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2006/10/15

腕木式信号機にY現示がある?!

melma! Back Number 2006/10/15 Vol.206 total 307

 先日、私の入っているアメリカのBN鉄道友の会Friends of The Burlington Northern Railroadから、会誌10月号が届きました。
 楽しみのカラー特集はOakwayのSD60です。1986年に100両が新造されてBNが借り入れたEMDの3,800馬力6軸ディーゼル機で、私もプロト2000のモデルを2両、仕上げています。そう、例によって、1枚1枚の写真に写っている機関車のビーコンやエアホーン等の装備と撮影年月を確認しているまでは、心穏やかだったのです。

Dscf0598  しかし、表紙で線路際に立っている信号機が腕木式だと気が付いてからは、大興奮となってしました。
 なぜなら、1980年代後半、日本だって腕木式はローカル線の一部だけだったはずなのに、この写真は新製間もない本線用大出力機がトレーラー・トレインを牽引している線区なのですから……。さらに、よくよく見れば、信号機にはレンズが3つも付いています。【画像はクリックで拡大します】

Dscf0604a 実は正にこの信号機のKyodo製モデルをその前日に手に入れていたのです。
 「協同ライト商会」という、50年も前からアメリカに信号やライトの模型を輸出していたメーカーが未だに存続していて、新たに販売サイトを立ち上げたというので、いくつかの品種をサンプル的に送ってもらったもののうちの一つでした。

 私の知識では腕木式は2位(2ポジション)、それも「進行」が下斜め向きです。それが、これは橙黄色を加えた3位(3ポジション)で、さらに「進行」が直上となっています。

 また、しばらくして市民図書館から借りた山中忠雄著「目で見る日本の産業(22)国鉄」昭和38年刊によれば次のようにあって、なんと日本でも大正の終わり頃からこれが使われていた様なのです。

「明治6年には、……セマホール合図(今の腕木信号機)……を定め、大正2年……F型腕木自動信号機、……電車の回数が増すにつれて、“進め”“止まれ”のほかに“注意”の信号が必要となり、上向き3段に働く腕木信号機を用いました。これは、大正10年、横浜・大船間を始め、東海道、東北、山陽、鹿児島など、各線にわたって使いました。……」

 蛇足ながら、“セマホール”はsemaphoreで、“セマフォーアー”の表記の方が適当だと思いますが、鉄道院の規定にはそう書いてあるのかも知れません。

 私のトラの巻、大阪鉄道局編纂「鉄道用語辞典」昭和10年刊を開けば、腕木式信号機には2位式と3位式とに、それぞれ上向と下向が存在し、「我が国有鉄道に有りては、上向3位式および下向2位式が用いられてゐる」とあります。

 矢も盾も堪らなくなって製品の封を切り、パワーパックに繋いでみました。ライト点灯用の電線が2本に対して、電磁コイルの電線は3本で、その内の2本を選んで短時間通電すると、直上と真横に瞬時に腕木が変わり、その位置のフィルターでライトは緑Gと赤Rになります。燈黄色Yは電気的には止められませんが、手で持っていくことは出来ます。

Semapho2

 なおこの信号の種類は、腕木の色が赤で先が尖っていますから閉そく信号機という、駅と駅の間に、ある間隔を置いて設置されているタイプです。BN友の会の表紙は場内信号機です。出発信号機はこの腕の長さが少し短くなります。腕木の裏は3種とも、表の赤の部分が白、白の部分が黒です。
 
 Kyodo製品(N、HO、O)を販売するシグナルズのサイトもご覧ください。

 ウォルサーズ社のカタログは、輸入業者のNJインターナショナルのところに載っているはず、というのは、私の手元には同カタログの数年前の版しかないからです。

 日本型とイギリス型のファンが用いる場合は、アメリカの右側通行用で腕木の向きが右となったものを、厳密には左側通行の左に改造しなければならないはずですが、色灯式は転用が可能だと思います。

 このKyodoのラインナップには、他に「ターゲット」とか「サーチ」とか、一体どういう設定で使うのか、分からないものが多くあります。

 実は、「アメリカの鉄道信号」なる鈴木嶺夫という方が昭和26年に出された本を入手していたものの、技術報告のページは難解な専門家向けの記述ばかりで目を通していませんでした。

 本誌の読者にはこの名前にピンとこられる方もおいでのはず。そう、連載中の「国鉄技師訪米記」に出てきました。それで、興味に駆られて取り寄せたというわけで、技術報告の他に1/3ほどが旅行記に割かれていますので、福島善清氏の文章と対照して面白い紹介ができそうです。ただし、こうなると難儀なことに、技術部分も読み解く必要が出てきましたね。

【追記1】 Nゲージではトミックスが2位式を予告していて、これから腕木式信号機が大ブームを起こす様な気配が……。

【追記2】「セマホール」という語を検索していたら、「腕木通信」なるものに行き着きました。なんとウィキペディアにも解説があります。電信の発明される前にフランスを中心に普及していたシステムだそうで、ナポレオンがことのほか恩恵に浴したとか……。

Signals【追記3】arxさんのブログに、腕木が真上に向いた写真が登場しました。これが2位式か3位式かは大いに興味をそそるところです。
 本文中で言及した「鉄道用語辞典」から付図を引用しておきます。2010-02-26

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コメント

semaphoreという単語はコンピューターの世界でもよく使われます。
複数の計算を同時進行させる時に、処理の衝突を防ぐ仕組みのことです。
用法はともかく、こちらの世界でのカタカナ表記は「セマフォ」となっています。

「セマホール」とも「セマフォーアー」とも異なっているのがおもしろいと思って書き込みました。

>>コメントありがとうございます。改めて辞書を引けば「セマフォア」あるいは「セマフォー」辺りでしょうか。「セマフォール」を検索すると、チェニジアにある食堂の名前フランスの作曲家の作品名チェコの劇場名フランスの1880年頃の新聞名等が引っ掛かりましたから、フランス語でしょうか。「フォ」か「ホ」でも検索結果は変わるし、カナ表記は難しいですね。【ワークスK】

投稿: YUNO | 2010/03/06 23:21

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