« ケーディー・カプラー解放の奥の手 | トップページ | モデルの十年後、百年後 »

2007/10/30

リモネンで組んだTDLナロー蒸機

A plastic model of the TDL steam locomotive, assembled with glue d-limonene

【リモネン系接着剤の優れた特性については接着変形の研究をご覧ください。実験の状況を5回にわたって詳しく報告しています】

 先日模型店でリモネン系接着剤というものを知って、種々調べてみましたら、どうもアメリカでは数年前から"non toxic"として普及していたシロモノの様です。日本で接着剤に困るようなことはないし、有機溶剤ですから航空便で引っ掛かっても嫌だし、元来はわざわざ輸入するはずはないものです。

 試しに買ったら、確かに柑橘類の臭いがします。これなら家族からクレームも少なくなることでしょう。それで早速、プラスチック・キットを1台組んでみました。東京ディズニーランドが1983年に開業した折りにアトラクションの一つとして導入した協三工業製の2-4-0蒸気機関車を、1/45で再現したモデルです。トミーの発売で、同社は同時に1/80、9mmゲージでも客車とセットで発売しましたから、ファンの間では結構有名です。全くのディスプレーモデルとはいうものの1/45ですから、近年盛んになってきたOn30のハシリといえないことはありません。
Adscf5865

 さて、リモネン系の使用方法は今までの“流し込み”タイプと基本的には全く一緒です。液体的にも、従来品と同じようにサラサラです。ただし、使用感の最も大きな差は“食い付き”が遅いことで、接着剤を流してからのパーツ保持時間を長めにする必要があります。プラスチックが溶け出すのが少し遅いのです。従前タイプでは、付かないと、すかさず継ぎ足しの溶剤を流し込んでいましたけれど、リモネンで同じことをすると、リモネンが溢れてはみ出してしまうことになります。これ、表面のディテールがこみ入っていて、サンド・ペーパーで修正し難いモールドでは致命的です。指紋を付着させてしまうことにもなります。

 化学の素養がないので巧く表現できないのですが、表面張力が弱いというか、リモネンが隙間に上手に留まってくれずに、流れ出してしまい易いような気もします。ただし、このツヤが変わってしまった部分も、塗装したら、今回は判らなくなってはいます。

 また、従前タイプでは許容できた接着面の僅かなバリを溶かし切れずに、パーツが密着してくれないなどということもあります。シリンダー上面への弁室の接着の箇所などです。ことによると、プラスチックの金型設計で接着を想定した面の抜き勾配は今までよりも少なくする必要が出てくるかもしれません。

 本質的にはこの辺り、体感的な馴れの問題が大きいだろうとは思います。
 もちろん、リモネンの穏やかに進む溶解性と揮発性を利用すれば、従来タイプでは無理だった方法が可能となる面もあります。例えば、予め接着剤を両面に塗っての貼り合わせは、従来は直ぐに溶剤が蒸発してしまいましたが、リモネンでは付きます。ドームなどの回転体を2分割パーツから合わせる場合も時間的余裕が十分にあるので、大変に助かります。塗ってからしばらく待って合わせた方が、母材が溶け出していますから付着し易くもなります。
 というわけで、製品は“流し込み”タイプを謳っているけれど、逆にこちらの“塗ってから貼り合わせる”方法の方がリモネンは使い易いと断言していいと思います。

  一方、本来の接着力の方は、十分に強力です。従来タイプよりも強固です。今まででしたら、失敗したからと固着後に無理に剥がしてモールドの境界で別れてくれたものが、リモネンではそうはいきません。金属の溶接のように、食付けたところの方が母材よりも強くなっています。
 固着までの時間も長めです。継ぎ目にサンド・ペーパーを掛けるのは最低でも2日間は要るのではないでしょうか。1日では動いてしまう場合がありました。

 後に残る課題は経年変化です。接着力は大丈夫でしょうが、変形とか歪み(ひずみ)が心配です。揮発力が弱いので、リモネンが内部に残ってしまう、なんてことはないのでしょうか。
 このキットのようなインジェクション・モールドの製品はよいとしても、我々の問題は、鉄道車両に多い平板を重ねる構成でどうなるか、です。従来品の経験では数ヶ月後に出る場合もあったので、大いに気になります。リモネンに期待したいのなら早めに実験を開始する必要があります。

Adscf5926
 ところで、TDLナロー蒸機の仕上げは当然、我が社標準のイミテーション・ブラス=偽真鍮、ゴールド吹き付けとしました。ゴールドとシルバーのメッキ・パーツは塗装後にそのまま取り付け、車輪のタイヤはエナメル系シルバーを筆塗りです。
 なお、メッキ・パーツの取付には、エポキシ系接着剤を用いています。5分間タイプを買いに模型店に行ったら、なんと「2分」というものを売っていました。「瞬間エポキシ接着剤、超急速2分硬化タイプ」というウェーブ製です。使ってみると結構、便利です。この辺り、何か今浦島になった様な気分がしています。

 ただ、やはり動輪が回転しないのは面白くありません。ウィキペデア日本語版に拠れば、今年になってタカラトミーが再びオフィシャル・スポンサー契約を結んだそうですから、1/80共々再発売が待たれます。このところを是非、改良してほしいものです。……って?

【追記】d-リモネンとMEK系という流し込みタイプの接着剤による変形について、やっと調べ始めました。以後、ご注目ください。ネット上の情報を調べた掲示板での報告もあります。2009-02-05

【追記2】このモデルの詳細はOゲージの玉手箱をご覧ください。
See also my O scale collection Tokyo Disneyland Western River Railroad No.28 Missouri, by Tomy in 1983 (1:45 16.5mm gauge), finished by the Author in 2007

Tdl_color

【追記3】リモネン系はタミヤでもラインナップされ、流し込みタイプが2011年9月、塗り付けタイプが2009年10月の発売でした。後者では、「プラバン、プラ材を強力に接着。リモネン接着剤にありがちな初期接着力の弱さもありません」と謳われています。なお、その概略的な性質はアメリカ型鉄道模型大辞典にまとめています。2012-09-28

|

« ケーディー・カプラー解放の奥の手 | トップページ | モデルの十年後、百年後 »

Oゲージ三昧」カテゴリの記事

ちょっとしたヒント」カテゴリの記事

ナローも大好き」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/134375/16878335

この記事へのトラックバック一覧です: リモネンで組んだTDLナロー蒸機:

« ケーディー・カプラー解放の奥の手 | トップページ | モデルの十年後、百年後 »