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2004/08/02

ラ・ベル木造貨車キット組立の顛末

This article was edited Dec. 1, 2010 first, and was moved here Feb. 8, 2016: Kit-assembling of La Belle Freight car O-scale models
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 ことの発端は1997年の7月にシロ/松本浩一さんがニフティの外国型会議室へ、古いラ・ベルの木製キットの復刻版が発売されたと発言されたことでした。このLa Belle Woodworking Company( 同社サイト )というブランド名は、キャンベルなどと共に木製キットでは知られたブランドです。
 早速、氏が取り寄せられたパンフレットのコピーをいただき、注文したのは言うまでもありません。ただし、ブツは当時、興味を持っていたOスケールの貨車で、その年の年末年始の休暇を利用してキットを組み始め、ほぼ1ヶ月で5両を完成させることが出来ました。その様子を逐次、ニフティに報告していた文章が残っていましたので、少々アレンジを加えてモデルの写真と共に御披露しましょう。【画像はクリックで若干、拡大】

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 品番O-300 CL&W Gondola

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 品番O-301 Soo Line Box Car

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 品番O-302 Racine Wagon & Carriage Box Car

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 品番O-304a Wisconsin Central Flat Car

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 品番O-304b Astoria & Columbia River Flat Car

1998/01/03 組立開始宣言

 製造元から個人輸入したラ・ベル社の木造貨車を昨年末から組み立て始めました。日記によれば、7月19日に手紙で注文を出して、9月2日にインボイスが届いています。荷物の到着した日を記録し忘れていますが、船便ですので、たぶん10月下旬だったと思います。

 さて、いつもはキットを入手しても、そのまま保管するのが定石の私としては、異例に早い着手となりました。というのも、箱を開けてビックリで、レタリングがドライ・トランスファー、すなわちインレタ、先輩諸氏からこの「インレタは新鮮さが命」と伺っていたシロモノだったからです。

 取り寄せたのは、ボックスカー2両、ゴンドラ1両、フラットカー2両です。リーファーは、手持ち在庫に他社製品がたくさんありましたので、避けました。いずれも私の設定年代をだいぶ遡るトラスロッド付の貨車です。

 ところで、着手して唖然としたのは、寸法精度の悪さです。今まで種々キットを組んできましたが、これほど悪いのは初めてです。妻や屋根の心材という基本構造の高さ幅が滅茶苦茶です。ボックスカー1両を何も考えずに始めたところ、取り返しの付かない事態に陥っています。手を着ける前に、全体構造と寸法を確認することは、絶対に必要です。

1998/01/07 接着剤は二刀流

 キットは、車体構造材がバスウッドで、それに取り付けるパーツがホワイトメタルという取り合わせです。各部品の組み立てには、釘やネジを全く使いません。もちろん、台車とカプラーは別です。

 このうち、木材同士の結合には当然、ホワイト・ボンド、正確に言えばビニル・エマルジョン系を使います。ただ、ここで問題なのが、心材の表面に外装の薄板を貼り付ける作業です。というのは、薄板にボンドを塗って心材の上に押しつけて、しばらくすると、薄板の縁が反って剥がれてくるのです。また、貼り継ぎしている部分で、両側の板が押し合って、競り上がるというような現象も見せました。

 どうもこれは、薄板が接着剤の水分で伸びてしまうためのようです。それで、水性であるホワイト・ボンドの代わりに瞬間接着剤、シアノ・アクリレート系を使ってみました。もちろん、ゼリー状の木材用です。薄板の上に接着剤を押し出し、そこらにある不要な板をスクレーバーにして広げ、所定の位置に圧着しますと首尾良く成功しました。接着剤が固まるまでに若干の余裕時間があるようで、わずかでしたら取付位置の移動も利きます。

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 これに味を占めて、金属パーツの車体への取付にも使いました。本来、2液混合タイプ、エポキシ系を使おうと思っていたところです。このゼリー状瞬間接着剤、プラスチックにも威力を発揮して、私のモデル感を革新的に変えてしまいましたが、今度は木材の工作にも効能を見せてくれたという次第です。

1998/01/08 台車とカプラー

 台車はボックスカー2両にシロ/松本さんから譲っていただいたアサーン製のアーチバーを使いました。
 ここで問題となるのは、枕梁部分の構造です。まず、アサーン台車の中心ピン(心皿)上面高さは14mmですから、ケイディ・カプラー取付面である車体下面をレール面上20mmとすると、車体側にその差6mmの「カマシもの」が必要となります。いわゆる枕梁ですが、キットに含まれている部品はバスウッド材で柔らかく、その年輪が車体長手方向に通っていて、中心ピン位置にドリルを立てると割れてしまいましたので、檜棒で6mm×3mmの枕梁を作り出しています。

 また、中心ピン自体には米国直輸入のインチ・ネジを使っています。「4-40*1/2」という呼び寸法の、ネジ山径が約2.7mm、ネジ頭径が4.9mmで、我が国で手に入る3mmネジより、若干小振りです。2~2.2mm径ほどの下穴を開けて、セルフ・タッピングよろしく、このビスを強引にねじ込みます。
 3mmネジは、頭の直径が5.4mmと僅かに大きいので、アサーン台車に適合させる場合は、ボルスターの段付き穴径を広げるか、ネジ頭を沈めるのをあきらめてワッシャをカマして止めるなどの工夫が必要です。

 ところで、この台車はプラスチックですから非常に軽量です。ラ・ベル貨車も木製で軽く、34フィートのNMRA推奨値が340gであるのに、このままではボックスカーが160g、フラットカーでは80gにしかなりません。
 対策として、ボックスカーには、アトラスやウィーバーのプラスチック貨車と同じように、車内床面へ鉄板を補重しました。ただし、フラットカーとゴンドラでは、ウェイトを隠すのが非常に難しいので、台車に値段が3倍もするホワイトメタル製品を泣く泣く採用しています。

 現在、入手できるホワイトメタルのアーチバー台車には、キール・ラインとオールド・プルマンがあります。前者はディテールの良い固定式、後者はアサーンと同じ可動式で両者ともほぼ120gです。ラ・ベル純正品も製品リストには掲載されていますが、今は品切れのようです。ロストワックスではPSC社のものがありますが、私は値段のことを考えて問い合わせさえしていません。

 カプラーは、床板下面に、直付けです。1~1.4mmほどの下穴に2mmネジをセルフ・タッピングしています。しかし、このカプラー取付面高さ20mmを基準として車体高さを決めると、何か『腰高』の様な気がします。製品に添付されている図面には、この辺りの寸法が指示してないので、はっきりしたことは判りません。ただ、車高を低くしようとすると、キットの車体構造を抜本的に変える必要が出てきますが、当方には、それほどの思い入れはありません。

1998/01/11 塗装はアンティーク仕上げ

 木製のキットというと、一番の難題が塗装です。目止め、トノコ、サイディング・シーラー、オイル・ステインなどと、知識や経験のない者にとっては、考えるだけで嫌になる分野です。

 そんな中、いい物をDIY店、日曜大工ショップで見つけました。「着色ニス」、それも「水性」というやつです。色は木材の色合いを模していて数色選べます。この発見が、木製キットを組もうという決心のキッカケの一つでもあります。リアリティ指向は彼の地のモデラーに任せておいて、私は雰囲気を楽しむつもりで、質感を生かして「アンティーク」気味に仕上げていますから、打ってつけの材料です。
 色の種類が数種類あって、「マホガニー」をボックスカー・レッドの代わり、「ダーク・オーク」をゴンドラなどによくあるブラックに見立てて使ってみました。また、両者の混色も試みました。もちろん全て、前処理は無しで、ハケによる3回塗りです。

 なお、金属部分の下地プライマーは、1両が手塗り、1両が木部を含めた缶スプレーによる吹き付けで、あとの3両はプライマー無しです。

 肝心の仕上がり具合ですが、ニスですからツヤがキツイのですが、ソコソコの雰囲気が出たと思います。
 使用上の注意点は、まず、垂れて溜まりが出来やすいということです。この対策として、塗装面を平らにし、少し乾いてから次の面に取りかかるようにしました。また、攪拌した時に出来る泡は、そのまま塗装面に残りますので、根気よく追い出す必要があります。
 プライマーを金属部分だけでなく木部を含めて吹き付けたものに、若干のブツブツが見られますが、塗り替えたくなるようなレベルではありません。プライマーの有無では、今のところ差は判りません。
 水性塗料ですから、乾燥が概して遅く、ハケ塗りは滑らかで簡単です。ハケの跡も残りません。塗りムラは、かえってアンティーク的な風味を醸し出します。ただ時間が、特に冬季は掛かりますので、待っている間に何をするかという段取りを考える必要がありました。

1998/01/11 レタリングはインレタ

 レタリングには、アメリカで一般的なデカールではなく「ドライ・トランスファー」、日本で言うところのインレタが入っていました。もちろん、白一色です。
 この転写が、中々難物です。

 デカールとインレタとを較べると、デカールはフィルムの縁がどうしても見えてしまいますが、インレタはフィルムが無く、オマケに膜が薄いので、見栄えがします。また、柔軟剤などを使う必要がありません。ところが実際は、全ての文字を綺麗に移すことは至難の業なのです。
 私が採った方法は、まず、インレタの文字が載っているフィルムを四角く切って所定の面に置き、フィルムの一辺をテープで固定します。フィルム面を擦る道具としては、HBの鉛筆を使いました。これで一文字ずつ擦っては、フィルムをめくって転写を確認していくわけです。
 相手が木材ですから強く押せば凹みます。しかし、転写できないよりはマシと考えました。文字部分だけ窪んでいるなら許せそうですから、細い線だけ擦れる先の尖った鉛筆は有効です。
 だいたい1両に1時間ほど掛かって、本当に疲れました。

 プラスチック貨車への転写や、文房具店で購入したインレタでは、こんなに難しかったという記憶がないのです。このキットに含まれていたような少量生産品は品質が違うのでしょうか? あるいは、転写面が木材のせいでしょうか?
 一方、一旦、転写してしまったものは、強固です。手で持ったり、指で擦ったぐらいでは、剥がれません。間違えた場合は、上からセロ・テープを貼って、めくると着いてきます。
 文字の上からオーバーコートをしなくても大丈夫かも知れません。ただ、転写できなかった部分の補修をどうしようかとなやんでいるところです。

1998/01/12 ディテールはホワイトメタル

 年末から取り掛かっていたラ・ベル社の木製貨車キット5両は、おかげさまで、なんとか完成の域まで漕ぎ着けました。

 その中で、述べ忘れたことを二、三、追加しておきます。
 まず、目立つトラスロッドのことです。キットには、なんとナイロン糸が入っていたのです。
 説明書によれば、4本のトラスロッドを、この『釣り糸』で一筆書きのように繋げて引っ張るように指示されています。しかし、ターンバックルの接着と、塗装を考えて、躊躇無く黄銅線に置き換えました。線の端を折り曲げて木材に差し込めば、上手くいきます。3両目まで0.5mmの黄銅線を使っていましたが、4両目で0.6mmのリン青銅線としたところ、こちらの方が差し込みやすく、またピンと張ったトラスロッドが伸びにくくて、適していると思います。

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 トラスロッドにはリン青銅線を使った

 手ブレーキの丸ハンドルは不思議なことに、2両分がロストワックスで、3両分が軟質プラスチックでした。ハンドルは破損し易いので、ロストワックスはもちろんハンダ付けしました。残りの3両分は、ジャンク・ボックスからHOスケール用で大振りなスチロール製を探し出してきて、取り付けています。
 この丸ハンドルの大きさですが、ABブレーキ式の時代のものは大きめで、今回の車両のようなKC式では小さいものが付いているようです。
 Soo Lineのボックスカーには、図面に手ブレーキ用のプラットホームが描かれていて、パーツ番号も入っていましたが、パーツに見あたらないので、これもジャンク・ボックスから調達しました。

 なお、部品ではターンバックルが1両分4個、見付かりませんでした。また、クイーン・ポストが1本折れてしまったので、併せてメーカーに請求しています。

■1998/01/18 完全に完成!

 ラ・ベル社木製貨車の部品で「ターンバックルとクイーン・ポストをメーカーに請求している」とお伝えしていましたが、手紙を投函したのが1月5日で、なんと今日、1月17日に届けられてしまいました。「ロハ」です。
 それで、完成してしまったいうわけです。

 木製キット組立で、思い出したことを記しておきます。
・バスウッドは檜よりも柔らかく、加工がしやすい。
・帯材に鋸の目が残っていることがある。これが目立たない方を表面にするとよい。
・水性着色ニスは、木工ボンドの上にも着色できる。
 また、エポキシや瞬間接着剤、金属パーツの上も塗れないことはない。

1998/01/21 50ft木造ボックスカーは馬車用?

 ラ・ベル社の木造貨車ですが、また日本の雑誌に紹介されているのを発見しました。それは、トレイン誌の1993年10月号、63ページの中段です。

 この50フィート木造ボックスカーはHOスケールで、元々のラ・ベル社の製品のようです。キャプションに「このモデルはちょっと特殊な例で、長さ50フィートという長大なボックスカー」とありますが、実は、この「特殊な」には2つの意味があるようです。
 一つは、ここにもある「長大な」という点で、30フィート台が一般的だった19世紀末に50フィートで、しかも背の高さも尋常ではありません。50フィートといえば現在では普通の大きさですが、一緒に組んだSooラインのそれと較べると当時の迫力が知れます。
 同じページの下にGNのボックスカーが出ていますが、台車を同じ大きさとして見れば、この貨車の大きさが想像してもらえることでしょう。

 さて、「特殊な」のもう一つの「意味」は、その用途です。ボックスカーといえば日本の有蓋車、サイドにある引戸から荷物を出し入れするのが常ですが、この貨車には妻に観音開きの扉が付いているのです。
 それで、車体表記をよくよく見れば、

  Racine Wagon & Carriage Co., Racine, WIS.
  Buggies Carriages and Trusks
  Express Parcel -and- Delivery Wagons
  Chicago. Milwaukee and Saint Paul.

 などと書かれています。「Racine」は都市名、「WIS.」はウィスコンシン州、「Chicago」以下はミルウォーキー鉄道のことでしょう。この貨車を私は、今風にいえば「ピギィバック」、否「オート・キャリア」と見なしているのですが、如何なものでしょうか?

■1998/04/16 50ft木造ボックスカー続報

 なんと今日届いたモデル・レールローダー誌4月号132ページに、50ft貨車のプロトタイプの写真が出ていました。「HO製品を持っているが、説明書を無くしてしまった。」という読者の問いへの回答です。

 で、写真は製品の説明書にあった図面と、レタリングは全く同一です。しかし、ハンド・ブレーキのハンドル高さなど、私の組み上げたものと雰囲気がチョッと違います。まあ、リアリズムを追求するわけではないので、いいですよね(^^;
 なお、不鮮明ながら、レールモデル・ジャーナル誌の増刊号「Freight Car Models Vol.2」の18ページにも同じ写真が出ています。

【追記】記事をこのブログへ移動すると共に、写真のレタッチを行いました。Oゲージの玉手箱にもアップしています。2016-02-08

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