ピンリンク式と自動連結器の連結
Link and pin couplers seen during a visit to the Roaring Camp Railway in California
アメリカでの自動連結器への転換が、我が国のそれと異なって10年を掛けて漸次行われた前提には、ピンリンク式と連結可能という条件があったわけですが、その併結の様子を2月の訪米で実見することが出来ましたのでお見せします。
場所はカリフォルニア州のRoaring Campという保存鉄道で、3フィート・ナローですから自連は3/4の大きさです。機関車はプリムスの2軸ディーゼル機です。【画像はクリックで拡大します】
2種類あった内の、次は見るからに危なっかしい方です。
自連のナックルを外して、その回転軸にリンクを繋いでいます。リンクはチェーンのような楕円ではなくて所謂メガネ形で、アサガオの縁がピンリンク式本来の役目をしませんから、連結器の挫屈が心配です。それにナックル回転軸が折れ曲がる恐れもあります。
すなわち、ピンリンク式の要諦は、リンクが牽引にだけ働き、推進はアサガオの縁同士だけで行うことです。もし推進力をリンクで伝えると、レール中心線上で真っ直ぐにあるときは大丈夫なのですが、少しでもズレる、すなわちリンクが傾くと、推進力は枕木方向の分力を生じ、前後の車両を左右に脱線させる横圧となってしまうのです。
ただこの連結、上下にはフリーですから高さの食い違いには十分に対応できそうです。
左の写真はこの2軸車のピンリンク連結器の単体で、アサガオの部分だけ前後動を可能にして緩衝作用を持たせていることが判ります。
なお日本でもピンリンク式はナローで普及していて、その形から「アサガオ」型と呼ばれていましたから、この言い回しはご理解いただけることと思います。
サイトを探していて、これと同様の昔の例を見つけました。レールはナローでしょう。ただ、リンクが幅広で、アサガオの中での回転を制限していますので、挫屈の恐れはRoaring Campより少ないと思います。あるいは、写真では判然としないもののリンクの孔が1つの長穴になっている可能性もあります。
2つめの併結方式は、ピンリンク側に自連アダプターを付けたものです。
アダプターは右のように取り付けてあります。たぶん、相手の高さによって上下2段に付け替えが可能なのだと思います。加えてナックルが上下に長くなっていて、高さの問題が相当に深刻な感じがします。
なお、これらの車両はメインテナンス・オブ・ウェイ、すなわち保線作業用の編成ですから、多少のアバウトさが許されているということなのでしょうか。この観光鉄道で客車の方は当然皆、ちゃんとした自連を装備しています。
こちらの中間アダプター式も古い例を1つ、インターネット上に見付けました。ゲージはスタンダードで、左のピンリンクが機関車のテンダー、右がカブースの様です。pdfファイルの3頁目です。
しかしこれ、見るからに不安定で、アダプターを一段下げればいいのにと思いますが、当時の講習会で係員に不適切な例を示すとか、何か事情のある写真かも知れません。
なお、これもピンリンク側の緩衝器はRoaring Campのプリムス同様に無しですが、原理的に緩衝器は、緩衝容量は別として、連結する車両のどちらか一方に取り付けてあれば済む話です。ですから、機関車ではスペース的に難しいので省略して、その辺りに余裕のある貨客車に頼る、というような原則があっても不思議ではありません。
ところで本誌の「草創期の自動連結器」では1910年発行の森彦三・松野千勝共著「機関車工学」から2種類のジャニー式を紹介しています。その内の「簡単なるもの」の方の図において、ナックルの先に縦に孔が開き、かつ2つに割れているのは、これこそがピンリンク式のリンクを引っ掛けるためだと思います。
「自動連結器誕生の物語」のジョン・ホワイト教授のテキストにおける2枚目の図で一番下のものと同じでしょうか。
すなわち、これなら推進時にリンクが逃げるフトコロがあって、ナックルの甲とアサガオの縁が押し合いへし合いをしますから、挫屈の心配がありません。たぶん、こちらの方法が一般に普及したのではないかと思います。
ただし、その写真が見つかりません。カメラが未だ不自由な頃ですから、当たり前の光景は撮影されてないのか、あるいは、煩雑さを嫌ってピンリンクと自動連結器は別の列車に仕立てられていた等ということがあるのでしょうか。
ところでRoaring Camp鉄道についてはF'Trackさんが詳しくリポートされておられますので、そちらをご覧ください。
【追記】手元にあるJohn H. White著「The American Railroad Passenger Car」にちゃんとイラストで解説されているのを発見しました。インターネットばかりに頼ってはいけませんね。p569ですが、残念ながらGoogleのブックレビューではこのページが飛んでいます。
なおこの本の著者は「自動連結器誕生の物語」で紹介した文章と同じです。2008-07-27
【追記2】冒頭のPlymouth(プリマスあるいはプリマウス)機について、 ぽれるさんのサイトでご教示いただきました。DDTというシリーズとのことです。
ここに追加した2葉の写真は、Car & Locomotive Cyclopediaから引用しました。2011-10-20
link and pin coupler Janney coupler automatic coupler Plymouth Locomotive Works Diesel
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