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2008/01/19

ヨーロッパのシャルフェンベルク密着連結器

European tightlock coupler, Scharfenberg type

 前回の連結器についての話の中で、ウィキペディアに「シャルフェンベルク式連結器」が挙げられていた旨を書きました。この連結器、よく見ると私が2000年8月にイタリアで撮影してきたものによく似ています。連結器の両側は電気連結栓でしょう。1枚目がベネチェア・サンタルチア駅で、2枚目はその拡大です。3枚目はフィレンツェSMN駅で、こちらはカバーが掛かっています。

It14vv06a

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 この連結器、当然、英語版ドイツ語版(下の図が掲載されています)にも載っています。私には国鉄が採用した柴田式密着連結器と比べてどうなのかという好奇心があるのですが、残念ながら読み解く言語力も基礎知識もありません。

 一方、所有している日本語の書物にも解説があるものの、これでも理解できません。1950年発行、小坂狷二著「客貨車工学(下巻)」のp622です。

Tightc

 ドイツ国有鉄道はScharfenberg(シャルフェンベルヒ)会社のものを用いている。‥‥連結に当たっては図[A]に見るごとくリンク1の先は相手方の円板に支(つか)えるため、円板2は図に矢印で示すごとくに回転せしめられ、リンクは相手方の円板の切り込みaにはまり込む。しかるときに円板は、戻しバネ3によって図[B]の位置に引き戻され連結が完了する。
 解放の場合には図[C]に破線で示した取手4を回し、円板2を解放位置に回転せしめる。新式のものは上部の取手4の代わりに図[C]5に示すごとく側面に解放テコを出し、車側からこのテコを操作して解放を行うようになっている。図[C]の6は制動空気管の連結口。

 要は、どうやって引張力が伝わるのか、摩耗を如何に補償するか、です。どこでリンク1が引っ掛かるのか、戻しバネ3が密着力の源泉になるはずはないのですけれど‥‥。どなたか解りますか。

 ところで、「Scharfenberg」の発音は、ウィキペディア日本語版には「シャルフェンベル」、客貨車工学では「シャルフェンベル」で異なっています。後者の著者小坂狷二氏はエスペラント語の大家でもありますから、私としてはこっちを信じたいですね。

【追記】このカプラーについて、ドイツ・Voith Turbo社のサイトと、Wikipedia独語版に解説を発見しました。1903年に最初の特許がKarl Scharfenbergによって取得されているようです。【"Voith Turbo"は「フォイト・ターボ」と読む】

 また発音についてはウィキペディア日本語版「ハンブルクHamburg」の項に、「『ハンブルグ』と慣例的に表記されることもあるが、ドイツ語では語尾の"g"は濁らないため、正確な発音は『ハンブルク』である。現地では低ザクセン語による『ハンブルヒ』『ハンブルフ』の発音も聞かれる」とありますので、「ク」でも「ヒ」でも正解のようです。英語では「シャーフェンバーグ」あたりでしょうから、大辞典の見出し語はこれを採用しておきます。2009-03-09 【その後「シャルフェンベルク」へ変更】

【追記2】なんと、この連結器を大阪で見た!という、澤田節夫氏からお寄せいただいた話も引き続きご覧ください。表記は、現在一般的に使われている「シャルフェンベルク」に変更しました。2009-09-01

【追記3】シャルフェンベルク連結器のもろもろ」という記事を上掲しました。一応、解決編のつもりですが‥‥。2012-08-20

 

Italian Iraly erman Germany tightlock coupler シャルフェンベルグ シャーフェンベルク

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コメント

はじめまして.興味深く拝見しました.私は全く素人なんですが、この連結器の動きはわかる気がします.
1.引っ張り力の伝達:連結状態でリンクは平行四辺形ですから、外れるためには長方形を経由しないと駄目です.で、平行四辺形が長方形になる為には、幅(この図だと縦方向)が広がらないといけません.でも、連結器のハウジングで幅は規定されているので広がれず、リンクは解けません.リンク+ハウジングによる幅規制で引っ張り力が伝わるだろうと思います.
2.リリースの仕方:その視点で264の最後の図を見ると、「絶対リリース出来ない」ように見えます.全くの推測ですが、リンクが撓むのでしょう.引っ張られている時はリンクは撓めないのでリリースされませんが、引っ張り力の無い状態で円盤を回すとリンクが撓んで上死点を越えるのだろう..と考えています.
如何でしょう?

>>Yoさん、コメントありがとうございます。もう少し情報を探してみようと思います。これからもよろしくお願いします。【ワークスK】

投稿: Yo | 2008/05/05 22:52

はじめまして、新幹線の連結器がどんなものか調べているうちに、ここに来てしまいました。
この連結器の力の流れを考えました。(2008年のことなので、もう解決済みかと思いますが。)
連結器を引っ張る力をFとします。(図の左側の連結器では左方向にFの力がかかります。Fはケースから2の円盤の心棒、心棒から円盤に、円盤からF/2が1に、F/2がaに引っかかった1(右側の連結器の)に伝わります。この両方のF/2は、円盤を、時計回りと反時計回りに回すことで相殺されて、円盤は回転しません。(微妙なバランスですが)ここで、3のスプリング(小さな力ですが)が反時計回りに力を加えておりますので、円盤は時計方向には回転できません。{反時計回りF/2+バネ>時計回りF/2}
はずすときは、円盤の心棒にバネよりも大きな時計回りの力を加えればよいわけです。

>>疑問は、初期の廻り子式密着連結器のような増締作用をどうやって与えているのか、という点だったのですけれど、これ自体には“無い”ことが判明しています。なお、このブログでは他所があまり取り上げない話題を多く提供しています。他の記事も是非ご覧になってください【ワークスK】

投稿: 彩の国 | 2015/02/08 23:12

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