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2004/11/02

金属プライマーの缶スプレー

Back Number Vol.102 2002.03.20

102_ プラスチック・モデルと言えどもアメリカ型の場合、結構、金属を弄ることが多く、中でもアサーン製品は、貨車のウェイトが鉄板(正しくは軟鋼板)で、機関車の手すりが鉄、シャシーがダイキャストですから、その塗装が必要になってきます。
 モデルに使う普通のプラスチックはスチロール樹脂ですので、何も処置をしなくても塗料がよく乗ってくれ、使い勝手のよい素材だと言えます。金属の方は、下地処理をしないと塗った後にペロリと剥がれてしまうことが多いという、厄介な材料です。

 この対策として我々が一般的に採れる方法は2つで、1つは金属表面に細かい傷を無数に付けて塗料が食い付き易くすることと、もう1つは金属に強力に付着する専用の塗料を下地として塗装することです。もちろん、完璧を期す場合は両者を併用することとなりますが、前者はディテール豊かなモデルの場合は基本的に面倒ですから、専ら後者の下地塗料に頼ることとなります。

 この下地塗料をプライマーと呼び、鉄道モデルの世界ではマッハ模型店のシール・プライマー、またはエッチング・プライマーを使うことが多い様です。これはビン入りという販売形態ですから、ユーザーはシンナーで希釈してガンで吹付塗装をしています。

 しかし私自身は、上塗り塗装さえも缶スプレーで済まそうとするグウタラ・モデラーですので当然、プライマーにも缶スプレーを用いたいところです。で、GSIクレオス(旧グンゼ産業)に“メタル・プライマー”の名前で缶スプレーがあるものの、使ったことがある方はご存知の通り、プライマーとは名ばかりで、使い物になるシロモノではありません。

 それで、私が愛用しているのは(株)テロソンの“ミッチャクロン・マルチ”という缶スプレーです。普通の日曜大工店には置いてなくて、入手できるのは塗料専門店か東急ハンズぐらいですが、420ml入は使い応えがあって、アサーンの鉄部分などには打ってつけの製品です。
  ところで、スタンションに使うリン青銅や黄銅でも十分に密着する一方で、なぜか、ディテール・アソシエーツ社のグラブ・アイアンなどに使われている洋白線に限って、ノリが悪いという現象を経験しています。不思議に思ってメーカーに問い合わせると、事実、洋白とか黄銅では上塗り塗料のシンナーによっては効果が出ないことがあるとのことで、上塗り塗料を薄く何回かに分けて吹いたり、マルチに製造の新しいものを使ってほしいとの答えが返ってきました。銅は大丈夫だそうです。

 さらに「名前に“マルチ”が付かないミッチャクロンを昔使っていたが、こちらは洋白や黄銅でも完璧に付着していた」ことを問うと、「そのとおりだが今は一般に流通していないものの“ミッチャクロンGX”という商品名で存在する。たぶん、店頭には汎用性のある“マルチ”だけが並んでいる」とのことでした。アマチュアが“GX”を入手するためには、一定数量を塗料専門店などに頼むしかないようです。

 一方、近所の日曜大工店を探してみますと、(株)アサヒペンの“メタルプライマー非鉄金属用下塗り300ml”という品物が置いてありました。この「取扱い上の注意」に「屋外の真鍮には適しません。真鍮に塗る場合には素地を研磨しないでください」という奇妙奇天烈な文章と、品名に「非鉄金属」謳っているにもかかわらず適用の中に「鉄の下塗り用」という語句が入っているという不可思議がありましたので、またまたメーカーに問い合わせてみました。

Metalmrimer

 答えは「真鍮の表面にはアルミのアルマイトの様な膜が出来ていて、これを磨いて落としてしまうとプライマーの効果が無くなる。鉄に対しては別に錆止めが必要」とのことでした。多分、後者は屋外使用での注意点なのでしょう。

 ところで、同じアサヒペンに、プラスチック用のプライマーもあって、ものは試しと買ってきました。適合は、ポリプロピレン、ナイロン、ABS、FRP、硬質塩ビ、アクリル、PETです。一方、不適合は、ポリエチレン、ポリスチレン、発泡スチロール、ポリアセタール、ポリカーボネート、メッキ面とあります。フード・ディーゼル機の手すりに頻繁に使われる軟質プラスチックが、このうちのどの材質なのかを知らないので、直接の役に立つのかどうかは判りませんが、いずれは使えることもありそうです。
 なお、そういうことなら、GSIクレオスやモデラーズのメタル・プライマーも、条件が整えば使えるのかも知れないという気がしてきています。

 というわけで、普通の常識では判断出来ない事実が缶スプレー式のプライマーにはある様です。今のところ私の知見はここまでですが、何かご存じの方に是非、ノウハウをご披露いただきたいものだと存じます。また、エッチング・プライマーとシール・プライマーの“エッチング”や“シール”の意味、またプライマーが付着する原理なんかも知りたいものだとつくづく思っています。

【追記1】northerns484さんよりミッチャクロン・マルチの製品紹介とFAQ(よくある質問)の存在を教えていただきました。ご参考まで 2008-10-21
 ミッチャクロンの会社が変わりました。新社名は株式会社染めQテクノロジィで、FAQもあります。2010-09-05

【追記2】素地をサンドペーパーやサンドブラストで荒らすと塗膜の食付きが良くなる原理を「アンカー効果」と呼ぶようです。ただし、単なる「気休め」という話もあります。2014-01-02

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コメント

古い記事へのコメント失礼します

カトー製品の手すりはポリアセタールですね。
カー用品店で売っているバンパープライマーを使っていますが効きはもう一つです。

>>コメントありがとうございます。ポリアセタール(POM)には、これといった決定打がありませんね。アメリカ型鉄道模型大辞典に幾ばくかの情報を載せておきました。【ワークスK】

投稿: にゃんこのおひげ | 2014/01/02 22:42

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