ルー・クロス氏のシカゴ・ターミナル
A visit to Mr. Lou Cross's Chicago Terminal Railroad, O gauge layout
以前にお見せしたレナハンズ・ロコモーティブ・レキシコンの航空写真から一つ、連想したOゲージのレイアウトがあります。それがLouis R. Cross氏のシカゴ・ターミナル・レールロードです。
dda40x氏のGiants of the Westで2007年5月27日から3回に渡って紹介されましたので、ご記憶の方も多いことでしょう。実は、ここのレールがトンでもないレベルなのですが、まずは全容から紹介します。【写真はクリックで拡大します】
レイアウトの在処は、延々と広がる果樹園の中という、いかにもカリフォルニアといった風情です。
しかし、dda40x氏のお供で部屋の中に入った途端に、そのイメージがシカゴであることが判りました。
中心に大きく終端型の旅客ターミナルを据え、アメリカの代表的長距離列車が発着するというスタイルですから、レールロード・キャピタル、あるいは"全米鉄道のハブ"と呼ばれた正にシカゴです。
プランのコンセプトは、これらの列車編成を楽しむというところにあって、シーナリーが控えめで、かつレイアウトルーム全体が一望で見渡せるという雰囲気が、写真や線路配置からお判りいただけると思います。
では、見所は車両だけなのか、というとそうでないところがこのレイアウトの凄さです。
なんと、ポイント回りが作り込んであるのです。実は、クロス氏自身がRight-O'-Wayという名のガレージ・メーカーをやっていて、ニッケル・シルバー製のロストワックス・パーツを販売しているのです。カタログを見ると、実物のレールに興味を持つ方なら「なるほど!」と唸るものが並んでいます。社名はもちろん"right of way"=「通行する権利」をもじって、「正しいOゲージの道」を謳ったものです。
レールは全てハンド・レイド、上の写真はメイン・デッキの下の隠しヤードですけれど、この調子です。バラストは固着されていなくて単に撒いてあるだけ。普通の石よりも重めで吸音効果があるが磁石が着くというような説明だったと思います。何という材質かという肝心な点は聞き漏らしました。
なお、ポイント切換器は手動で、カブース・インダストリーズ社製品です。日本では昔のホクトモデルが出していた様なものだと思います。ウォーク・アラウンドでコントロールするなら、わざわざ電動とするよりも、こちらの方が使い勝手が良いかも知れません。
90度のクロスもこのレイアウトに組み込まれていたものです。これだけで100ドルです。
このライトO'ウェイ社はネット環境を持っていず、また直販のみの様ですから、製品を欲しい方はこのカタログの住所に直接申し込むより外ありません。
HOゲージで同じ様なことをしようと思えば、材質がプラスチックですが、セントラル・バレィというメーカーがあります。
ところで、シカゴといったら本ブログではダブルスリップで、もちろんこのレイアウトのプランにも描き込まれています。
未だ敷設されていませんでしたが、試作品が2種類ありました。これらはGiants of the Westの2007年7月25日号と2008年6月26日号に紹介されています。
ただし線路配置の機能上からは必要のないものなので、ことによるとクロス氏自身、設置を躊躇われているのかも知れません。1台や2台ならいざ知らず、10台ともなるとこれの保守だけでエネルギーを使い切ってしまいそうです。
ここにお見せする写真は2種類の内の、2組のトングレールを別々に引っ張るタイプの方です。アクリル樹脂の棹が2本見え、トングレールとの位置関係を試行錯誤されている風が見て取れます。この開発が成功したら、ライトO'ウェイから発売されることになるのでしょう。
ところで、実物がどういう構造になっているのかですが、某電鉄の車庫のものは、この2本の棹に別々の転轍機が結んであった様な記憶があります。
左はネット上で探し出した写真です。マシンが一台ですから、dda40x氏の案のようにイコライズによって2組を密着させているのでしょうが、これだけではリンキングの関係が全く理解できません。
この写真は、シカゴの元C&NW鉄道、 メトラUPウエスト線の写真集の中にあったものです。
「ダブルスリップの魅力」、「ダブルスリップの思い出」、「ダブルスリップのポイントマシン」もご一読ください。
【追記】ルー・クロス氏のレイアウト訪問記がnortherns484さんの「All Aboard!」に登場です。心配は、線路上のモデルが1年前からほとんど動いていない……。2009-02-12
【追記2】Right-O'-Way社カタログのリンクが切れていました。同社所在地は取りあえずProto48 Modelerのサプライヤーリンクから辿れます。2009-06-20
【追記3】 シカゴとハルピンでのダブルスリップの実例写真は、「ダブルスリップの魅力」へ移転しました。2011-08-23
Lou Cross's Chicago Terminal Railroad doubleslip double slip Metra UP West Line Tower A-2 Harbin ハルビン
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コメント
ワークスKさん:
私のBlogのほうで、Coast Starlight沿いの信号ばかりを集めたサイトを紹介しました。
この中にシカゴ駅近辺の信号を集めたページがあり、上記Tower A-2のあたりの別の角度の写真を発見しました。右手にダブルスリップを鮮明に見ることができます。
もう一つ、これはChicago Northwestern駅から北向きの線路にダブルスリップが多用されている様子が写っている写真もあります。
Google Mapsでは、このあたりになるようです。
さすがにシカゴは交通の要所だというのがよくわかりますね。シカゴ近辺のダブルスリップを数えあげると、いったいいくつあるのでしょうか。
投稿: northerns484 | 2008/11/09 09:20
レールが輻輳する様子は"鉄道の華"ですから、模型でも再現したいところで、ダブルスリップがコスト的やら機能的やらで難しいなら、単なるクロスでも、という気にさせる写真ですね。
投稿: ワークスK | 2008/11/09 22:29