写真で楽しむ世界の鉄道-アメリカ 2-
「大陸横断鉄道」という言葉は、我々の世代にとって独特の響きを持っているようです。ことによるとこの趣味に走った最大の動機という方もおられるのではないでしょうか。そして昔、その長距離豪華列車への憧れを倍加させたのがこの写真集でした。
彼の地では既に航空機に敗れ瀕死の状態であった1960年前後、我が国ではやっと電車特急やブルートレインが走り始めた頃の話です。
前回の第1分冊に引き続いて、今回は第2分冊から、そんな西部とカナダの旅客列車をピックアップしてお目にかけましょう。
カラーは表紙を含めてここに示した4枚だけで他はモノクロですが、写真印刷のレベルは当時の鉄道ファン誌と同等で、鮮明な方だと思います。【写真はクリックで拡大します】
まず鉄道と代表的列車の説明で、これが目次代わりとなっています。鉄道名の略称はCMがミルウォーキー・ロード、CBがバーリントン・ルート、CRがロックアイランド、DRがリオグランデ、Wがウォバッシュ以外は、本誌読者ならお判りいただけるはずです。
まずアメリカの最北端GNのページでは、当時から日本でも知られていたエンパイアービルダーに、カラー全頁大で2葉(速水育三氏提供)を充て、モノクロに12頁を割いています。
Winds along the shore of Puget Sound in western Washington State for 32 scenic miles between Seattle and Everett
Nearing the summit of the Continental Divide, at Marias Pass, skirting the southern boundary of Glacier National Park in the Montana Rockies
見事なコマーシャル写真の中でも次は「のりもの絵本-木村定男の世界」(監修・文 関田克孝)に出てくる絵の元となった写真だと思います。同氏を紹介する公式ホームページにある作品と較べてみると、客車編成の曲がり具合が異なるものの、機関車のパースと番号(353-A:F3A)が一緒です。
なお、HOモデルでは2007年発売のウォルサーズ製品があります。
次はNPのノースコースト・リミテッドで、モンタナ州ミズーラ駅に並んで停車中の西行きと東行きです。機関車がF7Aで、客車の塗装がパイン・ツリー・スキームですから、1952年以前の姿です。これ以降はレイモンド・ローウィによるツートーン・グリーンが採用されました。
Milwaukee Roadのオリンピアン・ハイアワサについて、著者達はこのスカイトップ展望車が気に入ったようで、これだけに3頁を割いています。ただガラスは三重構造というものの夏は暑そうです。ウォルサーズ社の今年のシリーズでは、この車の登場を待っておられる方が多いことでしょう。
上の写真は窓割りからツインシティーズ・ハイアワサ編成と判断できます。スーパードームが組み込まれていませんから、1947年から52年までの間でしょう。
UPに関しては当然、たくさんの列車が登場します。ただ、不思議なことにどれも写真が小さく不鮮明です。その中から中村彰宏氏提供というシティ・オブ・ロサンザルス(COLA)をご覧に入れます。牽引機はE8の3重連です。
大出力を誇るガスタービンは5頁に渡って両運の試作50号機から、3ユニット型まで紹介されています。左は中村彰宏氏提供になる3ユニット型1号機です。
この記事の冒頭に掲げた表紙は、一条幸夫氏がオグデンで待ち構えて撮影されたものとのことで、ベランダ・タービン73号機です。
左は、オグデンでビッグボーイと並んだところで、これも1号機です。ビッグボーイ、チャレンジャー、FEFは「思い出となる蒸機の活躍」として、3頁が読者サービスされています。ただしFEFは、原文で「ナイアガラ」と記してあることからも判るとおり、当時の我が国では知られた機関車ではなかった様です。ことによると、MR誌の蒸気機関車図面集に収録されていないことが一因ではないかと思います。
次はSPで、サンフランシスコ・ポートランド間の山側ルートを走る昼行特急シャスタ・デイライトです。沿線にシャスタ山4,316mが眺められ、夜行特急にはカスケードがあるという説明です。機関車はEMDのE7Aです。
CB&Q、D&RGW、WPの3社が共同運行したカリフォルニア・ゼファーについては、残念ながら良い写真がありません。次は列車が小さすぎます。フェザーリバーキャニオンとありますから、WPのシンボルともいえるフェザーリバールートですね。この南に平行してSP-UPのドナーパス、すなわちアメリカ最初の大陸横断ルートが通っています。
カリフォルニア・ゼファーのHOモデルは一昨年だったか、ブロードウェイ・リミテッド社がパラゴン・シリーズと銘打って発売しましたから、編成で揃えられている方も多いことでしょう。
こちらはD&RGWのモファット・トンネル東側ポータルでしょうか。機関車はアルコのPA-2です。
次の地図は3鉄道の路線図で、カリフォルニア・ゼファーの経路は西から、サンフランシスコ→サクラメント→ソルトレーク→ヘルパー→グランド・ジャンクション→デンバー→リンカーン→オマハ→バーリントン→シカゴです。すなわち、例のソルジャー・サミットを通過することになります。
AT&SFは、スーパーチーフ、サンフランシスコ・チーフ、チーフ、それにエル・キャピタンについて、速水育三氏や中村彰宏氏などの写真で14頁を埋めています。
その中からここでは、1956年に投入された最新のハイレベル客車で構成するエル・キャピタンをご覧に入れましょう。アムトラック・スーパーライナーの手本となった客車です。
このHOモデルでは、例の中途半端なトレイン・ステーション・プロダクツ製品があります。スーパー・チーフの方はウォルサーズ製品ですね。
次はCPで、ブリティッシュ・コロンビア州のストーニー・クリーク橋を渡るカナディアン(速水育三氏提供)です。Wikipedia英語版カナディアン・パシフィックの項で路線図の下のところに、この鉄橋の反対側から撮影したコンテナ列車の写真があります。
【この写真についての情報は第3次掲示板へ】
以上、ざっと大陸横断列車を中心に紹介しましたが、この本の全体から見ればほんの僅かです。これだけの資料を集めるのは大変だったことだと思います。ただし、やはり残念なのは印刷の質です。当時としては十分だったのでしょうが、現在では物足りなさがあります。オリジナルの鉄道PR写真は車内を含めて全てカラーの様ですから、交友社には再び原画を集めて是が非でも作り直して欲しいですね。グレート・ノーザン ノーザン・パシフィック ユニオン・パシフィック サザン・パシフィック ウエスタン・パシフィック サンタフェ カナディアン・パシフィック
【追記】この書に紹介されているアルミ製リーファーについては、Oゲージの玉手箱をご覧ください。2011-03-11
【追記2】"Streamliner Memories"というサイトに、ここに示したGN、エンパイア・ビルダーの写真が、ポストカードとして紹介されているのを発見しました。その宛名面に書かれていたコメントを添えておきます。ただしカラーは、当方のサイトの方が鮮やかです。2013-01-30
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