アトラス旧Oゲージの全貌
Whole story of old Atlas O gauge models deployed in 1970s
ここのところ、オアカーといいボックスカーといい、1970年代という、いにしえのOゲージばかりで辟易されている方もおられるでしょうが、もう少しお付き合いください。
今回は、これらのアトラス製品が具体的にいつ発売されたのかという命題です。
私が保有している2冊のウォルサーズO&Sカタログで確認すると、1991年update版にはアンデコの貨車と線路関係が掲載されているものの、それよりも前の1983年版には不思議なことに線路関係だけなのです。
Oゲージの直流ハイレール2線式は、1970年代初めにAHM/リバロッシと共に、このアトラスがオーストリアのロコRoco社から供給を受けて参入という認識ですから、この断絶が疑問でした。
そこで今回、MR誌のバックナンバーを繰り、一部判ってきたことがありますので、紹介しておきましょう。
まずアトラス社自体の広告は、70年代には毎号、裏表紙裏の1頁を使った2色のものを使っている中で、話題のOゲージは1972年1月号から翌73年3月号までだけ、それも6回しか掲載されていません。それ以外はNとHOです。これだけ限られた期間だったとは驚きです。
内容は、1972年1月号と2月号が全体システム、7月号が車輪、連結器、ポイントとフレキシブル・レール、8月号オアカー、9月号2軸ボバーカブース、10月号がプリムス3軸スイッチャー、1973年3月号が最期でF9Aの動力性能が如何に優秀かを訴えるスタイルです。同じ月のRMC誌も同じです。
MR誌スタッフの執筆による新製品紹介を見ていくと1972年の2月号にW-Vカブース、4月号に交換用スケール車輪、5月号に40フィートボックスカー2種、7月号にF9Aとオートマチック・カプラー、10月号がオアカー、11月号がポイントなどの線路関係となっています。
ここでは広告の幾ばくかをご覧に入れます。綴じ孔が空いているのはお許しください。クリックすると拡大します。
製品のラインナップは、機関車がプリムスの3軸機とEMDのF9Aの2種類です。貨車は、ボックスカー2種、ストックカー、ゴンドラ、オアカー、W-Vカブース、2軸ボバー・カブースの都合7種類となっています。線路は、セクションレールが半径24インチ(R610)の曲線と12インチ、4インチ長の直線、ポイントは分岐側R600の左右が手動と電動、さらに3フィート長のフレキシブルレールという具合。またスケール化にはオプションでオートカプラーと車輪を用意して、トータル・システムの趣があるものとなっています。
この中で注目は、貨車が全て塗装済で、アンデコのバリエーションが無いことです。ところが、次にご覧に入れるウォルサーズ1991年版はアンデコばかりです。
さらに実際の模型店ではどうだったかと、Standerd Hobby Supply店広告のリストを見ていくと、1981年6月号から1984年8月号までは線路だけで、1984年9月号以降にアンデコの貨車が登場します。この辺りは、2冊のウォルサーズ・カタログの内容と軌を一にしています。
ということは、次に示す内の右が1972年当時のオリジナル製品で、左の白無地で品番だけのシールを貼ったものは1984年以降の再発売ということなのでしょうか。この白無地商品でアトラスの名前は、車体台枠のモールドだけに表れます。記憶だけですが、中にはベブベルBev-Belという、アサーン貨車などに独自の塗装を施して販売するメーカーの名前をかたった箱もありました。
というわけで私の推察です。
1972年での直流ハイレール2線式の参入は、交流3線式ライオネルの牙城を切り崩すことが出来ず、またスケール物もモデラー数自体が退潮気味でハカバカしくなかったので、直ちに1年で見切りを付けた。しかし、模型店の店頭から消える頃に、数は少ないけれどモデラーから渇望の声が聞こえてきて、誰かがアトラスと掛け合った。アトラスとしては、店頭に線路関係の不良在庫が残っていたので、模型店の突き上げもあり、Rocoでの生産を承諾した。それが1990年代まで売られていた‥‥、
といった塩梅ですね。
当方のOゲージの玉手箱にこれら各種モデルを収蔵していますので、ご覧ください。中でもW-Vカブースにはリキを入れてCotton Belt(SSW)仕様にキットバッシュしています。
【追記1】アトラスのスケール・カプラーをご覧に入れます。
解放ピンなど、外見はケーディーとよく似ていますが、構造はだいぶ違います。先ず、ポケットは箱を皿ビス2本で取り付け、本体とバネを組み込んでからフタを被せるもので、全体としてケーディーより大振りです。そして、このバネがスチールで、リン青銅と思われるケーディーよりも硬く、復元力が大変に強い構造です。私は、ケーディーのそれに代えました。
また、ナックルを閉じるバネがありませんが、自然と閉まり気味になるのは、なにか仕掛けがあるのかも知れません。
【追記2】dda40x氏のコメントを拝見してハタと思い当たりました。中古で購入した中に、変な車輪を履いたものがあったのです。早速分解したのが次の写真です。オリジナルのハイフランジ車輪と同じように2mm径のシャフトを通して、その上にプラスチックのテーパー車軸を被せ、さらに金属の車輪を嵌めるという構造です。転がすとこの車輪だけゴロゴロとウルサいのは、この材質がたぶんダイキャストなのだと思います。この黒い塗装が、製品として施されていたという可能性もあります。
また、これで長期間にわたってバックゲージを維持できるのかという心配があります。
【追記3】このアトラス製台車を、転がりの良いアサーン製に取り替える方法がdda40x氏のブログに解説されています。黄銅製の引き物を特注されたとのことで、みんな悩んでいるわけですから、この構造ならアメリカでヒクテアマタになったのは当然です。
私があちらから入手した中古では、大きすぎる孔を埋める材料とセンターピンの構成に、木片と木ネジ、プラスチック片と六角穴付きボルトという例がありました。
【追記4】Tony Cook氏のサイトにコレクションが登場しました。2013-06-14
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コメント
ウーム、当たらずとも遠からずという感じですね。
70年代はOゲージには不遇の時代でした。しかし「直流ハイレール」を目指していたとも思えないのです。
3線式ハイレール層にも買わせて、型代を回収する目的でハイレールの車輪、カプラをつけていました。しかしちゃんとRP25車輪セットとスケールカプラが別売されていました。この車輪が曲者で怪しい挽き物ですぐに駄目になります。
誰かがアトラスと掛け合ったというのは真実です。4人くらいいます。型はよく出来ているので
現在でも通用する範囲にあります。いろいろな塗りが出ていますね。
投稿: dda40x | 2007/11/23 09:56
TK氏の思い付きですけれど、リバロッシRivarossiもロコRocoも、ヨーロッパ型のOゲージをそのままアメリカへ持ち込んだのではないのか……という説はどうでしょうか。もし線路がヨーロッパ規格ならば、これだけ長く売られていたことの説明が付きます。確か、変なものが納戸に…… (^_^;)
投稿: ワークスK | 2007/11/24 20:47
確かにヨーロッパのトイライクな製品には多少近いものを感じますね。リバロッシの急曲線を通る製品はなかなかよくできています。しかし。アトラスのレールはアメリカのプラクティスに準拠しています。明らかにアメリカの市場を目的にしているように思えるのです。ポイントは確か#4でフログのところがかなり玩具的な仕上がりでした。トングレールが軽く動くようになっていて、HO用のポイントマシンで動かせました。
ROCOは後に#7を出しましたが、それはどちらかというとヨーロッパ的な製品でした。PECOの細いレールがアメリカでは評判がよくないので、それなりに売れていましたね。
投稿: dda40x | 2007/11/25 09:21
はじめまして、いつも楽しく拝見させてもらってますが、仕事やめ親の介護しながら老眼に成った頃かいためた米型中古Oゲージいくつか持ってるのですがアトラスの貨車が中古出てこなく、HO米型レイアウト作ってる途中です。昨日熊田中古Oゲージアトラス F-2/F-3 Ph.1 A(Pwd)+Bが走行不良でDCCつき1万というから悪い癖が出て購入してしまったですが届いたらお知らせします。
>>コメントありがとうございました。F-3は1997年以降の製品ですから動力性能もディテールも1970年代のものとは桁違いですね。羨ましい限りです【ワークスK】
投稿: 川名俊行 | 2016/04/02 02:53