RMJ誌10月号:カトーにはアルコールが効く
How to remove coating of paint over Kato models by isopropyl alcohol, part 1 melma back number Vol.74, Nov. 6, 2001, re-edit Mar. 19, 2010
“Fun with Strippers"等と、中年モデラーが「ムムッ」とくる様な題名の記事が、近着のレールモデル・ジャーナル誌2001年10月号に出ています。
鉄道モデル雑誌ですから、一般に連想される内容でないことは明らかで、いわゆるリムーバー、塗装剥離剤の話です。「プラスチック製品の塗膜を剥がすのなら、プラスチック用ラッカー・シンナーで十分」というと、さにあらずで、今まで日本の雑誌では触れられることの無かった3種類のストリッパーが紹介されています。【画像はクリックで拡大します】
中でも、今まで我々が苦しんでいたカトー製品に使えるものが示されていることが最も貴重な情報でしょう。カトーが車体などに使っているプラスチックの材質は、一般的なスチロール樹脂ではなくて、少々硬めの確かABS樹脂だということで、シンナーに浸けると樹脂モールドの表面まで侵されてしまいます。
同社は一方で、アンデコ=未塗装製品をあまり発売しないこともあって、切ったり貼ったりしたいキット・バッシャーには有り難くないメーカーだと言えるでしょう。 さて、記事に示されているカトー製品に効果があるという剥離剤は、イソプロピル・アルコール91%という名前の薬剤です。同名のイソプロピル・アルコールでも70%や、他のアルコールではだめだとあります。
この記事の“サワリ”部分を雑誌社のサイトで読むことが出来ますが、肝心の説明は残念ながらこの先です。【RMJ誌は2007年2月号で廃刊となったので、1頁目を冒頭に掲げておきます】
ただし、幸いにも1枚だけ示された写真に、綺麗に剥離されたカトーNスケールのE8とこの薬剤とが一緒に写っていますから、信じてもらえると思います。
ところで同じ91%イソプロピル・アルコールがライフライク社のプロト2000で使えるという記事がしばらく前にあって、両社は同じ塗料を使っている可能性があります。
記事に拠れば、この91%イソプロピル・アルコールは、彼の地ではどのファーマシィ=薬局でも入手できるそうです。ただし日本では自宅と勤務先の近くで尋ねてみたものの、50%と70%しか置いてないとのことでした。
私自身には、近々に剥離したいブツが無いので、これ以上の探索をするつもりはありません。どなたかに犠牲的精神を発揮していただけるとうれしいのですが…… どちらかと言えば、我々より日本型ファンの方に価値の高い話でしょうか。
2番目は、スチロール樹脂用です。これについては前述の通り、現在の日本では一般にグンゼやタミヤのラッカー・シンナーが使われています。モデル雑誌などでも「シンナー・プールにドボン」などという表現があって、推奨している風もあるくらいです。
しかし基本的に、有機溶剤は人体に有害なのではないかという思いがあります。また、器に液体を満たして、その場でジャブジャブと洗い落とすのですが、ブツを器から取り出して、歯ブラシなどで擦っている間に溶剤が揮発して塗料自体が固まってしまうという実際上の使い難さもあります。
それでこの記事では、スケールコートのWash Away Paint Remover(品番56)を勧めています。同じスケールコートでも、Metal Remover(品番59)ではありません。
実は私も数年前に入手していて、既に10両ほどで使った経験があります。この薬剤に10分ほど浸けてから取り出し、水を流しながら柔らかくなった塗膜を古い歯ブラシで擦ればいいわけで、薬剤に直接触ることも少なくて済みます。塗料が残れば、また浸けて、同じことを繰り返します。液体は汚れますが、とっておいて何度でも使えます。
ただし問題は入手難で、私は向こうの模型店から船便で取り寄せました。
有機溶剤対策のことを考えれば、こういう品物を何処かのメーカーが輸入販売するか、同等品を発売すべきだと思います。しかし、そうなると使い易いラッカー系塗料も槍玉に上がってくることが必定ですから、痛し痒しですけれどね。
3つ目は、アルミ・ダイキャスト用で、3M社のSafest Stripper T1という製品が勧められています。車体などを一体ダイキャストで作ったモデルが、主にティンプレートの世界で今でもアメリカでは見かけますから、こういうリムーバーが有益なのでしょうが、日本では余り使い道はありません。ただ、これがブラスにも使えれば話は別ですから、メーカーに問い合わせてみる価値はあると思います。
ところで、この号のRMJ誌には他に、NでカトーのRS2からサンタフェ色、HOではアサーンのSD40T-2からSPのSD45T-2をそれぞれハイ・ディテール機に仕上げる詳細記事などが掲載されていますので、プラスチック系のモデラーにとっては記憶に残る1冊となることだろうと思っています。
■トレイン・デポの牛島裕康さんから、現地で撮影した貨車の写真を自店のHP http://home.catv.ne.jp/pp/td-pd/ にアップしたとメールをいただきました。早速、訪問したところ、私がテリトリーとしているBN色で珍しいものが写っていましたので、コピーして取り込んだ次第です。氏に拠れば11月中はこのままにしておく、とのことで、関心がおありの向きには急がれることをお勧めしておきます。
昨日11月5日の日経朝刊を読んでいたら、「洋古書を日本語で検索」という記事を見付けました。赤い靴ドットコム http://www.akaikutsu.com というサイトです。欧米の古本屋の在庫2800万冊をここで検索して、欲しい本を注文すると取り寄せてもらえるというものです。配送期間は2週間程度、書籍代金の15%が手数料だとあります。書名とかが判っていて、現地へ直接注文するのは面倒だという方には便利な方法だと思います。
【追記】イソプロピルアルコールを実際に試した結果は、「感動秘話:我、カトーの剥離に成功せり」でお伝えしています。その後、これがガソリン水抜き剤に含まれていると判明して、2004年頃にはNゲージャーの間で普及しました。記事をブログへ移すに当たって、RMJ誌の画像を追加しています。2010-03-19
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