« エアースライド・ホッパー(1)コレクション | トップページ | エアースライド・ホッパー(3)エトセトラ »

2008/10/03

エアースライド・ホッパー(2)エンジニアリング

Airslide covered hopper cars and their mechanism

Omiend
 ところで、前回紹介した貨車の売り物である「エアースライド」機構ですが、たぶん、原理的には粉体流動を応用した技術なのでしょうが、実はこの構造がもう一つよく判りません。
 ハッキリしていることは、この貨車のメーカーであるGeneral American Transport Corporation、略称GATC(あるいはGATX)が特許を持っていて、日本でも電機品メーカーの東洋電機(あるいは東洋工機)が技術提携をしてこの方式の貨車を多く造った、という程度です。日本の貨車については吉岡心平さんのサイトをご覧ください。また船にも種々あるようです。

 さて、エアースライドについてネットで検索を掛けると、高橋政士さんという方の鉄道用語辞典に次の説明を発見しました。
「ホキ5700等の粉体輸送ホッパ車で使われている荷役方式、床面が傾斜の付いた二重床になっていて内側の床には小さな穴がたくさん開けてありその上にはキャンバス布が敷いてある。二重床の間にエアーを送り込むと床に敷いたキャンバス布と粉体の間にエアーの層が出来て、ゲーセンにあるエアーホッケーの原理で床の傾斜に従って移動し下部の排出口から排出される様になっている……」

 アメリカの技術者向け解説書であるCar and Locomotive Cyclopedia 1966年版には、内部構造を示す次のイラストが掲載されています。ただ、残念ながら肝心の空気との関係部分が巧妙に隠蔽されていて判りません。貨車自体は三角補強がありますから、1965-69年に製造されたシングル・ベイの後期タイプです。

Img868b
 説明文には「2列に並んだU形溝の底スロープの角度は15度で、上面に1/4インチの厚さで12インチ幅のシリコン処理された丈夫な布(Airslide fabric)が強固に取り付けられている。低圧空気はこの布を透過して表面に出てエアレーションを起こし、積荷が重力によって排出される……」というようなことが書かれています。
Aimg_3043

Aimg_3043b 模型をひっくり返して裏を見れば、ホッパー底の両側にリベット(あるいはボルト・ナット)と思しき突起が無数に並んでいます。上写真で手前がウォルサーズ社の4180タイプ、真ん中がイースタン・カー・ワークス、一番奥のコンコー製は突起の表現がなされていません。

Img872  以上のことから、底の断面は右図のようになっているのでしょうか。リベットによって鋼板と布シートが共締めされているという想像です。

 ところで、このエアースライド貨車が製造された年代はPS-2の普及と同じ頃ですから、どうして、わざわざ取り下ろしに空気を使うこの方式が競争力を持ったのかという疑問が湧いてきます。残念ながら、この直接の答えは雑誌や書物では見つかりません。
 私の勝手な推量は、PS-2とは車長や高さがほぼ一緒にもかかわらず、容積が2003cu.ft.に対して2600cu.ft.と大きく輸送効率が良かったからといった辺りです。それから、現場で圧縮空気を用意することはそれほど難しくない、とか、また、エアースライドは“粒”体ではなくて“粉”体が得意で、セメント、小麦粉flour、デンプンstarch、カーボン、砂糖やプラスチック原料に抜群の威力を発揮する、というような仮説ですね。

Img869a  そんな疑問から苦労して探し出した資料にFreight Car Journalの"A History of the General American Airslide and Other Covered Hopper Cars"という本があります。これも実物の構造や原理とかの説明は皆無で、ディテールの変遷や車番表、形式図を揃えていて、完全にファン向けの内容でしかありません。まあ、それはそれで貴重な情報ではあります。全91頁、1989年刊、Eric A. Neubauer著で、簡易印刷です。

 本書の記述に拠れば、シングル・ベイの2600cu.ft.タイプは1953年に始まって1979年まで、合計9,022両が製造されたとあります。ダブル・ベイの4180cu.ft.タイプは1962-80年で5,090両です。
 これ以外には、3660cu.ft.タイプが1953-61年で119両、4566cu.ft.タイプが1978-85年で973両、4895cu.ft.タイプが1985-89年で本書出版時に251両で製造中とあります。いずれもダブル・ベイの形態です。

Img871a  外観の探求ではカラー写真集の"Classic Freight Cars, Vol.4: 40ft. Open & Closed Hopper Cars"が参考になります。1993年刊、全64頁で、シングル・ベイの写真を33枚も見ることが出来ます。(ちなみに表紙はPS-2の2003cu.ft.タイプです)
 ダブル・ベイについては同じシリーズのVol.11: High Capacity Covered Hoppersに、4180cu.ft.が4枚、4566cu.ft.と4900(4895?)cu.ft.が1枚ずつ、掲載されています。

 というわけで、愚にも付かぬことに思いを巡らし、“模型”から外れているとは思うものの、これはこれで面白いので…… (^_-)
【写真はクリックで拡大します】Airslide スペロセイキ株式会社

■「エアスライドコンベアー」なる装置の説明をネット上に見付けました。スペロセイキという北九州市の会社です。
 クローズドとオープンとがあって、使用圧力がそれぞれ600~800mmHg(≒0.79~1.05kg/㎠)、1500~2500mmHg(≒2.0~3.3kg/㎠)という点は、ちょっと高過ぎる気がしないでもありません。実は示されている単位が「水銀柱mmHg」ではなくて「柱mmAg」だったり、勾配が「7℃~15℃」となっていて、記述の信憑性に問題あり!なのですが、それはそれとして、イナ@ペンさんに探していただいた米国特許にはずっと低い空気圧が示されていることからすると、貨車のそれはここに図を転載したクローズドが相当するようですね。"キャンバス"という素材と傾斜角度は前述の文献と合致します。2008-10-14
 ネットを検索していて、不思議なことに「mmAg」をあちこちで見つけました。で、「ホンマカイナ?」とウィキペディアを引くと、「水柱」=「mmAq(ミリメートル・アクア)」とあって、これなら理解できます。が……。2009-04-15

Img922 ■The Car and Locomotive Cyclopedia 1984年版p163のGATX社4566cu.ft.エアースライド・ホッパーの広告に示されている積荷取り下ろし風景を転載しておきます。説明文には「空圧式アンローダーは28kgの重さで、小麦、デンプンや砂糖をGATXエアースライド車からバラ積みトラックに何処ででも操作員一人で積み替えることが出来る。それ以外の装置や電気動力は不要」と謳われています。右下のよく判らない装置からホースが3本出ていて、その内の2本がアンローダー、1本が貨車に繋がっていますが、ホースが雑然としているし、アンローダーに何個かのクランプが咬ませてあって、どう見てもスマートではありません。2008-11-03

エアースライド・ホッパー(4) 15/03/14 2ベイ車の増備
エアースライド・ホッパー(3) 08/10/07 エトセトラ
エアースライド・ホッパー(2) 08/10/03 エンジニアリング
エアースライド・ホッパー(1) 08/10/02 コレクション

|

« エアースライド・ホッパー(1)コレクション | トップページ | エアースライド・ホッパー(3)エトセトラ »

カバードホッパー万歳」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/134375/42660801

この記事へのトラックバック一覧です: エアースライド・ホッパー(2)エンジニアリング:

« エアースライド・ホッパー(1)コレクション | トップページ | エアースライド・ホッパー(3)エトセトラ »