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2005/04/29

レールズ・アメリカーナ1

トレイン誌増刊の、模型と旅のフォット・エッセイを読み解くと……
Back Number Vol.149 2005/04/29, total 243 copies

Americana1

   トレイン誌に広告が出ていた「Rails Americana 1」を購入しました。60ページという薄さでオール・カラー4千円弱という値段に一寸躊躇したのですが、副題にある「アメリカの鉄道、模型と旅のフォット・エッセイ」という、新たな趣味のあり方へのプレゼンテーションにフィッシングされたという格好です。

  本の内容は、前半がシアトルとシカゴを中心とする訪問記、後半はカブースにまつわる知識とコレクション紹介となっていて、私のBN嗜好と重なる部分があります。そこで、本書を読む上で参考となりそうな情報を、当方の貧弱な手持ち資料とインターネット上からかき集めて、「新刊紹介」がてら、ここに披露しておきましょう。

  まず、シアトルのディナートレインは、私が93年に訪米した折りにも、泊まったホテルにパンフレットが置いてありました。持ち帰ったそれを今取り出して記事と比べると、ツアーの中身や列車の状況はほぼ同じで、異なる点は機関車がGP38とGP9であることと、客車の名前のうちColumbia WineryがColumbia Riverだったことぐらいです。

 本書に書かれていない列車の運行主体は、F9の「WCRC 82」と、GP38の「CBRW 2148」いうナンバーからも判るとおり、れっきとした線路を保有する鉄道です。Burlington Northern and It's Heritage(1992年刊)という本のp98に、BNが売却した線路の一例として、成立の経緯が書かれています。まず1986年に元NPの本線149.3マイルをNick B. Temple氏が購入してWCRC=Washington Central Railroad Co.を開業し、逐次NP、UPやMilwの本支線を加えて拡張していき、アメリカン・ショートライン・レールウェイ・ガイド第5版(カームバック社1996年刊)の、営業線路302マイル、機関車16両、貨車1399両という規模となったようです。
  しかし、ここでBNとAT&SFが合併して発足したBNSFがその新たなる幹線として会社ごと買い戻し、併合という事態になりました。ただし、PascoとSpokaneの間にあるConnellという地点から北に延びる支線84マイルが買収対象から外れ、同じ経営者が存続させた鉄道がColumbia Basin Railroad Co.=CBRWです。しかし、WCRCのリポーティング・マークをBNSFではなくCBRWが車両共々継承してしまいましたから、WCRCがCBRWとなったと考えてもよい様です。
  ディナートレインは1989年、Yakimaから西のEllensburgと、東のProsserの間で3時間半のツアーを始めていて、その頃は元ATSF、CF7の牽引する5両編成を使っていました。そして1991年にはYakima River Gorgeまで西進し、さらに1992年にはRentonへ移り、BN線上の営業となったとあります。

鉄道会社自体のHPは、http://www.cbrr.com/
ディナー・トレインは、
  http://www.spiritofwashingtondinnertrain.com/
鉄道の機関車は、
  http://www.trainweb.org/rosters/WCRC.html
  http://www.trainweb.org/rosters/CBRW.html

  シアトルのストリートカーについては私自身がトレイン誌1994年9月号で紹介させていただきましたが、その終点ピア70の北にある、元GNのInterbay機関区、Balmerヤードか、さらに北のDrawbridge可動橋、またはキング・ストリート駅南のアムトラックの機関区辺りの方が普通のモデラーには面白いと思います。

  森林鉄道系は詳しくないので、記事にあったノースウェスト鉄道博物館とサリッシュ・ロッジのHPを探し出しておきました。
  http://www.trainmuseum.org/
  http://en.wikipedia.org/wiki/Northwest_Railway_Museum
  http://www.salishlodge.com/
追記 この博物館の説明に拠れば、転用している建物は元NPのスノークォルミー駅舎だとのことです。本書では言及していないのですが、この付近に昔のミルウォーキー鉄道本線が走っていて、東にたどると同線がカスケード山脈を越える地点「スノークォルミー・パス」に行き着きました】

  シカゴの鉄道といえば、今日ではCTAとメトラということになります。前者の高架鉄道の愛称“L(エル)”の語源は、記事にあるLoopではなくて、Elevated Trainの"L"というのが通説です。またメトラの2階建て通勤客車の呼称は、ダブル・デッカーよりも雑誌や書籍では専らbi-level carやgallery carが使われています。【追記 "L"のいわれが"Elevated"である解説がウィキペディアの「Chicago "L"」にあります】

高架鉄道CTAについては、
  http://www.chicago-l.org/
  http://www.transitchicago.com/
その路線図は、
  http://www.transitchicago.com/maps/systemmaps.html
メトラについては http://en.wikipedia.org/wiki/Metra
メトラ自体のHPは http://www.metrarail.com/

  シカゴはレールロード・キャピタルとあだ名されるほど、たくさんの鉄道が起終点としていましたので撮影ポイントの案内には困らず、特集を何回かあちらの雑誌で目にしました。ただし、不思議とシアーズタワーhttp://www.thesearstower.com/からの俯瞰に言及したものがありません。ここから眺めるアムトラックのヤード全景は絶品です(トレイン誌1994年12月号)。もしかしたら天候的に外れることが多いのかも知れません。それと、シカゴ科学技術博物館の新しくなった大HOレイアウト(MR誌2003年6月号p57参照)がモデラー向きです。
http://www.msichicago.org/
http://en.wikipedia.org/wiki/Museum_of_Science_and_Industry_in_Chicago
http://www.msichicago.org/exhibit/great_train_story/index.html

  イリノイ鉄道博物館も、そのすごさは日本でも多々紹介されています。収蔵品リストはウェブサイトhttp://www.irm.org/のRoster of Equipmentのページにあって、一部は写真付きです。
  本書表紙のディーゼル機は、元BNの車両番号をBN-3、型式をE9AM(“M”はMK社でリビルトを意味する)といい、エグゼクテブ・スキームとよばれる塗装をまとってビジネスカーを牽引する予定だったものがBNSFの成立で流れ、F9のBN-1とBN-2共々1997年、博物館に寄贈されたものです。
  なお記事のp26、エレクトロライナーの綴りは、ElectroとLinerを分けずにElectrolinerと続けるのが正解です。Silver Linerも同じで、Silverlinerです。

  カブースについては"とれいん"誌上で過去に2度、1982年5月号と1994年3月号で特集され、今回の記事が完成版といった趣です。
  300両のブラス製カブースは、ほとんどが未塗装だったでしょうから、資料とデカールの蒐集、さらに調色、仕上げと、考えただけでも大変な手間を要しているはずで、前代未聞、空前絶後でしょう。この19ページだけでも我々には本を買う値打ちがあります。
  プラスチック製品のプロトタイプについて記事中に記載のないワイド・ビジョン2種は、アサーン製品がRI鉄道で木造カブースの台枠を流用して1958年から62両新製という珍車、アトラス製品の方はRDG向け1970年製ということになっています。(本ブログ記事を参照)
  BNに関して当方の蘊蓄を披露しておきますと、側窓を塞いだ理由は、p49のMP車と同様にバンダリズム対策です。またBNの3色塗り車が建国200年記念塗装というのは間違いで、これはSD60MのBN1991とセットの、湾岸戦争への社員出征応援というFreedom塗装(1992年施工)です。

  以上、ちょっと“物言い”が多い形にはなってしまいました(笑) 本心は、本書が売り切れて我々の趣味が豊かになると共に仲間が増えることを願って、“提灯記事”を書かせていただいたものです。

>>出版社の販売チャンネル >>アメリカ型資料室

■本号で話題とした場所などを空から眺める嗜好「航空写真で見るアメリカ鉄道(2005年5月1日号)」もご覧ください。

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