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2009/03/11

BC、それはビフォー・チャイナ

Meaning of "BC" is "before Christ?" No, it's "before China" for railroad modelers.

 「BC」といったら西暦で紀元前のこと、Before Christの略ですが、我々の世界では違う意味に使われる例が出てきました。そこでアメリカ型鉄道模型大辞典に次のように登録してみました。

【ビフォーチャイナ】"Before Christ"に倣って呼ばれ、"BC"と称す。2008年頃からネット上で散見されるようになった。低価格高品質多品種の中国製品が市場を席巻する前の状態を懐古し、現状を揶揄する表現。その後のプラスチック製品はRTRで、細かなバリエーションも作り分けられた完成品となり、「キットバッシュ」という単語が死語化した。また、その出来映えはブラス製品をも凌いで、韓国業界はアメリカ物HO以外にシフトせざるをえなくなったとも言われる。
 併せて、世紀の変わり目を跨いで起こった、インターネットによる情報交換の高度化、雑誌の退潮、DCCの普及などによって、モデラーのあり方にも大変革があったことを示唆する。

 私が手にした最初の中国製品は、ライフライク社のプロト2000、GP18です。1993年のことだったでしょうか。

 息を吹きかけたらファンが回り、日除けが前後に動くというギミックがあって、おまけに手すりや吊り環が別部品で取付済でした。それまでの、普及品はアサーンで、高級品がカトーというイメージからは別次元のモデルで、戸惑ったものです。
 もちろん、オーバーだったり、質感がアウトなところがあって、全体としてはオソマツだったのですが、世紀が変わる頃には他社製品を含めて十分にスケール・モデルとして認知されるレベルになっていました。

 それと、アサーンのブランドである"レディ・ツー・ロールReady To Roll"、一般的にいったらレディ・ツー・ランReady To Runという言葉も変化しているように感じています。そこで、次の説明を付け加えました。

【RTR】BC(中国製品蔓延以前)にあっては、入門者や低年齢者向けのトレインセットや玩具レベルの製品を指すことが多かった。
 しかし近年は、手すりなどの別付部品やケーディー・コンパチブルのカプラーが全て取付済で、かつウエイトも適正に調整され、場合によってはDCCデコーダー付で軽いウエザリングも施されていて購入者が弄るところが無く、文字通り、線路に置いて直ぐに走らせられる完全な製品という意味に変わりつつある。

 かつて、「買ってきて直ぐに走らせられる」という言葉には、それが全くのオモチャで、スケールモデルに化けさせる素養が無い、すなわち「手を入れようがない」というチャカシ、あるいは自虐的な思いが込められていたような気もします。

 ちなみに私自身がアメリカ型モデルを楽しむ基本は、安価な製品に効率的に手を加えて、製品にない形式を作り出したり、高価なブラス製品に引けを取らないモデルをでっち上げる、というところ。言ってみれば「模型」=「工作」、すなわち「模型をやる」ということは「工作する」と同義語、という感覚があったことは疑いようが無いことです。

 しかし今は、その必要もなければ、ほとんどのものは、しばらく待ったら発売されて、楽だし安いし自分で弄るよりも遥かに素晴らしいし、ということで、その意味が無くなりつつあるということなのです。

‥‥戦後、アメリカ型で時代や鉄道、車両を特定するスケール・モデルという市場は、日本製のブラスによってもたらされた。1980年代にそれを韓国が取って代わった頃に、普及プラスチック製品をキットバッシュする世界が生まれた。次はブラスの中国への移行かと思われたが、そのプラスチックによる低価格高品質多品種生産が全てを覆い尽くすに至った‥‥
 プラスチック製品が高品質化した、というよりも、ブラスによって実現されていたレベルがさらに高度化して値段が劇的に下がった、といえるでしょうか。

 ところで、昨今の経済状況は百年に一度の大恐慌だと言われます。景気の浮き沈みは、一面では産業や社会の構造が音を立てて変わっていく過渡現象でもありますから、我々の世界にも必ずや変化があることだろうと考えています。

 「BC」の対語は「AD」ですけれど、我々の世界ではこれにどういった語を振り当てたらいいのでしょうか。生業的にはAfter Depression(不景気後)ということになってほしいものですが……

河田耕一作品展「鉄道の風景を描く」-北から南まで-

 高知県にお住まいの河田耕一氏から案内が送られてきました。スケッチを東京銀座で披露されるのだそうです。同氏といえばかつてTMS誌上で全国の鉄道施設をモデラー向けに紹介されたことで知られていますが、写真ではなくてスケッチとは驚きました。
 京都府在住の当方はちょっと無理ですけれど、広く皆さんに御紹介したいと存じます。
 今年4月15日(水)~20日(月)の11:00~19:00(初日は12:00から、最終日17:30まで)、場所は東京銀座「ミレージャ ギャラリー」です。案内文には「稚内から枕崎まで、1953年から2008年まで、列車、駅、機関区、そして沿線、旅客、鉄道員が織りなす鉄道の数々の場面を描いた絵の40点を展示します」と謳われています。
 この絵は山手線の電車だとして、さて、どこの駅でしょうか。

【追記】RMM誌の2009年4月号の、水野良太郎さんのコラム「鉄道模型進化論」で、1990年代半ばからのアメリカ型製品での傾向が論じられています。同号をお持ちでしたらご一読ください。2009-03-25

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コメント

お早うございます:

埼京線渋谷駅から山手線を見た景色のように思いますが…
最近都内に行く事が少ないのでよく分かりません。

投稿: eltonjohn | 2009/03/12 10:52

eltonjohnさん、コメントをありがとうございました。早速ウィキペディアの渋谷駅の項を見てみると、JR東日本の配線図があって、さらに写真で「埼京線・湘南新宿ラインホーム北端から山手線内回りホーム南端を見る」というものがほぼ同じアングルのようですね。

投稿: ワークスK | 2009/03/12 21:37

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