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2008/06/16

カントとカーブポイント

Cant (super elevation) and curved turnouts (switch) on railroad tracks

 枚方市駅の地上時代についてヤマさんからコメントをいただいて、自分で作ったアルバムをシゲシゲと眺めましたら、話題とした三条方を写した写真が何枚かありました。

 右は折しも2400系2次車の淀屋橋行き急行7連が進入するところです。先頭車が少し左に傾いているところを見てください。3000系特急の真正面の写真だともう少しハッキリ判ります。ということは、この片分岐がカーブポイントか! ということになりますが、2枚の写真を孔の開くほど眺めても直線としか見えません。

 正解は、もちろん直線です。しかもカントが付いているのです。【画像はクリックで拡大します】

 申し訳ないのですが、話は長くなります。
 先ず、Wikipedia日本語版のカントの項目を見てください。JRの場合、新幹線が180mmで、在来線は105mmとあります。当然、軌間の幅が違うのですからカントも標準軌の方が狭軌よりも大きいはずです。ではその傾きが同じかといえば、標準軌が180/1465=0.1254=傾き7.2°、狭軌は105/1067=0.0984=傾き5.6°、ということで大きく異なります。標準軌のこの電鉄でも最大180160mmです。
 理由は種々ありますが、要はバランス・カントか、アンダー・カントかという差です。新幹線や標準軌民鉄の場合は、低速度の貨物列車を運転しませんから最高速列車が左右加速度を生じない前者です。在来線は、速度の違う列車が混在するので、高速列車ではカントが不足する後者ということです。ただし、狭軌私鉄で貨物列車を運転しない場合はどうしているのか、好奇心に駆られます。

 で、明治時代に敷設されたこの電鉄で、昭和の御世に高速化が計画されました。カーブ式会社のあだ名の通り曲線ばかりの線形ですから、ここの速度を上げなければ所期の目的を達しえません。振り子式は夢の時代で、カントを大きくすることになります。その工事を確か「カント昂上(こうじょう)」と呼んだと思います。
 カントは、直線と曲線の間に存在する緩和曲線で徐々に変化させていますから、このままでは変化率を大きくせざるをえません。しかし、これはレールを捻ることですから、車両側のバネの伸び縮みが追い付かなくなって脱線の恐れが出てきます。

 カント低減率という名前のはずですが、その限度値は忘れました。カントは上げたい。カント低減率は同じでいきたい。では、どうするか。すなわち、カントを緩和曲線の先の直線部分から付け始めることにしたのです。
 この話を耳にしたときに私は「バカな!」と思いました。でも実際、意識して乗っていても、これ、気が付かないのです。

 以上の話はビジュアル的に少々物足りないと思いますので、ご期待に応え、名物のカーブポイントを幾ばくかご覧に入れましょう。撮影はこの2月、Canon PowerShot G9の試し打ちです。
Aimg_0091
 まず最初は丹波橋駅の三条方です。実は、私の記憶で一番怖い外方分岐は中書島駅の下りなのですが、見に行くと、カントがほとんど付いていなくて拍子抜けでした。多分、全ての特急が停車する様になって直してしまったのだと思います。それで丹波橋も心配しましたが、こちらは残っています。

Aimg_0119
 次は八幡市駅の三条方です。この眺めだとそれほどとは思いませんが、運転台からだとカントの頂上を乗り越えて奈落の底に落ちていく様な恐怖を感じます。制限速度15km/hを破る勇気ある者はいるはずがありません。よくもまあこんな線路をエコノミカルなどという1自由度系の台車で走り回っているものです。特に酷かったのは地上仮線時代の大和田駅下りでしょうか。記憶では、直ぐに左にガクッと傾いたと思っていましたが、この写真をみるとそれは無い様です。
 踏切の道路面で注目していただきたいのは、2つの凸です。急いで通過した外車が腹を打った音を聞いたことがあります。【早速、ここを通る車の様子を動画に撮ってきました。「カント付踏切には御用心」をご覧ください】

Aimg_0085

Aimg_0080 最後は京橋駅の三条方、JR環状線を跨ぐところです。これ、B線(緩行線)とA線(急行線)のシーサス(両渡り線)ですが、なんとこれ全体がカーブしています。その証なのでしょうか、三角形のフログ体?は左右で大きさが違います。カントは無しです。
 トングレールは両方とも直進用に板状のガードが付いていますが、これは分岐用のトングレールの摩耗を防止しているのだと思います。

 無論、これらカーブポイントは何も好きこのんで採用しているわけではなくて、スペース不足を乗り越えるための苦肉の策です。同じようにモデルの世界でもオーダーメイドの特殊分岐ができるなら、実物以上に線形の自由度が大きく広がるはずで、dda40x氏も採用されているプリント基板を枕木に使う自作手法が突破口となると思っています。それで私は以前よりファースト・トラックスというメーカーに注目しているのですが‥‥。

 ところで、一番上の写真で4番線の先にあるY分岐も特注のようです。
 また、天野川鉄橋までの間にある渡り線が急行電車に隠れていますが、これが折返しに使われた話を前回の記事に追記の形で披露しています。

Aimg_4443【追記1】近鉄京都線の京都駅出口に全体がカーブしたシーサスがあり、「カブリツキ鉄橋巡り-近鉄京都線」でお伝えしています。2009-04-14

【追記2】京橋駅三条方のシーサスがヤマさんの高急モデルノート2に登場しました。2013-04-18

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コメント

こんにちは。私のコメントからカントとカーブポイントの話に発展してしまいましたね。
ワークスKさんの記事にある中書島駅の下り線外方分岐ですが、昔に撮影した写真を探してきました。ここには貼れないので、自分のブログに掲載しました。

カント昂上のことですが、京阪電車に乗っていると明らかに感じるのは、「傾いてからカーブに入る」ということです。これが直線部からカントを付けてある証拠ですね。このため、高速で曲線に突っ込む割には、車内で左右加速度を感じないでフワーと通過していく感じがします。阪急京都線の線路では曲線に入りながら傾いていく感じがわかります。JRは狭軌でRも大きいので比較にならないですが、新快速が外側線の駅付近Sカーブを通過するときは110Km/h制限でもかなりの左右加速度を感じます。

投稿: ヤマ | 2008/06/17 09:05

そうですね。同じ線区ばっかり乗っていたら判りませんよね。やはり我々は常に先頭に陣取って、つぶさに観察しないと「違いの判る男」にはなれないということで……

投稿: ワークスK | 2008/06/17 22:57

たまたま京橋から特急のカブリツキ席に座れたので、前方を見ると例のポイントが・・・。
これは撮らねば・・とすぐにカメラを出して撮影にかかりました。
ところでこのシーサスに関して、「カントは無しです。」と書かれていますが、A線京都方のトングレール付近には右カーブへ向かってわずかなカントがついているように見えます。いかがでしょうか。

>>うぅぅむ。確かに。元保線屋に尋ねたら、そう答えが返ってきた記憶があるのですけれど、それ以上のことは判りません。まあ、当時は珍しいと思っていたものの、日本中、世界中に目を向ければ、これに勝るケッタイな事例は山ほどあるんですね。
 そういえば、普通鉄道構造規則の第27条2に「緩和曲線及び縦曲線には、分岐器を設けてはならない」って書いてあるんですが‥‥。それと、レール踏面のテカリ方が変です。【ワークスK】

投稿: ヤマ | 2013/04/18 18:54

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