標準軌のピンリンク式連結器
まず、Central Pacific Railroad Museumに掲載されている図面です。これ以外にもここには当時使われていたピンやリンクの現物が紹介されています。リンクに刻印があるのは、どうも盗難対策の面もあったようですが、本質的には品質保証で、当時は最重要部品という意味合いが強かったのだと思います。
この連結器の主要材料は厚板でしょうか。緩衝器は以前に「緩衝器の基本的な働き」という記事で従来品とした伴板2枚の方式です。なお、John H. White, Jr.著「The American Railroad Passenger Car」のp561でも同じ図を紹介していて、出典は意外なことにA. Bendel, Aufsätze Eisenbahnwesen in Nord-Amerika, Berlin, 1862, plate 11というベルリン発行の本です。
右は石炭車を解説するCoal Cars: The first Three hundred yearsというテキストにあったピンリンク式の連結状態をディスプレーする写真です。pdfファイルの12頁目です。鋳物ですけれど、時代的に鋳鋼ではないと思います。
書籍では2001年発行のAnthony J. Bianculli著「Trains and Technology: The American Railroad in the Nineteenth Century, Volume 2 Cars」をヒットしました。ただ残念なことにプレビューでは大事なところがブランドになっています。また値段が値段なので……。
実際に機関車や客貨車に取り付けられている様子はセントラル・パシフィック鉄道博物館などに散見されますが、アングル的にハッキリと写っているものはほんの一握りです。
上は、バッファロー・イリー郡の歴史博物館のものでW.N.Y.&P. (Western New York and Pennsylvania) の0-6-0入換機です。端梁上に載っているのはポーリング用のポールでしょうか。
次はYesteryear Depotという古い写真のコレクションHPにあったSPの4-6-0です。
ピンリンク式の操作の様子は、LEGAL METHODS: UNDERSTANDING AND USING CASES AND STATUTES (1st Ed.)という本の第3章にイラストがありました。pdfファイルの1頁と25頁です。
また、Railway Surgery(鉄道外科)という専門分野を紹介するHPには、怪我をした様子や、鉄道専門の義肢の広告まで紹介されています。我が国にも鉄道病院は多く存在しましたが、今では考えられないほどの多くの人々が鉄道に従事し、固有の怪我や病気に苦しめられていた面があったのだと思います。
ところで模型の分野では、当然というかナロー向けしか見つかりません。ヒットしたものを参考までに記すと、銀座軽便倶楽部というところでCoronado 138 Pin & Link Couplers と、南カリフォルニアのTerrapin Narrow Gauge SocietyというグループによるHPに市販製品の紹介ページがありました。そもそもこの辺りのパーツで、ナローとスタンダードで使い分けるということはないとは思います。
標準軌間の鉄道で使われたピンリンク式などという範疇は趣味の対象になり難いところですが、一応連結器の歴史の1頁ということで紹介させていただきました。
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コメント
ごぶさたです。連結器の話、奥が深いですね。
さて、標準軌のピンリンク連結器で思い出したのが、市電に装備されていた連結器?です。これをピンリンク連結器と呼んでいいのか、ちょっとわからないですが、京都市電ではバンパーにあたる部分に、ピンが差し込んでありました。おそらく非常用だと思われますが、連結棒でも差し込んでピンを落とし込む形ではないでしょうか。しかし、これで牽引したりという事例や写真は見たことないです。
投稿: ヤマ | 2008/07/30 23:25
そうです。リンクが十分に長ければ、挫屈の心配は薄らぎます。例えば、カウキャッチャーのに付いている長~いリンクです。
投稿: ワークスK | 2008/07/31 23:56