« アンケート:この趣味で専有している面積は? | トップページ | アンケート:アサーン製品の保有台数は? »

2006/11/05

レタリング問題あれこれ

そろそろ年賀状の季節で、パソコン印刷に転換するまではプリントゴッコ……
melma! Back Number 2006/11/04 Vol.209 total 313

 モデリングで我々の頭を悩ます問題に、レタリングがあります。特に白い文字ですね。

 現実的な方法は、先日お伝えしたようにデカールですけれど、理想的には、インスタント・レタリング、いわゆるインレタ、アメリカでいうドライ・トランスファーが欲しいところです。デカールのように文字の周囲にフィルムの厚さが見えず、実に綺麗に出来上がります。インレタのコツは、シートを所定部位にテープで仮止めし、ボールペンの先などで擦った後にシートをめくって転写していることを確認し、もし転写されていなければシートを降ろしてまた擦るという作業を繰り返すことです。

 私が組み立てた木製キットのラ・ベル社製品はOゲージの玉手箱をご覧ください。ウッドですから、押したところが少し凹んでいます。

 写真のワフ29500は1970年代中頃に、Eidaiプラキットのワム23000から改造したもので、インレタのメーカー名は忘れました。【画像はクリックで拡大します】
Dscf0657a

 この欠点は、特注代が高いこと、特定の色しか出来ないこと、古くなると“風邪”を引いて使えなくなること等で、手軽というわけにはいきません。

 以前に国鉄客貨車の各形式用が発売されていましたが、常時在庫ではないようです。先日、千林の「きりん」で尋ねたら、デカールを勧められてビックリしました。10年ほど前には、アメリカ型でもインレタを発売するメーカーが2、3ありましたけれど……。

 一方、30数年前にペーパー電車の師匠である西尾博保氏に伝授された方法は、ポスターカラーによる手書きです。“ハンド・レター”ですね。
 上等な面相筆を使って、失敗したら水を含ませたディッシュ等で拭い、気に入るまで何度でも書き直すわけです。エナメルとかプラ・ラッカーは、筆先のコントロールが難しくて上手く行きません。

 ポスターカラーは隠蔽力があり、色も自在ですから、当時のモデラーが求めるレベルでしたら、結構な雰囲気まで出せたと思います。私が描いた貨車と電車をお見せします。
Dscf0658a

 ちなみにワム23000の型式や自重の小さな文字は、プラスチック・モデル自体のモールドです。
 まず文字の周りを四角くマスキングしてプララッカーの白を吹き付け、乾いたらポスターカラーの黒で文字の周りだけ塗りつぶし、生乾きの内に凸部の黒を拭うという方法です。文字は浮き出た陽刻ですから面倒ですが、もし文字が彫り込まれた陰刻だったら、窪んだところに色を入れて拭き取るだけですから、簡単な作業です。

 しかし、プラスチック・モデルのスジといえば、同じシリーズでワム50000の側板のつなぎ目も陽刻で、何か造形上の困難さでもあるのかもしれません。

Dscf0648a

 また、私鉄電車のマークは直径4mmで、全くのフリーハンドですが、後でプラスチック板に各寸法の穴を開けた円定規なるものの存在を知り、鉛筆で外周だけでも入れておいたら、もう少しマシなものになっていたと悔やみました。オーバーコートはクリア・ラッカーでなぞっています。

 さらに、実は当時普及し出した9mmゲージに色気を出したことがあります。機芸出版社刊「陸蒸気からひかりまで」の1/150で描かれたナハ10に、試しにナンバーを落書きしてみました。しかし、やはり無理でした。それもあって、N転向は断念しました。

 

Okajyoki

 プリントゴッコという手もあります。会社の先輩、澤村達也氏がとれいん誌の96年5月号において掲載の京福テキ6とテキ511に、稲妻マークや漢字、さらに細かい表記までもが読める形で美しく入れられています。

 この原理は、シルク・スクリーンや謄写版と同じで、黒で描く版下さえ正確に出来れば、後は光学的に原版を作るだけですから応用の利く方法です。細かい孔が開いた原版と、透明フィルム・シートとの2重構造の間にインクを仕込んで、車体面に原版面を接触させて、指か何かで透明フィルム・シートを押せば、原版の孔からインクが滲み出て印刷となる仕組みです。
 なお、プリントゴッコは1990年頃に解像度が向上した「ハイメッシュマスター」にバージョンアップしていて、同氏もそれを使用されています。

 そういえば、そろそろ年賀状の季節ですが、10年前にパソコン印刷に転換するまで、私にとってプリントゴッコとの格闘は師走の重大な年中行事でした。
 これ、確かに趣きのあるものが出来上がるのですけれど、図案の着想に苦しんだ上に、1週間ほど、八畳間いっぱいに広げて乾燥させつつ5百枚に多版多色刷りを行うのは、大変な労力でした。その甲斐あってコンクールで金賞をもらったこともあります。自慢のついでに電車を題材とした一枚をお見せします。【これ以外は「我が家の年賀状」をご覧ください m(_ _)m】

 なおプリントゴッコは今でも市販されていて、インクにシルバーとゴールドもあります。また、一旦デカールに印刷して、それを貼るなど、思わぬ利用方法があるかも知れません。

 普通のインクジェット・プリンタで印刷できるデカールは、寺久保敦己氏のブログ「新・模型鉄道の夢」(10月23日)に言及があります。
 インクに耐水性がないので、オーバーコートが必要なことと、白インクがないという不自由さがありますが、なんといっても手軽です。また、色合いや繊細さが要求されて、下地が白っぽい色などの条件が合えば、検討してみる価値はあります。例えば次のサイト【消滅確認】をご覧ください。

 一方、レーザープリンタも使えます。ただし、ぶ厚い台紙を精密機械に通すのは勇気が要るかも知れません。私のBNバイセンテニアル機のナンバーは、これで自作したデカールです。プリンタが壊れかけていたので、思い切って出来た次第です。カラーでも可能だとは思いますが……。また、しばらく前に白色トナーが開発されたというニュースもありました。

 こうしてみてくると、アルプス電気のマイクロドライ・プリンタによってブランク・デカールに印刷する方法が、白やメタリックが使えるという最大のメリットを持ち、かつ、自由が利き、手軽で安価ということで、現在では最良ということになります。

 確かに、いつまでメンテナンスの対応や消耗品の供給がなされるかという心配もありますけれど、これだけ根強い支持があるのですから、何とかなるだろうと私は高を括っています。白だけは一生使うであろう量を蓄えていますけれど……。

 この方法のレタリング例を2つ、お見せします。
Dscf0001a

 まず、BNのカバード・ホッパーで、とれいん誌2000年1月号で紹介したセンターフロー貨車の細かい白文字表記です。ワープロで6ポイントの文字を作り、印刷時に50%縮小していますから、都合、3ポイントの文字です。フィルムの切り出しにカッター・ナイフを使ってしまいましたので、一部その縁が目立っています。本来なら、よく切れるハサミとしなければいけません。

Aimg102

 もう一つは、JAMコンベンション第1回に参加した際に、86フィート・ボックスカーを自分で考案した図柄で飾ったものです。煙を吐くJAMマークの解像度が低いのは、HPから採取した原画自体のせいです。赤の文字はワープロによる生成で綺麗に入っています。
  しかし、四角に囲った黄色の地色には細かい網目模様が見え、この辺りが一つ、マイクロドライの難しいところです。全体の姿はガラクタ・コレクションでご覧ください。
  
 あと、デカールで心配なのは、黄変です。自作デカールに限ったことではないのですが、透明フィルム部分が色の明るい塗面に載って年月が経つと、すこし黄ばんでくるようです。原因は紫外線なのか酸化なのか判りませんが、出来るだけ箱に仕舞っておくしか対策はないのでしょうか。この例は、ガラクタ・コレクションのNMRA 25周年記念貨車をご覧ください。
 
 それから、本格的に独自のパターンを作りたい場合は、ドローイング・ソフトを導入しなければなりません。またフォント、書体も問題です。レールフォント・コムという奥の手があります。パソコンに定番で入っているフォントでも、少し弄ると使えることがあり、BNの「BURLINGTON NORTHERN」は、Gothic 720の太字(ボールド体)で高さを120%にするとそれらしくなります。
 
 まあ、いくら機械を揃えたところで、やる気がなければ、何もできあがりません。最終兵器は、ハンド・レターですね。

|

« アンケート:この趣味で専有している面積は? | トップページ | アンケート:アサーン製品の保有台数は? »

ちょっとしたヒント」カテゴリの記事

コメント

ご紹介いただきまして有難うございました。技量未熟で恥ずかしい限りです。
ワークスKさんのノウハウを参考にさせて頂き、こらからもトライしたいと思います。

投稿: 寺久保 敦己 | 2006/11/05 14:56

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: レタリング問題あれこれ:

« アンケート:この趣味で専有している面積は? | トップページ | アンケート:アサーン製品の保有台数は? »