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2008/07/11

写真で楽しむ世界の鉄道-アメリカ 1-

Img780a_3 前回の記事で言及した表題の本は、沢野周一、星晃著、1962年、交友社発行という冊子で、1950年代の鉄道黄金時代を余すところ無く魅せてくれますから、この辺りを愛するファンには大いに興味のある内容だと思います。古書市場でも時々見受けます。ちなみに同時に出たヨーロッパ編は4分冊のはずです。

 前書きに「貨物輸送が大部分を占めているから、鉄道の斜陽化が目立ち、豪華が売り物の旅客列車も欠損つづきで、客車の新製はもはやほとんど見られず」と断っているにも関わらず、中身は旅客列車ばかりです。

 どういう写真かといえば、「それぞれの鉄道会社からPR用として配布されている大形写真によったものであるが、私共が集めていたものの外に、交通博物館(鷹司平通氏、福地利司両氏の御協力を得て)ならびにナニワ工機の所蔵写真から借用させていただいたものを加え、さらにこの種の写真の蒐集家であるところの速水育三氏と中村彰宏氏の御厚意によって貴重なコレクションを御提供受けたものも多い。また、汽車会社の高田隆雄氏、平尾順平氏、大阪市交通局の宮本政幸氏、東急車両の伊藤邦秀氏、国鉄運転局の一条幸夫氏、遠藤彰一氏からは御自身で撮影されたものや持ち帰られた公式写真を拝借した……」とのことです。

 我が国では1958年(昭和33年)に"こだま"型や20系ブルートレインが登場しましたから、これらの写真を参考にしていた可能性があります。1964年(昭和39年)の新幹線開業を控えて、鉄道が国民としての自信の象徴となっていた頃です。【写真はクリックで拡大します】

 そこで、今となっては全ての方が手にとれるものではありませんから、面白そうなところを少し詳しく紹介させていただこうと思います。アメリカ編2分冊の内、今回は第1分冊(全152頁)で、東部の鉄道が主で地下鉄や路面電車が添えられています。第2分冊(全165頁)は西部とカナダです。
 なお上の表紙は、サンタフェのスーパーチーフで、中身の東部とは異なることを断ったコメントがあります。写真は速水育三氏が同鉄道から特に取り寄せたフィルムからの製版だそうで、確かに良い色が出ています。画像をクリックしていただくと写真だけ拡大します。

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Himg826a まず最初はNYCです。20世紀特急に8頁を費やしていますから、相当に意識しています。特に編集子はシャワー室と理髪店に注目しています。後者は1902年に20世紀特急が登場以来の自慢のサービスとあり、カミソリが心配とコメントされています。蛇足ながら国鉄技師訪米記の中に、日本の理髪と違ってあちらではヘア・カット、シャンプー、シェイビングを選べるとあるので、杞憂ですね。各鉄道に関して、こうした車内設備にたくさんのページが割かれていますが、私は興味がないので割愛します。なお牽引機はGM-EMDのE7です。

 NYCに対してPRRは、GG-1などの電気機関車だけでも5頁です。「イグナイトロン式交流機関車」は特に関心の程が知れます。またBudd社製パイオニアⅢ形の電車と客車で5頁です。

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Himg828 ブロードウェイト・リミテッドやコングレッショナルは他書でもよく出ていますので、ここではBudd社のチューブラー・トレイン、キーストーン号Keystoneをお目に掛けます。伊藤邦秀氏提供の写真です。中央部の床が下がっているのは重心を低く抑えるため、ということなのですが、見栄えもイマイチだし窓から見える景色も悪くて、私だったら乗りたいとは思わない列車です。一体全体どういう効能を狙った設計で、この車体のどこかTubular(管状)なのでしょう。またモデル製品があるのでしょうか。
 車内の写真は珍しいと思います。枕カバーのキーストーン・マークが洒落ています。Wikipedia英語版を参照

 次の画はY線が構成されて遠望のトラス・ブリッジが特徴的ですから、詳しい方にロケーションを御指摘いただけるのではないかと思い、挙げておきます。機関車はアルコのPAです。

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At St. Louis Union Station, distant-viewed passenger cars may be MoPac's.

 B&Oは特急と貨車の写真が揃っています。次はデトロイト・シンシナティ間のシンシナティアンで、まん丸の展望車も面白いのですが、実はこの鉄道独自の信号機に注目です。中村彰宏氏提供です。

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 C&Oについては、「貨物輸送が本命であり、中でも石炭輸送がその半分を占めている。ただしここにおさめた写真は全て旅客輸送関係である」というチグハグなコメントを振っています。上は看板特急のジョージ・ワシントン号です。牽引機はハドソンL-1、490で、この写真が「アメリカの鉄道史」に使われています。

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 こちらはN&Wポワタン・アローで、牽引機はJ、ノーザン4-8-4です。
 本書の中で蒸機の説明というと、「かつて使われていた」とか、「往年の」、「今は引退の」と形容されているのが常ですが、C&OのL-1共々、このJにはその類の説明が一切ありません。まさか1960年頃まで使われていたなんて事はないはずですが……。蒸気機関車はメーカーや鉄道による公式写真をあちこちにちりばめて、当時の読者ニーズに応えています。
 この場所も特徴的ですから、判る方にはお判りいただけるのではないかと思います。中村彰宏氏所蔵です。Along New River at Peariburg, Virginia

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 Reading鉄道のクルセーダーといえば、流線形蒸機のテンダーに展望室を突っ込んだスタイルで知られて(本誌「パシフィックの競演」参照)いますが、この写真では牽引機だけFP7Aに替えています。モデルを所有されている方は、こちらの編成を再現するのも面白いと思います。
 鉄道自身の手になるPR写真のはずで、古い時代の"縄ノレン"との取り合わせがオツですね。中村彰宏氏提供です。

Starrucca Viaduct スタラッカ高架橋

 キャプションにErie-Lackawanna鉄道とだけあります。牽引機はE8Aの重連、場所は有名なStarrucca Viaductでしょう。紅葉が真っ盛りです。
 次のロックアイランド共々、一条幸夫氏の撮影とあります。この時代に日本人が彼の地で季節まで狙って列車の撮影に行くなど、驚異以外の何ものでもありません。

 次は、Rock Island鉄道のジェット・ロケットです。牽引機はいわずと知れたGM-EMDのエアロトレインLWT12ですが、客車は断面形状からしてACF社が手掛けた改良タルゴだと思います。本書には、プルマン・スタンダード社のトレインXも含めて種々掲載されているものの、こちらに基礎的知識がありません。

Img782a

Himg835 最後に電車のページからフィラデルフィア地下鉄を紹介します。説明には、Budd社のステンレス製で、市内のマーケット街とフランクフォード間の地下および高架鉄道に1960年7月から投入され、61年1月までに270両が完成、46両が両運、224両が2両1組とあります。イナ@ペンさんが1993年当時の様子を紹介されています。
 写真提供は中村彰宏氏と、東急車両の伊藤邦秀氏です。

 本書には他にも豪華列車は、当時我が国では知る人が少なかったFECとか、ACL、SAL、NH、IC、MoPac、B&M、Wabashなど内部を含めこれでもかこれでもかと掲載されています。カラーは僅かですが、モノクロだけでも十分に楽しめます。
 続いて第2分冊の西部&カナダ編も紹介します。

【追記1】コメント欄でvanagon714さんに御紹介いただいた、別の写真を使った表紙の版です。同氏のサイトより切り取って転載させていただきました。1973年頃に新本をご購入とのことですから、10年ほど経って再版されたのでしょうか。2009-12-13

Americapicture1

【追記2】Classic Trains magazineのメールで案内のあった記事を見ていたら、見覚えのある風景が出ていました。Y線をペンシーのPAがゆくシーンと全く同じです。同誌2006年秋号とのことで、総集編DVDを開けば、p99-100でした。場所はセントルイスのユニオン・ステーション、撮影時期は1940年代末です。この場所に跨線橋でもあったのでしょう。
 で、記事は、MoPacとFriscoの列車が平行線で抜きつ抜かれつのレースを展開する話です。2013-09-05

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ニューヨーク・セントラル、ペンシルバニア、ペンシルベニア、ボルチモア・アンド・オハイオ チェサピーク・アンド・オハイオ ノーフォーク・アンド・ウエスタン エリー・ラッカワナ バッド

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コメント

今晩は:

>N&Wの(Class-)J…まさか1960年頃まで使われていたなんて事はないはずですが

いや、その「まさか」だと思います。Class-Jの最終バッチは1950年製造ですから。

投稿: eltonjohn | 2008/07/12 20:21

eltonjohnさんのコメントに ん!ということで、カーンバック社のGuide to North American Steam Locomotivesで調べると、N&WのJ(4-8-4)のリタイアは1958-9年とありました。おまけにY6(2-8-8-2)は1960年だそうです。
 C&OのL-1(4-6-4)は1955年です。凄いですね。

投稿: ワークスK | 2008/07/13 00:51

ワークスKさん:
ご無沙汰しております。

N&WのJの件、eltonjohnさんのコメントで解決済みですが、一件補足しておくと、Jが旅客の運用から退いたのは1958年の夏とのことです。

それから撮影場所はバージニア州のPeariburgです。

http://imagebase.lib.vt.edu/index.php

に行っていただいて、Pearisburgで検索してみてください。同じアングル、逆のアングルの写真が何枚かあります。

正確な場所ですが、Google Mapsでは解像度が足りないようなので、Microsoft航空写真サイトで調べてみましたが、

http://terraserver-usa.com/image.aspx?T=1&S=10&Z=17&X=2607&Y=20662&W=3&qs=%7cPearisburg%7cVA%7c

に見える川(New Riverと言うのだそうです)の下側のカーブで、右側に道路が見る場所と思われます。

さて、このJの写真、細かく見ると、いろいろ興味をそそられるのですが、またの機会に。

投稿: northerns484 | 2008/07/13 12:44

northerns484さん、御教示ありがとうございます。丘の中腹に道路が通っていて、太陽の位置も良いようですね。地図をみるとローノークから直線で西へ40マイルでしょうか。

投稿: ワークスK | 2008/07/13 21:55

こんばんは。
このシリーズは見ていて楽しい本ですね。何度見ても飽きません。
ところで私の手元にあるアメリカ1、2では表紙の写真が違っていて驚きました。【ブログ「バス、鉄道、車、船…」の2006-01-09参照】
アメリカ1は「エンパイア・ビルダ」
アメリカ2は「スーパーコンチネンタル」です。

>>ということは、決して安くないこの本が版を重ねたということですか。 冒頭でアメリカの鉄道は既に斜陽と断っているにもかかわらず、日本の連中は豪華列車を知って憧れた。新幹線でその仲間入りが出来たと国民のシンボルとなり、関心が鉄道にだけ向くようになった。その結果、航空関連の整備が遅れた。ハブ空港の座を仁川に奪われたのも、日航が左前になったのも、皆この本が原因だ! なあんちゃって!【ワークスK】

投稿: vanagon714 | 2009/11/12 23:19

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