新刊紹介◇クラフツマン客車図面集
ちょっと変わった横開きの308×231mmという判型のソフトカバー全112頁に、創成期からの木造客車が37両分、重量鋼製客車が36両分の図面と、125枚のモノクロ写真、表裏の表紙に4枚のカラー写真が散りばめられています。一部の図面には模型の構造を示す部分があったり、色の指定が書き込まれていますから、モデラー向けであることは疑いようが無く、確認はしていませんが、全てはクラフツマン誌からの抜粋である可能性が濃厚です。
ザッと見回したところ、馬車軌道から第2次世界大戦のトゥループ客車までが揃っていますが、中心は木造ダブルルーフの3軸客車と、鋼製ではプルマン社の寝台車群です。鉄道名は多岐に渡っていますから、特定の車両を目的とされる方には物足りない構成かも知れません。
その中で、BNファンを自認する私がうれしかったのは、A22という車番が付けられたGNの木造ビジネスカーです。記述に拠れば、GNの有力者ジェイムズ・ヒルの息子のルイス・ヒル用の車両のようで、一端に折り戸があって自動車を積み込む構造となっています。オープンタイプのクラシックカーを納めた車庫の隣りが、キッチン、そしてダイニング・ルーム、特別室、トイレ、展望室と並んでいます。
1905年に製造され、BNとなった1970年代まで職用車に改造されて存在したとあって、私にとって、これはもう“美味しい”題材ではあります。
例の鉄道模型雑誌の記事検索サイトで探しましたら、RMC誌1972年3月号をヒットしましたから多分、これの再録でしょう。
“たまげ”た車はペンシルベニア鉄道のTheatrical Sceneryカーです。直訳すると演劇舞台車となります。同鉄道はこれを45両も持っていて、それぞれにオセロとかワグナーといったオペラや作曲家にちなんだ固有名詞を付けていたのだそうです。6093号車のMikadoは何か我が国と関係があるのでしょうか。ただし、車内構造が示されていませんから、この車を演劇舞台として、どのように使ったのか、判らないところが残念です。
BNにあった映画上映車(左写真はRR Picture Archivesから引用)は研修用で、一端にスクリーンがあって座席が階段状に並んでいましたけれど、この車とは似ても似つかぬ姿です。
また“ラジアル(Radial)ルーフ”という呼び方は初めてお目に掛かりました。
ところで、雑誌への掲載が多年に渡っているために図面の質はピンからキリまで、このうちの多くは多分、製品化されていることでしょうから、これを資料にしてスクラッチする価値があるか否かは難しいところだと思います。
メインライン・モデラー誌からの記事抜粋である “The Best of Mainline Modeler's Passenger Cars Vol.1”と併せて、古き良き時代の雰囲気を嗅ぎ取るのが、私の出来る、せめてもの楽しみ方かも知れません。もちろん、Vol.2の発行が待たれます。
【追記】本書は第3巻まで出ました。詳細は資料室をご覧ください。
PRRのTheatrical Sceneryカーについての議論は第1次掲示板です。
また、ボールドウィンが蒸機の車輪配置2-8-2をミカドと名付けたのは、オペレッタの「ミカド」が流行って、当時この言葉が人口に膾炙されていたからという解説がWikipedia英語版にあります。2008-11-12
【追記2】BNのシアターカー・キットが発売となり、紹介させていただきました。2011-05-15
【追記3】GN創業者ジェームズ・ヒルの息子、ルイスの伝記を掲示板で紹介しました。2011-07-02
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