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2005/03/02

レイモンド・ローウィとGG-1

back issue Vol.142 Sept.22, 2003

 しばらく前に本誌読者の間で話題となったブロードウェイ・リミテッド・インポーツ社のGG-1が、とれいん誌10月号の製品紹介ページに掲載されていました。カラー1頁を割いて、サウンドを中心に懇切丁寧に解説されていますから、アメリカ型に興味のなかったファンにも大いにアピールすることだと思います。

 ところで、この実物を解説する文章の中で「レイモンド・ローウィが関与したのは5ストライプの塗装だけ」の様な書き方がなされているのは、私の認識と異なっています。

【写真は、2両ともサンセット・モデルズ製品です。リベット構造などのウンチクを掲示板で披露しています。2013-09-14】

 確かに全体の形において先行試作機4800号と量産機は大略同じなのですが、レイモンド・ローウィの著作に拠れば、リベットだらけのボディを溶接構造としたこと、サイドのベンチレーターを目立たなくするために形を変え5ストライプとしたこと、またボディ各部のRなどを弄ったことが述べられているのです。

 先行試作機の姿は、Alvin F. Stauferという方の「ペンシィ・パワーPennsy Power」という著作でしか知りませんが、窓や通風口の形や各部のラインが微妙に違いますし、ローウィと同じ太さのストライプで飾っているものの使い方が全く異なっています。

 ペンシィに関しては、前にも書きましたが、私は“好み”とはしていないのですけれど、インダストリアル・デザインに関連してレイモンド・ローウィには大いに関心のあるところで、GG-1も2両を保有するに至っています。そんな思いを綴ったニフティFtrain時代の駄文を3つお目にかけておきましょう。

 なお、本誌第68号でもストライプの話をさせていただいております。

 また、「ブランズウィック・グリーン」、「タスカン・レッド」、「クラレンドン」、「ブラウン・ブック」等の語句については、当方のアメリカ型鉄道模型大辞典をご参照ください。

レイモンド・ローウィ著「口紅から機関車まで」(96/06/20)
 私には、レイモンド・ローウィRaymond Loewyの著した「口紅から機関車まで」という本を若いときに読んで、自分の仕事に開眼した経験を持っていまして、この名前には思い入れがあります。本棚の奥を捜して、やっと本が出てきました。

 「口紅から機関車まで」-原題はNever Leave Well Enough Alone、「程々で済ますな」という意味でしょう。もちろん読んだのは邦訳で、元外務大臣藤山愛一郎氏の手になる鹿島出版会昭和56年発行2,800円というものです。邦題は、原書の副題である「口紅から機関車までのインダストリアル・デザイナーの個人的記録」からとったと訳者後書きにあります。

 さて、本書によるローウィと鉄道との関係は、ペンシルベニア鉄道の電気機関車GG-1、蒸気機関車ではS-1(1937)とT-1(1939)、それにレクレーション・ラウンジカーがあります。C-Linerの件は出てきません。1893年フランスのパリに生まれ、1919年渡米、ウエスチングハウスの冷蔵庫のデザインで一躍名声を博し、1986年に92歳で没という経歴です。

 栄久庵憲司という方が「デザイナーとその時代、……パイオニアの死に思う」と題して寄稿した86年9月1日、毎日新聞夕刊の切り抜きを大事に持っています。

 インダストリアル・デザインの役割はなにか、これこそが本書の命題でしょう。ローウィの作品を「フランスの優美さで、アメリカの機能一点張りの機械を包んだ」という評は、当たらないと思います。

 書名にもあるとおり、製品が負っている目的を、徹底的に極限まで追求することだと、ローウィは言っています。すなわち、機能を合理的に突き詰めることです。ただし、この機能には、人間が接するという面が必須だというのです。当然、工業製品は人が使用することを念頭に入れて作らなければいけないし、また更に、いくら性能がよくても、使う人に嫌悪されたのでは話になりません。

 「製品を取り巻く様々な制約条件、特にマン・マシン・インターフェースを重視して、機能を追求し、妥協せずに昇華させる」というふうに理解しました。

 相反する条件がぶつかったときには、単にどちらか一方を選ぶのではなく、考え抜いて、全ての条件を完全にクリアする新しい解答を見つけるのがインダストリアル・デザイナーの役目だとも言えます。

 この本の199ページから8ページにわたって、ローウィがペンシルベニア鉄道のGG-1をデザインした経緯が書いてあります。
 まず、社長と会って、ニューヨーク駅の屑籠デザインの仕事をもらったこと。そのために駅で三日間を費やし、乗客や浮浪者と屑籠の関係を観察し、提案をして採用になったこと。さらに試作機関車の写真を見せられて、リベットを廃して溶接構造の車体を提案したこと。溶接工法は、外観を単純化し建造費を引き下げられる。また、リベットのない平滑な表面は、保守作業を容易とする。また、有名な5ストライプは、サイドの通風口を目立たなくする効能がある等々。

 GG-1について、邦書では、とれいん誌1979年9月号に詳しく書いてあります。

 「インダストリアル・デザインID」という言葉が、単なる思いつきや閃きとは無縁の存在であることを理解していただけたでしょうか。これから導かれた私の信条は「趣味で仕事をしない。趣味を仕事に活かす」いうものです。

「ID」とは止揚Aufhebenだ、と理解しているK&K Worksでした
                今回は、ちょっと高尚すぎましたか(笑)

ペンシィのGG-1モデル(96.07.02)
 ペンシルベニア鉄道に関して、K&K Worksでは興味を持っていない……というよりも、むしろ嫌いと言った方が当たっていますので、モデルで保有しているのは蒸機でK4s、ただ一両だけです。
 電気機関車GG-1は、今までに気に入った出来映えのものがなかったので、レイモンド・ローウィに関係する機種でありながら、入手していませんでした。過去に発売されたブラス・モデルを網羅した「ブラウン・ブック」を見ると、70年代前半にランバート、80年前後にプレシジョン・スケール、80年代中期にキイ・インポーツといったところです。

 ところが、ここへ来て、プレシジョン・スケール社から再度発売となるようです。10数年前の焼き鈍しではないと思いますが、ある模型店のリストによると次の13種類です。

 品番    ボディ     ベンド     レタリング   ストライプ   ナンバー
16952-1  リベット                ゴールド        5         4800
16952-2     〃                 クラレンドン      〃         〃
16952-3     〃                      〃          幅広        〃
16954-1    溶接    オリジナル  クラレンドン      5         4929
16954-2     〃         〃           〃           〃        4824
16954-3     〃         〃           〃          幅広       4885
16954-4     〃         〃           〃           〃        4916
16954-6     〃         〃       アムトラック               916 & 917
16954-7     〃         〃      GG-1友の会復元    5         4935
16956-1     〃        ハイ    ペン・セントラル             4901 & 4903
16956-2     〃         〃       アムトラック               4824
16958-1     〃     モデファイ   クラレンドン    幅広       4824

 「リベット」ボディというのは、ローウィが関与していない先行試作機でしょう。「ベンド」というのは具体的に何を指すのか判りません。あるいは、機関室側面のガラリでしょうか。レタリングの「クラレンドン」についても知りません。「GG-1友の会復元」は「とれいん」誌78年3月号35ページにある77年の復元塗装機でしょう。

 塗色は、ペンシィ時代に二種類あったようです。すなわち、ブランスウィック・グリーンとタスカン・レッドですが、「前者がPRR標準のダーク・グリーン機関車仕上げである。後者は客車のトレード・マークで、1952、53年製の10両のみに採用された」と、MR誌94年10月号にあります。ペンシィ時代のモデルで、塗装に言及してないものはグリーンと考えて差し支えないと思います。

 ローウィの原型を狙えば16954-1か16954-2、一寸ひねくれて16954-7でしょうか。

 もちろん、プラスチック製ではIHC社があって、こちらもあらゆる種類のスキームが発売されています。MR誌7月号の133ページを見ると、驚くなかれ品番は20種類です。こちらはブラスの1/6の値段です。

  現物を見るまで信じないので、よく買い漏らすK&K Worksでした

ローウィのピースのデザイン料(99.11.03)
 以前,ペンシィのGG-1やデュプレックスなどをデザインしたレイモンド・ローウィを話題としましたが、その中で「日本の専売公社のためにピースのパッケージに対するデザイン料は150万円だったはずだ」とお伝えしていました。

 これに対して,11月1日付の交通新聞第1面に、国際デザインセンター専務取締役木村一男氏の一文があり、「1951年に来日して、151万円」と記してありました。

 いずれにしろ1ドル360円で換算してみると中途半端な金額になります。
  一括して何ドルという請求ではなくて、交通費いくら、通信費いくら、意匠試作料いくら等と積み上げだったのでしょうか。

     IDに興味のあるK&K Worksでした

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