アサーンW-Vカブースにはレーザーキット
back issue Vol.98 Mar. 12, 2002
Assembling a Athearn's Wide-Vision Caboose of the Special Edition #2200
アサーンのスペシャル・エディションについてはVol.71(2001年10月29日号)でも言及しました。このシリーズの中で特に私が欲しかったものが同社の創業50年を記念したSW1000と、このワイド・ビジョン・カブースのセット(品番2200)です。【一部写真はクリックで拡大します】
1996年にシリーズが発売開始された頃には、私は“シリアス・モデラー”を気取っていましたから鼻にも掛けていなかったものの、1998年にシアトルの模型店で品番2212のGP38-2とベイ・ウインドー・カブースを買ってからは、対となるこのセットが俄然欲しくなっていました。もちろん、この時点では入手できるはずが無くて、ホゾを噛む思いを抱き続けていました。
それが先日、先輩から譲り受けることが出来たのです。保有されているのを知って、駄目モトとばかり「くださいよ」と拝んでみたところ、あっさりと「いいよ」という答えで、晴れて私の手元にやってきました。
もちろん、アサーンのワイド・ビジョン・カブースは、最初に売り出されたのが1973年という大昔で、長い間、プラスチック製品としては唯一と言っていいものでしたから、皆さんのところにも1台や2台が在籍していることだろうと思います。
ここで“唯一と言っていい”などと曖昧な書き方をしたのは、バックマン社などが、これのデッド・コピー製品を売っていたからです。権利関係のうるさいアメリカで、こんなことが許されるのかと心配になるほどの真似っぷりです。次の写真の真ん中がアサーンで、奥がバックマンです。
そして、その状況を崩したのが1995年頃にアトラス社が投入した新製品です。上の写真では、一番手前です。
的確な各部のモールドや別付けの手すり、また窓ガラスも備えていますから、やっとスケール・モデルが売り出されたという感じでした。屋根歩み板が無くなったのも時代を映しています(1966年の新造車から無し。既存車は順次1983年までに撤去)。
ところで、アサーンとアトラスの根本的な違いは車体長です。メーカーサイドでは夫々29フィートと31フィートと呼んでいる中で、プロトタイプの製造元であるインターナショナル社の標準型は当然、後者が正解です。そこで、どうしてアサーンが小振りの車体としたのか、また屋根のプレス・パターンを一般的な対角線形ではなく長方形としたのか、などという疑問が湧いてきます。
この答えがRMJ誌1995年10月号に出ています。アサーンは「ロック・アイランド鉄道が木造カブースの台枠を流用して1958年から62両をインターナショナル社に作らせた」スタイルだとありました。参考にした実物が偶々、珍車だったというお粗末ですね。ちなみにアトラスの厳密なプロトタイプは、リディング鉄道の1970年製だそうです。
■というわけで、アサーンのカブースはリキを入れて仕上げるほどのシロモノではないので、“通り一遍”に組むことになりますが、この製品に無くてはならないパーツがあります。それがアメリカン・モデル・ビルダーズAmerican Model Builders社のレーザーキット(品番#236)という別売の窓ガラスです。これは厚さ1mmのアクリル板を窓の形に予めレーザーでカットしたもので、多分、日本のガチョウハウス社が売っている“ピタ窓”と同じ様なものです。平面性抜群の填め込み窓で、プラスチック製品特有の肉厚感を完全に消すことができます。
まず封から取り出すと、アクリル板の裏表に保護紙が貼ってあり、わずかに切り残したランナーによって窓がバラバラにならないで、繋がっているという、キワドい加工が施してあります。そして、ちょっと力を入れると一枚毎にガラスが外れます。このまま車体の外側より窓へ押し込めばいいのですが、注意しなければいけないことはガラスの表裏です。一枚一枚のガラスを切り離すレーザーで付けた溝が、表面の方が幅広で、底が僅かに細くなっているため、パーツとしてのガラスは裏より表が少し小さくなっている、すなわちテーパーが付いているわけです。一方、車体のモールドにも、窓の縁に「抜き勾配」というテーパーが付いて、表面より奥の方が、すぼまっています。
ということは、ガラスは表が室内側になるように押し込まなくてはいけません。ただ、ガラスは一旦切り離してしまうと裏表を容易に判別できなくなります。粘着紙に印を付けておくのも一つの方法でしょうが、それほど気にする必要はありません。というのも間違えたら上手く入ってくれないからです。
保護紙は、ガラスを取り付ける前に裏表とも剥がしておいてもいいでしょう。私は、押し込むときに力の掛かる車外となる面だけ、念のため貼っておきました。室内側となる面にも貼っておくに越したことはありませんが、剥がすのが面倒です。指紋が付いたらあとで拭けばいいでしょう。材質がアクリルですから、表面は十分に硬く、爪などで押しても傷付きを気にする必要はないと思います。このガラス、あまりにも精度がよいので、塗膜の厚さによっては入らないことがあるようです。私の場合でも、一部でナイフの刃を立てて削っています。ガラス面の出入りを揃えるには若干の根気は要ります。
ところで、ここでのお勧めは、ガラスの保護紙を剥がす前に板の厚みの部分を油性ペンで黒く塗ることです。これによって窓ガラス内縁に白い輪郭が浮かぶのを防ぐことが出来ます。また、ガラスの固定方法は、本来なら何か接着剤を用いたほうがよいのでしょうが、私は、この『はめ合い』を信頼して、押し込んだままとしています。数年前に組んだBN色車も今のところ無事です。
このように、取り付けは至って簡単で、射出成形品では得られないパーフェクトな平面性が得られます。しかし唯一の欠点は、本体(定価7.50ドル)に肉薄する値段(同5.95ドル)でしょう。
窓ガラス以外での注意点は、カプラーにケーディー社の#5(またはコンパチ品)ではなくて、ナックルが上方にシフトしている#27にすることぐらいです。
皆さんも、仕舞い込んだ、かつての愛車に今一度、命を吹き込んでみませんか。
【追記1】レーザーカットのアクリル板を填め込むときに指紋が付着してしまうことがあります。これを小林製薬の「メガネクリーナーふきふき」で拭う話をアップしました。ただし、アサーンのカブースもキット形態から窓ガラス入り完成品で売られるようになって、このアクリル製品は廃番ととなっているようです。2010-05-03
【追記2】車輪の金属化に併せてウエイトの補重とカプラー交換を行いました。
重さは、車体長124ミリに対するNMRA推奨値が98グラムということで、不足する24グラムを越える28グラムを追加しました。
カプラー自体は今までの#27のままで、ポケットを最新式の接着剤不要でパッチンと組み立てられるものとしました。従前の接着剤で組み立てるものより精度が向上して首垂れが少なくなります。品番が#242で、別途購入できます。
分解写真は製品のままの構成で、この魚骨状台枠のカプラーポケットを切り取って、新しいポケットをデッキ裏面にM2×4のナベ小ネジで取り付けます。
ついでにHOゲージガラクタボックスの写真を撮影し直しました。2011-07-22
【追記3】鉄道博物館のオミヤゲ・モデルを入手しました。加工方法はアサーン・スキームと一緒です。こちらをご覧ください。2019-03-02
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