流線形コレクション2:乗用車、バス、飛行機
melma! Back Number 2006/07/17 Vol.188 total 297 copies
「流線」という単語は元来、純然たる工学用語で、鉄道模型大辞典でも紹介した通り、「流動している流体の、ある瞬間における運動方向を繋いで出来る曲線を意味するが、流体中に置かれた物体の受ける抵抗は、流体に混乱流動を起こさしめるときは大きく、これに反して流線運動にあるときは小さい。従って流線型とは最も空気抵抗の少ない形状に名付けたもので、これが研究はいろいろの模形を作り、これを風洞試験をして空気抵抗を機械的に決定し、最も抵抗の少ない形状を研究し、実用化する方法に依るのである(1935年大阪鉄道局編纂「鉄道用語辞典」)」という定義です。
そういえば30数年前の実験演習で、水にアルミ粉を浮かべてポラロイド写真を撮らされた記憶があります。「流体工学」が持て囃されていた頃です。蛇足ですが、私の学校では「流れ学」と言っていました。勉強には華やかなことは全くなくて、授業では明けても暮れてもストークスとかレイノルズ数の数値計算をやらされました。筆算では到底無理で、計算尺です。ラリー部所属の友人は手回し式のタイガー計算機を使っていました。不思議とソロバンの人間はいませんでした。四則演算が出来る電卓が発売される少し前の話です。
英語で言ったらfluid dynamics。ところで「さなえちゃん」を歌ったフォーク・グループ「古井戸」はどうなったのでしょう? それはさておき、鉄道と同じく自動車においても1930年代、流体力学適用の動きがあります。クライスラー社の、その名もエアフローAirflowという車です。しかし、企てた者の思い入れとは裏腹に販売的には大失敗だったとのこと。後年、自動車レースで200km/hを超える様になってから車輪にダウン・フォースを与えるウィングを装着し始めたことを思えば時期尚早、今から見ればフォルクス・ワーゲンのカブトムシと何ら変わらぬスタイルですから、空力効果云々はアメリカの大衆にアピールしなかったのでしょう。
■クライスラー:1934年登場のエアフロー(手前model: Brooklyn 1/43)はアメリカ初の空力特性を考慮した車といわれる。同社のカール・ブリアーが中心となり、スケルトン構造など数々の画期的な技術を盛り込んだが、販売的には不振で、デザインの改良を重ねたものの1937年で生産を終了した。なお、我が国で1936年に登場した、トヨタ最初の市販型乗用車TOYODA AA(奥model: Kyosho 1/43)は、このエアフローが手本と言われる。
「流線形」についての我が鉄道模型大辞典の解説は、
「ストリームライン」
ウィキペデアの解説(英文)は、
http://en.wikipedia.org/wiki/Streamline
クライスラー・エアフローについての解説は、
http://en.wikipedia.org/wiki/Airflow_Chrysler (英文)
http://gazoo.com/meishakan/meisha/ (「名車列伝」日本文)
エアフローを参考にしたという1936年製豊田AAについては、ウィキペデア日本語版を「トヨダAA型乗用車」で検索してください。戦前は「トヨタ」ではなく「とよだ」と、濁ったのだそうです。どうもこの車、どちらかというとエアフローの1935年改良モデルの方に似ています。
1930年代のアメ車について、元いすゞ自動車の渡部陽という方が思い入れを綴られています。
http://www10.ocn.ne.jp/~awjuno/sub610.html
ところが、第2次世界大戦が終わって1950年代に入ると俄然、様相が変わります。豊かさの象徴というか、大きくて派手なスタイルが幅を利かせる様になります。テールフィンとクロームメッキの、いわゆる「アメ車」の時代です。もちろん、空力的な考慮ではありません。モデル・カーズ http://www.modelcars.jp/ 誌2002年1月号に特集があって、モデラーが仕上げた大きいスケールのプラスチック・モデルがたくさん紹介されています。また森口将之さんという方のテキストも大変参考になりますので、数少ない資料として、興味をお持ちの方は古書店やミニカーショップでのバックナンバー入手をお勧めします。
■1950年代のアメリカ車はテールフィンとクロームメッキが持て囃され、ビッグ3がこぞって大きく煌びやかなデザインを売りものとした。モデルはフォードの1957年マーキュリー・ターンパイク・クルーザー(model: Ertl 1/43)と、1959年GMシボレー・インパラ(model: Sun Star 1/43)。
ところで乗用車モデルの1/48は古いプラスチック・モデルに僅かにあるだけで、1/43が世界の標準となっています。鉄道の様な軌間の問題がありませんから、この世界統一スケールは羨ましい限りです。ジオラマとかレイアウトへの展開は無くて、ただ車自体のコレクションだけを考えればよいジャンルなのかもしれません。また1/43は、ほとんど全てダイキャスト製のミニカーと呼ばれる範疇の様です。鉄道車両に較べて図体が小さいので、1/48の我々がジオラマの中などで一緒に並べてもそんなに違和感はないと思います。メーカーはアーテル、マッチボックス、フランクリン・ミント、サンスターなど玉石混淆といったところ。1930年代モデルも含めたラインナップでは、ここに示したソフトメタル製のイングランド・ブルックリンというメーカーがありますが、値が張るのが難点です。
自動車モデルを併用軌道に置こうという魂胆があって、私は国産車を含めて少し買い込んでいるというわけです。
バスの世界はちょっと判りません。情報入手は専らこれもウィキペディです。1/50のダイキャスト製がコーギ社に幾つかありますが、私は、グレイハウンド2階建てバスを入手しているだけです。スケールは1/76、1/87の方が種類が豊富です。
■グレイハウンド・バス:PD-4501シーニクルーザー(model: Corgi 1/50)はGMC社 が1954-56年に1,001両を製造した2階建ての高速バスで、エアコン、空気バネ、トイレを備えていた。デザイナーはレイモンド・ローウィ。
グレイハウンド・バスについては
http://en.wikipedia.org/wiki/Greyhound_Lines (英文)
(日本文あり。英語版からジャンプしてください)
シーニクルーザーについては
http://en.wikipedia.org/wiki/PD-4501_Scenicruiser (英文)
飛行機では、1/48スケールが結構ありますが、みな軍用機です。旅客機では唯一、モノグラム=ハセガワにダグラスDC-3を見つけました。苦労の末、アメリカのEastern Airlinesのモノを入手しましたが、古すぎたのか、デカールを水に浸すとパラパラと割れてしまいましたので、シルバー塗装状態での展示となります。
ところで、私がDC-3を入手した理由は、単に今回の流線形展示のためで、他意はありませんから、持ち運びや保管に便利なように主翼と胴体とは接着せず、ネジで分解できる構造としました。正直言って、飛行機の1/48はデカ過ぎます。
■ダグラス:DC-3(model: Revell- Monogram 1/48)は1936年に開発され、軍用輸送機C47や、日本やソ連のコピーを含め1万機以上が製造された。70年を経過した今日でも現役で数百機が存在する。
ダグラスDC-3については
http://ja.wikipedia.org/wiki/DC-3 (日本文)
あと、乗り物といえば船ですけれど、あったとしても1/48は……
■この続きは「流線形コレクション3:PRR、NYC、ATSF」へ
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コメント
シーニクルーザーの雰囲気がちょっとビスタコーチ(こっちは2層式)に似てますね。
パンフの雰囲気もどことなくエルキャピタンなど鉄道のを感じます。
投稿: よしくん | 2006/08/03 23:36