RMC誌2005年6月号:PRR戦時型丸窓カブースなど
back issue Vol.153 May 19, 2005, re-edited on Nov. 26, 2010, re-re-edited on Aug. 14, 2022
丸い窓といえば、飛行機や船では普通という認識ですけれど、鉄道では珍しいといった方が当たっています。ただ、アメリカの鉄道に関しては、これがソコソコ存在するのです。
大きいところでは東部のペンシルベニア鉄道PRRが機関車から貨客車まで多用していたり、EMDディーゼル機のEやFユニットの側窓といったところ。それ以外でもパシフィック・エレクトリックの正面を丸窓にした電車や、初期の機械式ガソリンカーであるマッキーンカーなどを思いつきます。
そんな中、昨日自宅に届いたレールロード・モデル・クラフツマンRMC誌の6月号で、PRRの戦時型カブースなる製品にはビックリしました。p7、ウエスターフィールド社の広告です。【画像はクリックで拡大】
この木造車体に丸窓のスタイルは、紛う方無き、エリエイ出版「レールズ・アメリカーナ1」p38右下に写っていたボディだったからです。
次のHPを見てもらえれば、その奇怪な様子を解っていただけるでしょう。同書写真では出入り口になっている部分が、なんとベイ・ウィンドーだったのです。それから、この“戦時”というのは、モードの感じから第1次世界大戦のことと思っていましたら、改造が1943-1944年ということで、ついこの間の大戦だというのですから、またまた驚きです。ボックスカーのX23を改造したからNX23というネーミングにも感心させられました。
http://www.westerfield.biz/it020001.htm
ただし、“War Emargency”という時代の要求に対して、乏しい物資で改造した古風な木造車は解るとして、手間とヒマのかかる丸窓は意外です。あるいは、N5C用のストックを持っていたとか、潜水艦用を流用したとかいうことなのでしょうか。丸窓の採用理由は、航空機では高々度での気密、船舶ではハードな防水がメインでしょう。“形状を滑らかにして応力集中を逃げる”というのは、ジェット機ならいざ知らず、スチールの鉄道車両では単なる“言い種”で、こんなところにボディ設計のウィークポイントがあるのでは、たまったものではありません。
ところでウエスターフィールド社のアドレス拡張子の「biz」は、?です。
この号の広告は、他にも注目すべきものがあります。まずp11、ブロードウェイ・リミテッド・インポーツBLIと同じ囲いで、プレシジョン・クラフト・モデルズという新しいメーカーです。最初の製品がNゲージでDCCサウンド付きのE7とうたっていますから今後、BLIばりのバリエーションが期待できるのでしょうか。ただ、よくわからないのが、同時にHOでドイツBR01蒸機を企画中というところです。 http://www.precisioncraftmodels.com/
広告ではなく新製品紹介欄p101で長文の解説が載ったのは、その名もRib Side Carsというメーカーの、ミルウォーキー鉄道のリブ・サイド・ボックスカーです。ワンピース・ボディということで、ウレタンレジン・キャストを疑いましたが、探し出したHPで射出成形スチロール樹脂だと判明しました。台車込みの値段が19ドル39セントということで、1940年代から60年代に興味をお持ちのモデラーにはお勧めできる製品です。
http://www.ribsidecars.com/
そしてp35に「サージェント」という懐かしい名前を発見しました。実は5年前にニフティ外国型会議室で同社のカプラーについて一度話題としたことがあります。今回は、材質を強度のあるダイキャストに変更し、表面を化学処理による錆色にして新発売という広告です。構造と機能については、同社サイトでも、理解しにくいところがありますので、私が5年前に綴った文章を下に再掲しておきます。
なお、広告で「wand」と呼んでいるのが、解放用の細長い棒磁石です。辞書によれば、正に「(魔法使い、 手品師などの)細いつえ」です。製品リストの「Etched Cut Lever Linkage」というのは、単なる推測ですが、カプラーを解放したときにナックルを押し広げる板バネではないかと思います。また、このカプラーと連結できるダミー・カプラーと、本物並みに機能するロータリー・カプラーも併売されています。 http://sergentengineering.com/
■2000年5月1日23:15 【米国型】HOカプラーを巡る新しい波(一部改変)
……読んだ雑誌は、RMJ=レールモデル・ジャーナル誌で、3月号と4月号のカプラーにまつわる記事です。要約しますと以下ののことが述べられていました。
まず、カプラーのスケール・サイズ化への動きで、ケーディーの新しいカプラーと、アキュメートの“スケール・サイズ”カプラーは、従来のケーディー・タイプより25パーセントほど小さくて、実物の縮尺に近いということです。
さらに、“オートマティック”と“オペレーティング”は違うということ。
マグネティック・カプラーといえば従来、線路に解放ランプを埋め込んでおいて、コントロールボードより遠隔操作で解放作用を行っていました。しかし、近年は無線式のコントローラーを持ちながら“ウォーク・アラウンド”で列車と共に動き回るのが主流ですから、手持ち式の解放器をカプラーに近付けて解放するのだそうです。
そんな解放器に、セントラル・バレィ社のUn-Dee(ウォルサーズHOカタログ2000年版p243)とか、リックス・プロダクツ社スティッカー(同p256)があります。
というわけで、“オペレーテイング”可能ということならば、ケーディーのカプラー下にぶら下がった解放ピンは不必要で、別の仕組みが考えられ、また、スケール・サイズ化の要求もあるし、というわけで、サージェント・エンジニアリング製品が開発されたということです。
ところで、このカプラーの仕組みは、判ってみれば至極簡単です。昔のOゲージには実物を模したこの類のカプラーがたくさんあったので、古い方は直ぐに理解していただけることでしょう。要は、ナックルと一体の舌が、小さな鋼球が重力で下方に落ちていることによってロックされていて、棒状の磁石を近付けると鋼球が上方に動いてロックが外れるというものです。
ただし、ナックルを開くバネがないので、鋼球が持ち上がっている間に機関車を動かさなければいけませんし、また、次の連結のためには、手でナックルをチャンと開かなければなりません。これは、本物の連結手がやっている仕事だから、我々が手でやってもいいのだと、筆者は主張しています。
突き詰めれば、“オートマティック”は幻想だったということでしょうか?
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