ケーディー・カプラーの非常識
back issue Vol.129 Oct. 14, 2002
少々、タイミングが遅い話題ですが、先月発売された"とれいん"誌2002年10月号で、我らアメリカ型ファンの注目記事は、一に佐々木也寸志氏の「アムトラックの機関車:模型いろいろ」、二に鎮目泰昌氏の「60坪のOゲージ個人レイアウト・ルーム」だったと思います。そして、その次が「ケーディーの常識」という特集記事で、基本的な資料として価値を認識された方も多かったことでしょう。
ところで、このケーディー・カプラーについては、本メールマガジンでは再三に渡り取付高さを議論したこともあって、同記事では若干食い足らない面がありました。それで、雑誌ではほとんど取り上げられない同カプラーの“非常識的”な悩みについて詳論しようと考えていたのですけれど、実証が必要な部分が多くて筆が進みません。
ただ、皆さんのご参考になるかも知れませんので、ザッと項目だけを列挙しておこうと思い立ちました。
(1)最初に認識していただきたいのは、アサーン貨車の旧製品ではポケット高さが1mmほど低いことです。本誌Vol.66「カプラーには#27が」、Vol.69「やはりカプラーは手が掛かる 檜山和明」、Vol.71「カプラー高さの続報」、Vol.73「カプラー高さは奥が深い 」をご覧ください。マンチュアやMDCなど、ホーンフック型を想定した製品は皆、同じ傾向です。
(2)日本型ファンにお尋ねしたいことは、国鉄/JR系の自動連結器高さはスケール通りなら1/80で11mm、1/87で10mmのはずなのに、それぞれ10mm、7.2mmで、モデラーは本当に満足されているのかという点です。これについてはVol.52「日本型の連結器高さは何mm?」で戯れ言を述べました。
(3)カプラー・ポケットには上下に遊びがあり、これが原因でカプラー本体が垂れ下がり気味になることがあります。
これを解消するためにカプラーの首を曲げる方法を松尾彦孝氏が一文を寄せられています。私は、新宮琢哉氏より伝授された薄板を噛ます方法を採っています。
(4)ケーディー社のハイトゲージに微妙な誤差があります。(3)でも述べた様に、カプラー・ポケットに上下の遊びがありますから、ハイトゲージでもナックル部分が垂れ気味で、私の保有するハイトゲージで0.2~0.3mmほど低めです。もちろん、カプラーの高さは本来、ナックル部分と車体への取り付け部分の両方で規定されるべきものですが、モデルではナックル部分が、より重要です。私はプラスチック板製の自作測定具を使っています。
(5)カプラー高さを揃える目的で、柄の上付きと下付きを使い分けることがありますが、これの乱用は理論的に輪重抜けを引き起こす様な気がしています。特に短柄では、危ないはずです。この辺り、実際の運転ではどうなのでしょうか。私は止むに止まれず、下付き(#27と#21)だけを限定して用いています。
(6)かつて、日本型の客車などには#6が推奨されたことがあったと記憶していますが、とれいん誌の10月号に、その理由は単にべーカー型から交換しやすかっただけの様な書き方がされています。私は、曲線の入り口や渡り線などでのカプラーの振れ角度を稼ぐために、長いボディーには、柄の長い#6が適当なのだと理解しているのですが、実情はどうなのでしょう。
また、70フィート級以上でボディ・マウントの場合は長柄とする方針を採っていますが、もう少し、車両や線路で検討を加えないと断言出来ません。
(7)この#6の復心作用が弱いという話は確かRMM誌に一度、出てました。カプラー添付の説明書を何度も読み返して、挿入するコイルバネの色を確認するものの上手くいかず、模型店の親父に相談すれば「バネを二重に入れるのが常識だ」などと非常識な答えが返ってきた思い出があります。それ以来、#6、#7、#8、#16は買っていません。
(8)ケーディー・カプラー最大の弱点は、上下の食い違いで解放し易いことです。特に車体の長い車両、オートキャリアーとかピギーバック・フラットカーなどのオーバーハングが大きな車では、勾配の出入り口やレールの継ぎ目、また一寸した通り狂いなどで途中解放が起こってしまいます。思い余って、ホーンフック型を用いられる方もおられますが、機関車との連結部は解決出来ません。
このところスケールヘッドと称して#58とか#78といったヘッドを小さくした新製品が出てきましたが、この点では、ナックルを上下に伸ばしたものが欲しいところです。On3やSゲージ用では代用出来ません。ただ、私に秘策があって、テストも成功していますので、いずれ御披露させていただきます。「オートキャリアーにはシェルフカプラー」をご覧ください。
(9)カプラー解放器では、今まで日本ではリモート・コントロール、遠隔操作が常識と考えられてきましたけれど、彼の地ではスロットルにウォーク・アラウンド方式が一般的となって、解放器も手持ち式が主流という話があります。 マグネティック・カプラーといえば従来、線路に解放ランプを埋め込んでおいて、コントロールボードより遠隔操作で解放作用を行っていました。しかし、近年は無線式のコントローラーを持ちながら“ウォーク・アラウンド”で列車と共に動き回るのが主流ですから、手持ち式の解放器をカプラーに近付けて解放するのだそうです。
そんな解放器に,セントラル・バレィ社のUn-Deeとか,リックス・プロダクツ社スティッカー(ウォルサーズHOカタログ2002年版p299)があります。考え方としては“オートマティック”と“オペレーティング”の違いということの様です。
【追記2】手持ち式解放器の別製品Switchmanは「アサーン40'ボックスカーの床板交換」、アサーン製品で、ポケットの縁にナックル戻しコイルバネが当たる問題は「アサーン54’カバードホッパー(1)」、ポケットの軸が細くて左右復元力が不安定な問題は「アサーン54’カバードホッパー(2)」、MDCラウンド製品の一部で復元力が不足する問題は「MDCの50'ハイキューブ・ボックスカー(2)」をご覧ください。ケーディーのナックル戻しコイルバネを再び挿入する方法は、第7次掲示板のここです。現在は、取付用小ネジについて研究中です。2020-08-01
【追記1】当方のブログや掲示板、鉄道模型大辞典におけるカプラー関係の記事をリストにまとめています。2010-12-02
■ところで、「#47」と聞いて、柄の長さと上下位置を正確に答えられる方は少ないのではないでしょうか。何か経緯があるとは思うのですが、この番号系列は、20,30,40番代で1の位が統一されているとはいうものの、脈絡のない順番となっています。そこで以前、ニフティにもアップした早見表をお見せしておきましょう。
柄(シャンク)の位置 | 下 | 中 | 上 | |
柄の長さ | 短 | #24 | #23 | #25 |
---|---|---|---|---|
中 | #27 | #28 | #22 | |
長 | #21 | #26 | #29 | |
取付高さ mm | 10.3 | 11.5 | 12.7 |
柄(シャンク)の位置 | 下 | 中 | 上 | |
柄の長さ | 短 | #34 | #33 | #35 |
---|---|---|---|---|
中 | #37 | #38 | #32 | |
長 | #31 | #36 | #39 | |
取付高さ mm |
下バネ | 10.3 | 11.5 | 12.7 |
上バネ | 11.5 | 12.7 | 13.9 |
柄(シャンク)の位置 | 下 | 中 | 上 | |
柄の長さ | 短 | #44 | #43 | #45 |
---|---|---|---|---|
中 | #47 | #48 | #42 | |
長 | #41 | #46 | #49 | |
取付高さ mm | 10.3 | 11.5 | 12.7 |
それぞれ9種類ずつありますが、私は連結器力によるPQ値上昇が怖いという理由で短柄を嫌い、シムを噛ませば中シャンクで十分という理由で上シャンク(下ナックル)を除いてしまって、都合、残った4種を常備品番としています。
また材質だけの違いの20番代と40番代は、機能本意ということで20番代を優先していたのですが、コスト面での誘惑に勝てず、いつの間にか40番代に移行しています。金属製ですから、塗装が可能というメリットもあるでしょう。 また、カプラーポケットを必要とするときには、復元が確実な30番代を愛用しています。
■前号のアンケートは、ご贔屓の雑誌でした。結果は以下の様に票が割れて、皆さんの多様性を認識した次第です。流石にMR誌がトップですけれど、DEやOSNといったマイナー誌が続いているところが驚きです。またRMCがゼロとは一体どうしたんでしょう。
Classic Toy Trains | 1人 | 3% | ■ |
Diesel Era | 4人 | 14% | ■■■■ |
Extra 2200 South | 0人 | 0% | |
FineScale Railroader | 1人 | 3% | ■ |
Mainline Modeler | 3人 | 10% | ■■■ |
Model Railroader | 7人 | 24% | ■■■■■■■ |
Model Railroading | 1人 | 3% | ■ |
N-Scale Magazine | 0人 | 0% | |
NG&SL Gazette | 1人 | 3% | ■ |
O Gauge Railroading | 1人 | 3% | ■ |
O Scale News | 4人 | 14% | ■■■■ |
Proto Journal | 1人 | 3% | ■ |
Railfan & Railroad | 1人 | 14% | ■ |
Railmodel Journal | 1人 | 3% | ■ |
Railroad Model Craftsman | 0人 | 0% | |
Trains | 0人 | 0% | |
Ztrack Magazine | 0人 | 0% | |
その他 | 3人 | 10% | ■■■ |
kanesakaさん:森林鉄道やサンディーリバー等ナローファンにお奨めです。図面も参考になります。→Narrow Gauge and Short Line Gazette
AMTK223さん:最新のインターモーダルから、臭ってくるようなピクルスカーまで、ゴッタ煮の魅力がたまりません。→Model Railroading
要石さん:Trainsとはちょっと違った雰囲気で、私はこちらの方が好きです。ちょっと古めの鉄道やマイナーな感じのショートラインが紹介されているのもGoodです。模型作りのインスピレーションにちょうど良いかも。購読料も安いです。→Railfan & Railroad
雨宮21さん:Garden Railwaysです。G-ゲージファンなら絶対にお奨めです。→その他
ポーラさん:CTC BOARD:とにかく写真が素晴らしい!アラスカRRが割と出てくるのも○、欠点はなかなか届かないこと(ちゃんと発行されてるんだろな~? たのむぞほんとに……)→その他
Don Hirokさん:'GARDEN RAILWAYS'が愛読書です.Gゲージ(1/20~1/29)を対象とした雑誌ですが、付録の原寸代の車両設計図が結構楽しみだったりします.→その他
K&K Works(私):このところ、バックナンバーを含めて、参考にすることが多くなっています。→Railmodel Journal
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