国鉄技師訪米記15:ナイアガラの滝
アルトゥーナからバッファローまで夜行列車で強行する。
melma! back issue 2006/02/08 Vol.177 total 273 copies
The book of a JNR engineer's travels around the USA in 1950, part 15
このテキストの経緯と詳細については、第1回をご覧ください。
6 ナイアガラの滝
9月23日、世界に名高い滝を見るために大きな期待をもって、わざわざアルトゥーナよりバッファローまで夜行列車で強行する。途中から連絡が上手く付き、ホルバート夫妻に案内してもらうことができる。グランド・アイランド橋を渡り市街地を抜け、公園の手前で自動車を降りて緑色の芝生を踏むと、もう滝の音が聞こえる。
その先が直ぐに滝口になる。付近には近代的な工場があり、あまりにも、あっけない景色なのには、いささかがっかりする。
私にとっては、やはり額に汗し、山間の小道を伝い岩場を登り切って、微かに聞こえてくる荘厳な水の響きを味わった後こそ、その美しさと雄大さとを感ぜられるが、滝の落ちるその直ぐそばまで舗装道路を付けたのでは、自然の床しさは全く失われてしまう。もし日本人であったなら付近をもう少し自然のままにしておくであろうと、残念な気がした。
しかし、この地は新婚旅行に人気があるとのことで、きれいな飾りを掛けた自動車が何台も走っているのを見れば、それは全くの主観の相違なのだろう。自然美に人工美を直結させ、あらゆる角度から便利に便利にと改良しなければ気の済まない米国人の気性が、ここに良く表されていると思う。
カナダへはレインボー・ブリッジを渡れば直ぐに行けるわけだが、我々日本人は米国内のパスポートだけなので入れない。橋の真ん中に検問所があって、カナダ側を警察が警備している。ゴート島にも別に取り立てて美しい風景があるわけではなし、名前につられて見物に来たものの、気の抜けた形であった。
■このあまりの落胆ぶりは、ちょっと極端です。私も12年前の訪米で見物しましたが、落差が思っていたほどではなかったものの、雨合羽を着て乗り込んだ船で味わった水しぶきは印象に残るものでしたし、行きの飛行機が上空で旋回してくれたのも感激でした。
「ナイアガラ」は花火大会の最後を飾る大仕掛けや、大滝詠一の曲名にもなるなど、昔から日本人にある種の憧れを抱かせてきました。著者はシカゴとニューヨークで、自動車などの文明の利器や大都会の喧騒に辟易した直後なので、自然が作った景観に期待していたものが大きかったのでしょう。
私の場合、さらに、ツアーで連れていかれた近所の土産物店の際で見付けた線路が、生まれて初めて触ったアメリカのレールでした。
ナイアガラを航空写真で見ると、周囲は完全な市街地ですね。54年前だって同じ様なものだったのではないでしょうか。
ナイアガラ川は南東から北へ流れていき、東がアメリカで、西がカナダ。真ん中のアメーバーのような形がゴート島、その北がアメリカ滝で、南がホースシュー(カナダ)滝。その北の赤点がレインボーブリッジです。アメリカ滝のゴート島寄をブライダル・ベール滝と呼ぶようですが、それが新婚旅行の人気スポットだった理由の一つなのでしょうか。
>>【ワシントン】
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