ケーディー・カプラー解放の奥の手
先日届いたModel Railroader誌の2007年11月号には"HO Knuckle Coupler Guide"と題して、市販されているケーディー型カプラーの紹介が載っていました。日本では、ほんの20年前までケーディーは天賞堂の輸入販売で高嶺の花だったことを思えば、今日のプラスチック貨車が軒並みこれを付けていることには隔世の感があります。
このところdda40x氏のブログや当掲示板でベーカーとかX2Fを話題にしたものですから、私も興味深く読んでいた中で、ひとつ気になったのは、記事に解放器=アンカプラーuncouplerについての言及がなかったことです。ケーディーが“オートマティックな連結と解放”を謳っていてはいるものの、あちらでも解放は“5本の指で”という場合が多いからかもしれません。確かにケーディーの解放器は設置が大変です。
そこで、我々のようなお座敷運転や運転会でのお披露目でも使える解放器を紹介しょう。
リックス・スティッカーRix Stickerという名前で、作用は写真を見ていただくと一目瞭然です。手で持って、永久磁石が両側に取り付けられた「コ」の字形の先を連結面間に差し入れて連結器を挟むと、連結器の解放ピンが両側に開くので、そこで貨車を引っ張れば解放できるという仕組みです。
これ非常に安価ですから、広い操車場ならあちこちに何本も用意しておいても懐が痛みません。Walthersから購入できます。NやOでも使えると思います。製品はキットの型式になっていて、握り部分(スチロール樹脂だと思います)と磁石とはユーザーが合成ゴム系かエポキシ系の接着剤で固定するようになっています。私は両面テープを使いました。磁石はもちろん、引き合う面同士を向かい合わせにします。
驚くことに、このリックス・スティッカーは我が国のとれいん誌1988年1月号p111で既に紹介されています。また、2000年頃のウォルサーズ・カタログには右に示す"Undee"という、Kadeeをもじった名前の製品も出ていました。
さて実際に操作してみると、両側の解放ピンが同じ側の磁石に吸い寄せられることもママあって、ガチャガチャさせなければ離れないことがありますから、車両自体に手を触れないで解放しようとすると、コントローラーを一緒に持って操作する必要があります。すなわち現在、コントローラーはコード付きがほとんどですが、将来、無線式=コードレスが普及したときに一般的になってくる道具という気もします。
DCCの導入により本当のキャブ・コントロールが実現して、一人の人間に一つ列車の運転が割り振られたように、連結手の役割も一人が分担するような、実物の鉄道の姿をシミュレートする方向もあるのかな、とも思います。カプラーは本来、リモート・コントロール=遠隔操作が求められているのではなくて、単にオペレータブル=操作可能という機能が必要なだけという見方も出来るはずです。
そうであるならば、下方に垂れ下がった解放ピンは目障りです。当然、別な方法はないかと頭をひねり、寺久保敦己氏がブログで取り上げられたサージェント・カプラーのようなアイデアも出てきます。
この構造は確か、キーの部分に鋼球が入っていて、永久磁石のワンド(wand:魔法使いや手品師のステッキ)を近づけると、この鋼球が引っ張り上げられてナックルが外れ、連結器は解放されるというものです。ナックルをバネで押し開く構造だったと思いますが、カプラー自体のセンタリングを含めて、操作者がやらなければならなかったかもしれません。それでも、実物に倣っている形だといえばその通りで、実物の世界には地上式解放器も、DU機構もないのですから……。
■森井義博さんのブログに、サージェント・カプラーを実際に買われたリポートが登場しました。それを見ると、ナックルの押し開きバネはなく、鋼球の保持機能もありません。操作にはだいぶコツが要るようです。
■浜松のアールクラフト、井指店主よりのお便りです。
Rix の開放バ-は効果があります。ヤ-ドにおいて手で車輌を持ち上げてカプラ-を放し、再度ボギ-台車をレ-ル上にうまく載せるのは至難の技です。弊店でもだいぶ前から取り扱っておりますが宣伝をしていないためでしょうか、中々‥‥
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