパーにアルコールを染み込ませて他のロゴやレタリングを拭くと、落ちます! 他に2年前から加工途中のBN色のSD40を持ち出して、グリーン上の白文字を擦ると、これまた取れます。

 塗装の部分も実は、全く落ちないということは無くて、CSXブルーとBNグリーンの塗面を拭うと、白いティッシュに微かに色が付いてきます。ただし、その量はほんの僅かで、実用的な剥離とは程遠い作業と言わざるを得ません。

 それで、このアルコールは70%か何かの間違いで、塗装部分は駄目でも、タンポ印刷部分なら容易に落とせる、という辺りで結論付けようと考えました。そして確認のために製造元へ電話で問い合わせをしてみたわけです。

 すると意外や意外で「イソプロパノールは、日本薬局方で濃度が94%以上と決まっている」とのことです。「では、貴社の製品は具体的に何%なのか?」と問い、請われて製造番号を伝えると、しばし待って「99.8%」という答えが返ってきました。

 しかし、落ちないものは落ちないのです。24時間でも駄目でした。99.8%が駄目なら、記事通りの91%ならどうだとばかり、計量カップを買ってきて厳密に薄めてチャレンジしたものの結果は一緒です。(後刻、冷静になって考えれば、91%というのは重量比ですから、秤で間に合ったのでしょうが、このときはそういう余裕もありませんでした。)

 ただし、表面が少しヌルヌルしている様な気がしたことから、根気よく擦れば落ちるかも知れないと考えて、コタツに当たりながら、カミさんが「臭い!」と文句を言うのを後目に、シコシコとやっていて……、ここで閃きました!
「温めたらどうか!」

 ゴマ塩親父に「火気厳禁」と言われていましたから、コタツの中へ入れるわけにはいきません。残された手段は湯灌(ゆかん、火に掛ける「湯煎(ゆせん)」ではありません)です。早速、大きな鍋に電気ポットの熱湯を注ぎ、そこへアルコールの入った器を入れれば、臭いはさらに強まり、カミさんは別室へ逃げていきます。こちらの鼻は麻痺していて全く感じません。

 結果は、落ちました! 歯ブラシで擦ると、僅かずつですが落ちていきます。なんとグレーの下にブルーが吹いてあります。アルコール液中にはグレーとブルーの塗料粉が拡散しているのが見えます。これはイケます。

 しかし、しばらくすると剥離は進展しなくなりました。それで今度は、ポットの湯を沸騰させて使ってみると、完璧です! 指を入れていられないほどの熱さでは面白い様に剥れていきます。熱湯をもう一度入れ替えアルコールも継ぎ足して、ショートフード部分も落としました。
 ただ、写真を見てもらうと判るのですが、塗膜は完全に落とせたものの、キャブの表面は僅かにブルーに染まっている様な感じのままです。

 なお、ここまででアルコールは約200mlを消費し、もちろん、プラスチックの材質には全く異状がありません。

 冒頭の写真は、カトーSD40のショートフードやキャブなどをイソプロパノールで剥離したところです。

 ところで、ロングフード上面などはBNスキームでは黒ですから、落とす必要がないと判断しています。車体全体に対して完璧を期すとなると、やはりHOスケールの大きさでは大変でしょう。カトーの塗膜は非常に薄いので、この上から塗り重ねてもディテールの潰れに結びつくことは無いはずですから、新しい塗装スキームと見比べて、透けたり浮き出る心配のある塗装や、場合によっては文字やロゴだけ落とすとよいと思います。

 Nスケールの場合は、塗膜を極限にまで薄くしたいと考えられることもあるでしょうし、車体が小さいですから、全体を剥がしてもいいでしょう。いずれにしろ、カトー製品でお悩みの方には是非お薦めしたいと思います。

 以上、今回は感動秘話をお伝えしました。

Vol.77(11月23日号)のアンケートは、皆さんがお住まいの地域についてでした。ご回答をいただいた26人の方には心より感謝申し上げます。

北海道 0人 (0%)
東北 0人 (0%)
関東 13人(50%) *************
中部 3人(12%) ***
近畿 8人(31%) ********
中国 0人 (0%)
四国 0人 (0%)
九州 1人 (4%) *
北米 1人 (4%) *
その他 0人 (0%)

 やはり50%が関東の方でしたが、近畿・中部でそれに匹敵する43%もおられるということは、これなら“旗揚げ”出来るかもと思いました(笑) 北米のお一人は心強い限りです。
 それ以外は九州だけというのは少し寂しいです。読者倍増のプロモーション活動しなければいけませんね。

記事の転載に当たって若干の修正を加えています。その後、自動車用ガソリン水抜き剤を使う方法が普及し、当溶剤はIPAと呼ばれるようになりました。アメリカ型鉄道模型大辞典「イソプロピルアルコール」をご参照ください。2010-03-19

【追記】燃料用アルコールでレタリングや塗膜を落とす話をアップしました。2019-10-23

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