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2006/02/02

国鉄技師訪米記8:再びシカゴへ

機関車の屋根の上には、自動車のハンドルのような丸い鉄でできたアンテナがあり……
melma! Back Number 2006-02-02 Vol.170 total 270 copies
The book of a JNR engineer's travels around the USA in 1950, part 8

このテキストの経緯と詳細については、第1回をご覧ください。

10 再びシカゴへ

 10月5日(木)名残のニューヨーク、ワシントンを後にして夜行列車に乗りシカゴへ帰る。
 翌6日10時30分シカゴ着、荷物は差し当たり必要ないものはシカゴと日本へ送り返しておいたが、それでもスーツケースの大小2個とタイプライターの計3個になり、列車を降りてしばらく赤帽を呼ぶべくホームにいると、「May I help you?(助けてあげようか?)」といって、兵隊さんが一人近づいてきて、1番重いスーツケースを持ち駅の外のタクシー乗り場まで来てくれる。兵隊さんは「Good Luck」と言って去っていったが、米国を旅行して親切にされるのは誠にうれしいもので、愉快な憶い出の一つを得たことを喜んだ。
 宿は前から予約しておいたYMCAホテルに行く。

10-1 YMCAホテル

 10月6日初めて泊まるまではYMCAホテルとはクリスチャンの特殊なホテルか、または学生の安宿かと誤解していた。事実安いことは安い。しかし施設は値段の割りにはそう悪くない様子である。入って最初、住所氏名を書くと、普通ならベルボーイが室の鍵と荷物とを持って案内してくれるのであるが、ここでは先ず宿泊料を払わねばならない。
「料金はいくらですか?」と聞くと、
「何日泊まる?」と逆に問われ、
「10日です」
「では10日分16ドルをお支払下さい」
 1日1ドル60セントとは信じられず、「60ドルの誤りではないか」と聞き返したほどであった。この室はシャワーも便所もついていない。狭い中にただベットと洋服タンスがあるだけ、まことに簡単である。
 3ドル以上払えばシャワー付の室を選べる。ベルボーイが来るわけではないし、全てがセルフサービスを建前とし、私にとってはかえって気分が楽だし気持ちもよかった。ただ、シャワーを室の外へ浴びに行くのだけは今までのホテルで経験しなかっただけに誠に不便に感じた。1階にはカフェテリアがあり、安価な食事をとらせてくれる。
 土曜の夜、ドアに「Sunday Morning Bible Class 9時30分もしご都合がつけば来てください」と紙をはさんで行く。私も一度行ってみたいと思ってはいたが、行きそびれてしまった。
 しばらくは再びナルコ研究所への通勤とサンタフェ鉄道の見学とを行う。1カ月振りで研究所を訪れるとロバートソン氏への質問が山の様にある。行く前に教わったこと等を実地に目で見て、分析、缶水処理に色々と疑問が出てきた。氏は一つ一つ丁寧にそれを解いてくれる。帰宿後回答を整理するにはこの1ドル60セントの室は一寸狭すぎたので、後半は変えることとにした。

10-2 サンタフェ鉄道の機関区

 シカゴの真ん中にサンタフェ鉄道の機関区が2つある。10月10日から3日間、ここで検修課長チャップマン氏の同行を得て水処理の検討と検修面の調査を行う。水処理については後述する。この機関区も他と同様に蒸気機関車庫は古く、汚く、そして薄暗いのに対し、デイーゼル車庫は新しいスマートなものができている。
 庫長さんは過去5年間の修繕費の変化を数字で示してくれる。

image001 現在、ディーゼルの方が蒸気に比較して1/4の経費で済んでいる。また蒸気の修繕費は年々増加しているのに対し、ディーゼルは大量生産で部品の価格が低下したことと、従事員が次第に修理に慣れてきたことに原因があると思う。
 蒸気の修理では何といっても缶修理に重点を置いている。米国政府の代行機関アイシーシーInterstate Commerce Commission【州際通商委員会】が定めた缶に対する規程は相当厳格であり、それを基準にして、この鉄道では、毎日検査、1月検査、3月検査、6月検査、1年検査を施行している。その検査結果は詳細な表となって、アイシーシーの本部へ送付される。走り装置等については厳格な規程は作られていない。以前に缶の事故のため、度々社会問題を起こしたことがこの原因となっているという。

DSCF2195a  この操車場に使用されるディーゼル入換機関車にはラジオを装置して、乗務員と信号掛または運転係と連絡しあっている。機関車の屋根の上には、自動車のハンドルのような丸い鉄でできたアンテナがあり、キャブ内には受話器と拡声器とが二つ設けられ、ラジオの装置はエンヂンルームに入れられている。
 機関車から信号係を呼び出すこともできるし、逆に信号掛詰所から乗務員(数台常に動いているから、その中より選択する必要がある)に連絡することも可能である。電源は直流60ボルトを使用し、装置の価格は1台分600ドル(22万円)だとのこと。

 国鉄においても、吹田とか新鶴見とかの大構内の入換機関車をディーゼルに置き換え、ラジオを装備し、乗務員をヤードマスターの命令下に置いたなら作業能率は相当上げられるのではあるまいか。

>>【再びシカゴへ(続)

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