童話の「ちいさいきかんしゃ」はアトラン
I looked at some railroad picture books at a bookstore. I liked in particular The Little Train written by Lois Lenski..
琵琶湖から瀬田川に流れ出す首根っこのところにイオンモール草津というショッピングセンターが出来て3ヶ月が経ちました。暇があったので入ってみると、書店の絵本コーナーが充実しています。
と、アメリカ型の蒸気機関車が目に入りました。
題名は「ちいさなきかんしゃ」、著者はロイス・レンスキーという方で、オリジナル版の出版は1940年、福音館書店の日本語版も71年という大昔です。
展開は、蒸気機関車がラウンドハウスから出て水と石炭を積み、始発駅から終点までの機関士を中心とした単純なストーリーです。追い越していく流線型「あおいいなずまごう」がM10000、シティ・オブ・サライナそっくりだったり、腕木式信号機が上向き3位式(当ブログ2006-10-15参照)だったりと、知っている者にはそれなりに面白いところがありました。
主役の蒸機はアトランティック4-4-2で、ボイラーの太さや煙突の長さからしてイメージは間違いなくペンシルベニア鉄道のE6sです。
乗り物絵本の方は写真ばかりで知識偏重、私には面白くありません。前に掲示板で紹介した木村定男氏の様な手書きが懐かしいところです。売り場をざっと見渡して目に入るものは、読み聞かせるための幼児用か、字を覚えたての小学低学年向けばかりでしたが、記憶に残っているものを以下、紹介しておきます。
「しゅっぱつしんこう」も福音館で1982年刊、2008年に66刷というのですからビックリです。"おおきなえき"から特急電車"はつかり"に乗り、急行のキハ58に、さらに最後は各停のキハ52に乗るという行程です。細密な車両画がうれしくなります。ただ、東北新幹線が開業して20数年を経過し、既に走っていない車両ばかり登場するのがだいじょうぶなのか少し心配です。それは次にも言えます。
「カンカンカンでんしゃがくるよ」は、踏切で遮断機越しに通り過ぎる列車を眺めている想定で、登場する車両は長さ方向にデフォルメされた、オレンジ色の201系、EF66の牽引する一般貨物列車、581系特急電車などです。
まあ、「どこの踏切なんだ!」とのツッコミは野暮でしょう。新日本出版社の1990年刊で、2008年19刷です。
「ぼくの町に電車がきた」は、おじいちゃんから聞く伊豆急を建設する話です。原寸大の犬釘の画にインパクトを感じました。小学校中学年向きとのことで、ちょっと高度ですが。電車のプロポーションをもう少しリアルに描いて欲しいと思います。岩崎書店の2006年発行です。
「でんしゃでいこう でんしゃでかえろう」は、仕掛け絵本で、見開きの左右にトンネルがあって、右からでも左からでも読める趣向となっています。すなわち左写真の反対の表紙は「でんしゃでかえろう」というお話しになります。イメージは江ノ電辺りでしょうが、それ以上に良いプロポーションです。 同じ“ひさかたチャイルド”という出版社で「でんしゃのたび」という非常に凝ったカラクリ絵本もありましたが、「でんしゃでいこう……」のように単純な方が想像力を刺激できて飽きないのではないかと思います。
「せんろはつづく」は、全くのメルヘンチックな内容です。表紙の通り、子どもたちが延々と線路を敷いていくというだけのストーリーですが、私のモデラーとしての鉄道のイメージは正にこれです。子どもの頃に寝ていて本当にこんな夢をみた記憶が微かにあります。金の星社の2003年発行です。
さて、以前にもこのブログ(メールマガジン)で「童話に出てきた蒸気機関車」として、私がアメリカ型を好きになった遠因の一つかも知れない本を紹介しました。できれば、画の助けを借りずに、文字だけで想像を膨らませる読み物を見付けたいと、かねがね思っているものの、表紙絵や題名からでは探すのが中々難しく、虱潰しに当たるのも不可能な話です。
自分の子ども用に買ったものとしては、福音館の「たくさんのふしぎシリーズ」で、宮脇俊三・黒岩保美コンビのシリーズがありました。「スイスの鉄道ものがたり」とか「シベリア鉄道ものがたり」ですね。「御殿場線ものがたり」は買いもらしています。
近年、鉄道書コーナーはキャラクターグッズを交えて大にぎわいですが、食指の動くものが無かったら、こちらを覗いてみるのも一考かと思います。えっ、誰です! 「孫が生まれるのか?」などと言うのは……。
【追記1】朝日新聞2009年10月28日朝刊(大阪本社版)で異例だったのは、第1面の最下段に絵本がズラっと並んでいて、かつ、それらのカラーの表紙画像を掲載していたことです。大昔にどこかで読んだ記憶に拠れば、この場所は新聞の顔だから気品を求められて、文字だけの構成となっているはずでしたから、驚きました。
なお、この中に上で紹介した「せんろはつづく」の続編「せんろはつづく まだつづく」が出ています。「星の王子さま」と競うとは恐れ入りました。今度本屋に寄ったら立ち読みしてみようと思っています。2009-10-28
【追記2】11月27日の朝日新聞朝刊にも同じ体裁で「せんろはつづく まだつづく」が載っていました。広告の効果が上がっているのでしょうか。2009-11-27
【追記3】少々間が空いてしまいましたが、2014年8月5日の朝刊には「おとぎれっしゃ しゅっぱつしんこう」でした。これも金の星社です。2014-08-05
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コメント
日本の鉄道絵本と言ったら、『きかんしゃやえもん』を挙げねばならないのでは。阿川弘之さん+岡部冬彦さんのコンビによるこの本は、初版から50年、今でも新本で買えると云うのだから、驚異です。累計販売部数も100万部を超えていると聞きました。本当なら。鉄道書唯一のミリオンセラーなのではないでしょうか?!
投稿: 宮 崎 繁 幹 | 2009/03/28 22:17
宮崎繁幹さん、その通りですね。不思議なことに当日は見つかりませんでした。
投稿: ワークスK | 2009/03/29 00:06
私が好きなのは、バージニア・リー・バートンによる「いたずらきかんしゃ ちゅちゅう」です。(英語版)初版が1937年で、日本語訳の初版も1961年と、これまた息の長い本です。改めて見てみると、このお話もAtlantic 4-4-2が主人公となっていますね。
投稿: northerns484 | 2009/04/05 22:05