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2006/09/26

国鉄技師訪米記22:バスと電車

サンフランシスコでは路面電車と無軌道電車のトロリーが
melma! back issue 2006/09/26 Vol.197 total 306 copie
The book of a JNR engineer's travels around the USA in 1950, part 22

このテキストの経緯と詳細については、第1回をご覧ください。

18 バスと電車
 
 長距離輸送用として航空機、鉄道、長距離バスがあるに対して、近距離輸送、特に都市交通としてのバス、路面電車、地下鉄は決して等閑に付すことは出来ない。
 市街地のバスは大抵30~40名の定員で、前後に出入り口がある。車掌は多くの場合乗車せず、運転手一人で運転の傍らドアを開け閉め、料金を受け取り、乗換切符を渡す。しかもドアは前方と中央の2カ所にある。日本で考えると正に神業のように思われるが。

 乗客は前のドアから入らなければならない。中央の口は出口専用である。入り口の運転手のそばに料金を集める箱があり、客が規定の金を入れると、ガラスの容器を通して運転手がのぞいてその都度ボタンを押すと、料金は下の別の箱に落ちると同時に乗客数が刻まれる。
 運転士は時々(運転中でも)下の箱をあけ1セント、5セント、10セント別に小分けして各種類別に筒に入れ、釣銭を要求する客には運転中でも手探りだけで、間違わずに小銭をくずして渡している。日本では金を受け取り、釣銭と切符を渡すのだが、米国のバスでは必ず小銭にくずして全額を客に渡し、渡された客がその中から料金を料金箱に投入する。運転手自身で料金箱に料金を入れることはない。

 乗換切符を要求する客にはそれを渡す。この切符は同一方向で一定時間以内であるなら何遍乗り換えても差し支えない。しかし10セントの電車で乗換切符をもらい、17セントのバスに乗った場合には切符を示すときに料金箱の中へ7セントを入れる必要がある。

3b  シートはロマンスシートをおき、非常に感じがよい。速度も相当高くてタクシーと競争している場合もある。
 客が降りる直前に窓の上のヒモを引くと、運転手の近くでブザーがなり、運転手はコックをひねりドアを開ける。前のドアは運転室のコックをひねるだけで開くが、中央のドアは2つの条件を満足しないと開かない。それは第一に運転手がコックを開けること、第二は乗客がステップの上を踏むことで、この2つを満足しないとドアは開かない。運転台のコックをひねっただけでは開かないし、乗客がステップに降りただけでも開かない。
 運転手の前の鏡は後方の車を見るものの外に、中央のドアを見ることの出来る鏡が別に付いていて、降りたい客がステップを踏まずに「降ろしてくれ」とヒモを引いている場合、鏡の中の客を見ながら、Step Downと注意する。

 路面電車は大抵トロリーを使用していた。ワシントンでは一部第3軌条を利用していたが。
  今はやりのPCCカーは各都市を風靡し騒音電車は次第に駆逐されつつある。この電車には防音装置が施され、ブレーキはマグネットで直接レールをこする方式と普通の制輪子式を併用している。
 無軌道トロリー式も騒音の少ない点と、道路の有効使用の面では喜ばれ、数都市で広範囲に利用されている。
 電車は大抵車掌を乗務させているが、閑線区では車掌を省略し、バス式に一切を運転手がやっている場合もある。

 サンフランシスコでは路面電車と無軌道電車のトロリーが二つ架せられるのを見てちょっと驚かされた。それにまた、この文化都市に恐ろしく旧式のケーブルカーが存在している。このケーブルカーの終点には人力で動かす転車台がある。
「何故こんな旧式なものを未だに使用しているのですか」とこの都市の人に尋ねると、
「道の勾配がきついからケーブルカーでなければ無理です」
「しかし自動車は自由に走っていますが」
「自動車なら行けます。普通の電車では無理です」
「ではバスに変えたらよいでしょう」
「サンフランシスコの名物が無くなってしまいますよ」
 人力で回す転車台は要するにサンフランシスコの名所となっているのである。

 地下鉄はニューヨーク、シカゴで見たが利用者は実に多い。特にニューヨークでは高層建築が多く、高架と地下以外は路面を利用した乗物は非常に不便であるので、ニューヨークのマンハッタン島の中心部においては地下鉄は輸送機関の中で最も重要なものとなっている。
 8両連結の電車が複々線で地下を走っている姿はなかなか壮観である。車掌は車と車の中間で、広げた両足を両方の車体にかけ、ホームをのぞきながらドアスイッチを扱っている。地下鉄の料金は10セントで、その昔東京の地下鉄がそうであったように、10セント入れると腕木のロックが4分の1回転だけ自由になり、1人だけがホームに入れる式で、改札口には誰もいない。10セントに両替してくれる両替所は必ず改札口付近についていた。出口でも腕木を4分の1回転しないと出られないのは、降車人数をも算えているのであろう。
 
ワンマンバスの説明は、我々には冗長に過ぎますが、当時の日本人には理解しがたい仕組みだったことでしょう。地下鉄の車掌が連結部でとっている姿勢は、ちょっと想像がつきません。幌が無くて、連結面から顔を出せるということなのでしょうか。なお、「無軌道トロリー」の記述や、「運転手」と「運転士」の書き分けは原文のままです。

>>【チップと土産と対日感情

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