« カブースの参考書といえば | トップページ | プラキットのバークシャー »

2005/10/09

モデルの修理は楽しいが…

Although repair of models is a lot of fun, it is difficult to be understood by others. melma! Back Number Vol.156 2005/09/23 total 248 copies

  ここしばらく本業の方が忙しく、趣味の方に時間を割けない状況が続いています。そんな中、3連休ということもあり、模型を2、3、引っ張り出してきて、以前より気に掛けていた破損個所を修理することとしました。もちろん皆、プラスチック製品です。

atlas_np_boxcar

 まずボックスカーは、ハシゴが破損して、ハンドブレーキ台を紛失していますので、同様の未塗装製品からパーツをモギ取り、似た色を塗って差し込むだけという作業で、至極簡単に完成しました。

  次に蒸気機関車の黄銅パーツは、取付用のビスがネジリ切れていましたので、一寸頭を捻って、中継ぎ板を設け、それにハンダ付けするという構造を考えました。

 テンダーの車体下部で、欠損した一体モールドのU字形ステップは、帯材の曲げ加工が難しいので、プラ厚板からその形に削り出すこととしました。抜き勾配というか、表からは細く見えるように断面にテーパーが付いていますから、すっきり仕上げるのはソコソコ大変です。

ahm_casey_jones

  ……と、ここでちょっと疑念が湧いてきました。これ、上手く出来れば出来るほど、直したことが判らなくなってしまうんです。
  先般開催されたJAMコンベンションで林信之さんという方が「中古で楽しむ16番ゲージ」という展示をされたことがトレイン誌10月号に出ていて、この出展の顛末を氏自身が発行するメール・マガジン「私の16番ゲージ鉄道模型ライフ」に書かれています。その中の一節に、出展審査の段階で「内容がわかり難くないか」と問われたとあります。

 そうなんですよね。やっている方にしてみれば、壊れたり傷んだりした既製品を修理するのは、頭は使うし、技術もいるし、また手数も必要で、工作派として、そこのところが“楽しい”のですけれど、完成してしまうと、逆に、修理の跡が判らなければ判らないほど、オリジナルに近づけば近づくほど、その労苦が他人に理解されないジレンマが発生してしまいます。既製品なら、ちゃんとしていて当たり前なんですから……。

 トレイン誌で須藤領一さんという方が3線式Oゲージのレストア作業を連載されているところを見ても、修理、再生が思いの外に楽しくて、我々の趣味の一分野であることに間違いない、と言い切れるはずなんです。

 鉄道模型は、アイデアから構想を練り、パーツを集めて加工を施し、塗装して完成する。または、計画に沿って完成品を購入する。しかし、それで終わりではありません。たびたび運転したり、あちこちの集会に持っていけば、摩耗する部分もあるし壊れますから、修理することがあります。また、持ち主のコレクションに合わなくなり、他所へ引き取られることだってあるでしょう。そして、そこでは新しい方針に従って改造されたり、塗り替えられたりもします。

 そうです。我々が生み出した、あるいは、購入したモデルは、生き物の如く、長い年月の間に様々な因縁を重ねていくわけです。ですから、そのモデルと我々の間に多様な関わり方のあるのが道理です。

 古くてディテールがイマイチなモデルを楽しむ方法だって、たくさんあります。ただそれがマイナーなだけで、間違っているわけではありません。厳然たる趣味の範疇です。かつてはメディアが雑誌しかなかったので、取り上げにくかっただけです。インターネットを使えば、日本中に散らばっている、見も知らぬほんの数人、あるいは、たった一人にだって伝えることが出来ます。ちっぽけな個人のアピールを、テレビや新聞といったマスメディアと同じ土俵で、流通させることが出来るのです。特異な製品の希な修理だとしても、表現方法さえ工夫すれば、その快感を、それこそ全世界の人々に伝えられます。

  と、まあ、そこまでムキになって大上段に振りかぶる必要はなくて、単に、モデルの再生は楽しく、その面白さを伝える方法は簡単。判ってくれる仲間も必ずいる、ということが言いたいのです。

 私のモデルでは、修理箇所の色が完全には合わない点を、「直したことのアピール」と考えることにしました。なんか、採れなかったブドウを「酸っぱいんだ」とウソブいた、イソップ童話のキツネみたいですけれど……。

 ところで、蒸機のブレーキ・シューが一つ、無くなっていて、どうしようかと迷っています。表面の細かいモールドは手作業では無理で、完全に再現するとなると、残ったパーツから型どりコピーという手順でしょうが、余りにも大変です。おおよその形だけと思っても、形状が複雑で、強度的にも不安です。
  それともう一つ、「普通のプラスチックが油まみれになって大丈夫か」という心配があるのです。
  実は昔、ポロポロと割れてしまった経験があります。永大のHO、EF58といいますから30年以上も前ですが、動力装置を自作した時の話です。スパー1段で台車長手方向に軸を通してウォームで車軸を回すという構造で、ご想像の通り、騒音は凄まじかったものの、快調に走ってくれました。ただ、しばらくすると台車回りのパーツやプラ板が割れ始めたのです。粘り気が無くなって、脆くなった感じでした。まさか、振動が原因で疲労破壊ということはないだろうし、たぶん、ギアに注したマシン油でプラスチックが変質したのだろうと考えて、それ以来、動力部にはプラスチックを使わないように心掛けるようになった次第です。
  現在、プラスチックが製品に盛んに使われていますが、同じスチロール系でも材質が違うのかも知れません。潤滑油にシリコン・グリスを使うとか、丈夫な塗料でコートするとか、何かコツがあるのでしょうか。

|

« カブースの参考書といえば | トップページ | プラキットのバークシャー »

老年の主張 戯言」カテゴリの記事

コメント

感心しきりです。
おおげさでなく、人生の価値観をご教示いただいたような気がします。
大学生の頃、いろいろ影響を受けた先輩と会ったような心持ちになりました。

>>拙い文にコメントを頂き、恐縮です。書いた11年後に応答いただけたとは、時空を超えるという、まさにインターネットの効能ですね【ワークスK】

投稿: 久原賢二 | 2016/05/05 10:27

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: モデルの修理は楽しいが…:

« カブースの参考書といえば | トップページ | プラキットのバークシャー »