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2007/08/16

電車も水浴びしたい!

Railway noise abatement by the sprinkler system

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Dscf5257b 京阪京津線が京都山科から逢坂山を越えて最初の駅である上栄町を発車し、これから大津市街の併用軌道に進入しようとしているところです。LEDの行き先表示は途切れていますが「浜大津」です。

 ここで注目していただきたいのが、レールから立ち上っている白い煙。余りの暑さによる陽炎ではありません。実はレールの直ぐ横にノズルを並べて水を細かい霧にして吹き出しているのです。炎天下に水煙の中を進む空色の電車は、いかにも涼しそうです。【写真はクリックすると拡大します】

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Dscf5252b 行き過ぎた後に写した写真をご覧ください。ノズルが左に7個、右に4個あります。電車が近付いて来ると吹き出し、通り過ぎると止まります。
 一体、何のためにこんな事をしているのでしょうか。 連日の暑さですから電子機器が誤動作するとか、あるいは台車に温度膨張の影響がある、というわけではありません。

 左に急カーブとなっているところがミソで、キシリ音(きしり音、軋り音、軋み音ともいいます)を防止するためのものなのです。
 曲線でキンキーンと鳴るキシリ音は、鉄の車輪とレールを使う鉄道では困りものです。直線の少ない私鉄とか路面電車では人家に近いこともあって、特に嫌われます。この線区は40mぐらいの曲線で市街地を縫うように走るのですから、大きな問題です。

 ところでこのキシリ音、実際に電車に乗ってみれば、雨の日には鳴かない、あるいは少ないことに気が付かれることでしょう。ならば、レールに水を撒けばよいと、普通は塩ビのパイプなどに孔を開けて水道水を吹き出すものを設置するのですけれど、水圧の変化もあって水が上手くレールの上や車輪踏面に当たらないし、「下手な鉄砲も数撃てば当たる」とばかりに大量に撒けば、バラストの下の軌道基盤が常に水浸しとなって沈下してしまう、というような弊害があります。

 水が駄目なら、グリースのようなペースト状の物体を塗るという試みもありました。でも、駅の入り口のようにブレーキを掛ける場所では、油は怖い存在です。片側のレールだけとしたところで、制動距離が延びるものは延びます。また、成分によっては環境への悪影響もあります。

 そこで、このアイデアです。強い風が吹けば駄目ですけれど、ほぼ確実に車輪を湿らせることが出来て、水量は最小で直ぐに乾きます。水だから害はないし、ブレーキ距離の延びも雨降りと同等というわけです。正に現場的発想で、素晴らしい発明です。
 ここ8年ほど業界を離れているので事情を知らないのですが、この方式は他の鉄道にも普及しているのでしょうか。

 ところで、この写真で不思議がられるのは、両側のレールで水煙を立てていることだと思います。普通に考えたら、キシリ音は車輪のフランジとレールが擦れて音がしているのだから、カーブの外側だけでいいはずですよね。
 実はキシリ音の音源は車輪で、それも両側、どちらかといえば曲線内側の車輪の方が良く鳴っているのです。私はこの辺りに無茶苦茶ウルサかったので、書き出すと止まらないのですが、暑さの続く昨日今日にあって、とりあえず涼しそうな話題だけをお伝えしておきましょう。

【追記】電車曲線での車輪の挙動については「ゲージ・スラックの鉄道工学」を、また電車に乗って水煙りを見て回る「カブリツキ京阪京津線は水煙いっぱい」、「電車はどうして曲がれるのだろうか?」もご覧ください。車輪の鳴きは、フランジの擦れる音では無く、さらに左右車輪の円周差が原因でもないのです。2011-11-04

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コメント

 これと同じ装置は東急世田谷線の下高井戸を出てすぐのカーブ区間にもあります。やはり人家が密集した場所での騒音防止が目的です。

 騒音はフランジとレールの軋りだけではなく、外側に押された車輪が反動で内側に戻るという蛇行動により、レールと踏面がこすれる際にも発生するそうです

投稿: 楠居利彦 | 2007/08/17 00:22

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