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2007/11/10

オートキャリアーにはシェルフ・カプラー?

The Kadee's shelf coupler is suitable for auto carriers?

 89フィートというのですから27m、アメリカ型の魅力の一つが巨大な貨車です。
 この趣味に足を踏み入れた10数年前に、ウォルサーズ製自動車運搬貨車10両ほどを入手しました。この内、BNは1両だけで、あとは別の色だったので、早速グリーンに塗り替えました。といっても、車体裾のフラットカー部分はTTXのイエローのまま、またパネルと屋根のシルバーは共通ですから、それほど面倒な作業ではありません。

 もちろん、東京昭島のエンドウ・ショールームで開催された所属クラブの運転会へ持ち込んで走らせました。目論見では当然、燦然と輝いて颯爽と編成美を誇ってくれるはずでした。ところが、エンドレスを一周する間に次々と連結器が外れてしまうのです。モデルは当然ケーディーに取り替えて、高さも合わせてあったにも関わらずです。

 ゆっくりと走らせて調べてみると、平坦だという線路自体に凸凹があります。さらに、カプラー自体も引っ張られて上下に逃げ、食い違いが起こって外れてしまうことが判りました。車体が長い上に、この貨車、オーバーハングが大きいので、カプラー先端が上下に大きく振れるのです。

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 さらに、そこにいた伊藤良一氏からは衝撃的な話を伺いました。
 立体交差とアップダウンのある電車編成用のエンドレスはもっと悲惨で、ケーディーは完全に用をなさないから、オートキャリアーに限ってNMRA型を取り付けているとのことでした。
 この辺りをユニトラック線路を使って写真に撮りましたのでご覧ください。平坦部から上り勾配に差し掛かる箇所と、上り勾配が終わって平坦になる箇所です。勾配は3%程度で、本来なら緩和勾配を付けて滑らかに変化させなければならないところです。

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 写真を見ていただくと、ナックルが食い違っていることがお判りいただけると思います。ここでは外れるほどでは無いものの、ケーディーはポケットの中で上下に遊びがありますから、牽引力が掛かったりすると外れてしまいます。また、通過中は両ナックルが上下にダイナミックに動きます。これは次のYouTubeでご覧ください。貨車は手で押しています。

Img_9291b じゃあ、どうするか。直ぐに連想したのはナックルの上下延伸です。

 実はこれ、1979年頃に職場で経験していました。
 電車の台車更新に当たって、床面高さを80mm下げることになったのです。当然、カプラー高さも下がります。それに対して、先頭に付く連結器は、入換や非常時に従来の車両と連結する必要があります。

 阪急京都線の車両が神宝線との関係でナックルだけ下方へ延ばしているのを知っていましたので、そのアイデアをいただいて、逆にナックルを上方へ80mm延伸することとしました。

Aimg_5985 メーカーに特製ナックルを注文しようかとも思案しつつも、溶鍛職場主任の藤川宏氏に相談すると、「入換車でやった。厚板から溶断機で切り出して溶接しよう」と言うので頼むこととしました。

 今では大津線に古い車がいなくなって、延長が無意味になってしまいましたが、この連結器を見るたびに同主任を思い出します。モデラーはこの辺りもちゃんと再現してくれているのでしょうか。【710号の写真は2010年5月24日、坂本駅での撮影です。クリックして拡大していただくと、継ぎ目が‥‥。「京阪電車模型用図面の事始め」もご覧ください】
 
 閑話休題。
 要は、ダイキャスト製のケーディー#5ナックルの内側に0.4mm径のリン青銅線をエポキシ接着剤で貼り付けたのです。最初は長めにしておいて、固まってから、上下に1.5mm、はみ出る形でニッパーで切りました。

 試してみると、巧く行きます。完全にナックルが食い違う様な走行でも、カプラーは外れずに走ってくれます。本来の連結解放にも全く影響がありません。

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 嬉しくなり、しばらくして誘われた日本型ファンの運転会に持参しました。毛色の変わったものを見せて度肝を抜こうという魂胆です。モジュール式のレイアウトは全線平坦で最小半径が600mm、建築限界的にもこれを走らせて問題はない形に仕上げられていましたから、ホッとしました。

 しかし、SD45の牽引するオートキャリアー編成は、ある地点で必ず立ち往生してしまうのです。その箇所は、線路が僅かに沈み込んでいることに加えて、少し離れて枕木の上に永久磁石式アンカプラーが設置されていました。それにカプラーの解放ピンが引っ掛かるのです。日本の20m車では全く問題がありません。この89フィートという飛び切り長い車体とオーバーハングが問題なのでした。

 ここで浮かんだ思い付きは、それなら上下の動きを抑えようという発想です。実物の密着自動連結器の考え方で、連結された2本が一体となり上下にずれない様にしようということです。これに対し柴田式自動連結器は、基本的に上下はフリーで、ケーディーと全く同じです。
 具体的には、線材を用いて相手のナックル部分を押さえ込こもうというものです。ケーディー本体に孔を開け、0.3mmのリン青銅線を巻き付ける形で、前方にヒゲの様に線先を張り出そうというアイデアです。ただ上下両方共は無理だったので、下だけ出すこととしました。レール面辺りの物を引っ掛けないためには下がり過ぎないことが必要です。接着剤はエポキシで、できたものが次の写真です。

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 ただし、これ、相手を100%、上手く、すくい上げてくれるワケではなくて、外れることも多く、試作は1つだけに終わりました。これが2000年頃です。
 
 さて、2004年になってケーディー社から"シェルフ・カプラーshelf coupler"#118というものが発売され、当方の旧掲示板で話題になりました。ログの発言番号1610辺りからです。

 当然私は、このシェルフ=棚で上下の食い違いが規制できるのではないかと、注目しました。しかし、いつまで経ってもそんな声はどこからも聞こえてこず、また雑誌などでも取り上げられることは無くて、「そういう機能は無いのか」と忘れていたのです。MR誌本年11月号の「HO Knuckle coupler guide」でもそれに言及していませんが、#118や#119の写真を見ると、下部のシェルフが長くて、相手のカプラーが引っ掛かりそうです。
 そこで"Whisker"=猫ヒゲにも興味があったので#119を注文してみました。

 取り替えたのが次の写真です。連結させてみたところ、思惑通りシェルフが引っ掛かってくれます。これはイケます。

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 早速全数を取り替えるべく手配したいと思います。そして、どこかのレイアウトで走らせてみなければいけません。これが成功したら、86フィートのボックスカーや、ピギーバック・フラットカーも一緒です。
 一方、連結を切るときに片方の車両を手で持ち上げるという方法は、シェルフが引っ掛かりますから難しくなりました。先日お伝えしたリックス・スティッカーが必携となりますね。

【追記】シェルフ・カプラーについては、アメリカ型鉄道模型大辞典もご覧ください。2009-10-31

【追記2】阪急京都線と京阪大津線におけるナックル延長例の写真を、本文中に追加しました。
 また、本記事と同様の趣旨が、とれいん誌2004年10月号p42の製品紹介(ケーディー#118)に記されていました。2011-09-02

【追記3】当然ですが、あっちの連中も悩んでいます。>>MR Forum "Deep Coupler Knuckes" 2018-01-06

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コメント

ワークスKさま、こんにちは。
毎号、模型の蘊蓄を楽しく拝見させて頂きながらも、すっかりご無沙汰してしまいました。筆不精をご容赦ください。

本号で紹介されていた、ケイディー#118の件ですが、当鉄道では製品の発売直後からオートラックやTOFC等に使用し、長尺車体の列車分離を解消しておりますので、お勧めです。
編成の分割は、右手に持った車輌を手前に、左手の車輌を奥に傾ければ、ナックルとボトムシェルフの干渉が抜けるポイントがあるので、(コツは要るし、脱線しますが)道具を使わないでも可能です。

#118を観察すると、トップシェルフは推進状態でのみナックルと咬み合う様にアレンジされており、外観は”AAR Type SF”であっても、機能的にはボトムシェルフのみの”Type F”に近づけ、「編成を捩れば分割できる」モデラー向けの仕掛けを付加したのではないか、と推定しております。

それにしても、デカイ連結器です。
オーバースケールかと思い、図面と比べてみたところ、実物は全高24 1/4’(616mm)、全幅22 19/32’(574mm)であり、模型では幅が0.5mm広いだけで、ほぼスケールの寸法に収まっていました。もっとも、ケイディーのナックルは実物より大きいため、見た目の印象は異なりますが。

話は変わって、ナックルを上に足した電車、溶接で付け足したとは思えないキレイな仕上がりでしたね。全く気が付きませんでした。
件の電車、模型で作り掛けです。連結器胴受けで暗礁に乗り上げていたのですが、ナックルまで追及されると、陽の目を見るのは更に遠ざかりそうです。

投稿: D&GWP | 2007/11/11 15:45

こちらこそご無沙汰しております。シェルフ・カプラーは経験者がおられたということで意を強くしました。#119より#118の方がガラが大きいだけ、やはり機能的には安全ですね。当方もそちらを手配しようと思います。

ナックルを足した電車の方は、当方、GMの1/150キットを組み立てた折、0.5mmのプラ角線をちょんと接着したら、サマになってしまいました。

投稿: ワークスK | 2007/11/12 00:54

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