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2009/06/20

NYCのパシフィック4-6-2

The processing of photographs by Adobe Photoshop Elements 7, Part 5: A search of the NYC Pacific 4-6-2 which Kawai Model produced in 1950's

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 林信之さんのHPにアメリカ型が久しぶりに登場しました。カワイモデルが大昔に出していたニューヨーク・セントラル鉄道のパシフィック機です。NYCといえばハドソン4-6-4が余りにも有名ですが、その前にパシの活躍した時代もあったんですね。

 冒頭の2葉はアート・オブ・ブラス第2巻からの転載です。実は、このモデルについて悩んだことがありました。【画像はクリックで拡大します】

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 最初にこの製品の存在を私が知ったのは"模型とラジオ"誌、1964年3月号臨時増刊「鉄道模型の製作」です。
 その科学教材社の通販品リストの中に上の写真がありました。「4-6-2」の意味が軸配置であることは知っていて、写真の4-6-0と違うことには気が付きました。当然、本当はどういう機関車なのだろうと、疑問に思いますよね。
 カテゴリーが「外国形機関車」と「外国形高級機関車」とに分けられている内の前者に属しているので、廉価製品だったのでしょう。ちなみに同じ本で天賞堂のビッグボーイはもちろん「高級」で、値段は49,500円です。

 で、アート・オブ・ブラスを入手したときには直ぐに、これだ!と思い当たりました。テンホイラーの方も照合すれば、Ken Kidder-NozawaのNYC F51に合致します。

 ところが、このパシフィックがブラウンブック、過去に発売されたブラスモデルの一覧には、NYCの項で出ていないのです。NYCではなくて、ミサレイニアス=「分類不能のその他諸々」に、インターナショナル・モデル・プロダクツ=IMP製で1954年の4-6-2、キット売価24ドルというものはあります。International Model Products

 この本以外でもIMP製品のパシフィックはNYCには無くて、ラッド・チェックリストでは単に「Pacific, 4-6-2(Kit)、1954年、23.95ドル」、レナハンズ・ロコモティブ・レキシコンではミサレイニアスの中に「4-6-2、IMP、1959年」、昨年出たブラス・モデル・トレインズ、プライス&データガイドでも鉄道名=Variousで「4-6-2、1954年、24ドル」とあるだけで、いずれも写真無しです。
 カワイモデル製品がこれだとして、24ドル×360円/ドル=8,640円を直販で6,930円なら納得ですが、8,000円ではボッタクリのような気もします。

 そうこうしていて、我が国の”とれいん”誌1978年2月号に山内昇という方の「NYCの蒸気機関車たち(2)」と題する解説を発見しました。
 それに拠れば、NYCで最初に登場したパシは1903年のK-1とKで、1907年からK-2が192両、さらに1911年からK-3が281両も製造された。また、「オールドファンにおなじみのカワイモデルのNYCのパシというのが、K-2あたりをプロトタイプとしたものであったが、スケールからはかなり外れていて、NYCタイプ、というところだった。しかし、このモデルも今となっては貴重品であろう」とのことです。実物とモデルの写真は示されていません。

 このうちK-3は、古い"The Model Railroader Cyclopedia, The Book of Plans"1950年版に写真と図面が掲載されていました。有名なMR誌の蒸気機関車図面集の基になった冊子です。
Nyc_k3_mr2

Nyc_k3_mr

 K-2については写真が見つからないのですが、カーンバック社の"Guide to North American Steam Locomotives"等に拠れば、K3と同じ動輪径79インチで、共にコニカルボイラー、K-3がスーパーヒーター付というのですから、似たようなシルエットだと思います。

 モデルとK-3は、ボイラーに始まり、ドームやキャブなどのディテール、さらにはテンダーがよく似ています。その中で、動輪だけが極端に小さくなっているのは、フランジが高めのモデルの事情ですよね。
 私は、図面の存在からして、カワイはK-2ではなくて、K-3のつもりだったのではないかと思います。

 なお、K3の次に主力となったK-5/K-6というヘビーパシフィックがMM誌の図面集第1巻に出ています。バウザー社のダイキャスト製NYC 4-6-2はK-11という形式で、高速貨物用なのだそうです。またWes Barris氏によるスチームロコモティブ・ドットコムもご参照ください。

Img183m  ところで"模型とラジオ"増刊号の写真は、スキャナーで読み取る時に印刷面がガラスに密着しなかった関係からか、右半分が露出不足の感じになってしまいました。そこで、フォトショップ・エレメンツ7の「覆焼きツール」を使って、明度が全体に均一になるように細工をしてみました。ただし手加減が難しく、やりすぎて一部にムラが出ています。「覆い焼き」で明るく、「焼き込み」で暗くなります。
 一方、アート・オブ・ブラスの方の写真は、一部にモアレ縞が出ているものの、これを解消する機能が今のところ判りません。スキャナー自体にある「モアレ除去」の機能では、シャープさが少なからず損なわれてしまいます。

 フォトショップの体験版は18日が過ぎ、残り12日となりました。

【追記】鉄道模型趣味誌に広告を見付けました。1952年11月号が予告で、53年5月が新発売です。後者の「ハンドメイクのキット化」の意味は不明です。2009-09-29
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Tms535no57

【追記2】TMS誌2010年11月号の「戦後日本 鉄道模型製品の歴史 37回」にこのモデルが登場しました。添付図面に「NYC K-3」と明記されているとのことです。2010-10-20

【追記3】odakkerさんがこのモデルを入手され、そのレストアの様子を「散財日記」で披露されています。その過程で撮影された写真を見ていくと、構造の細部が判ります。

 なお次は、発行年不詳のIMPのカタログから引用したものです。細部が異なっているので引用を躊躇していたのですが、他に該当するものが無いのでアップしておきます。(画像配置は並べ替えています)
 説明文の中で"Model RR Cyclopedia"の16頁というのは、上述した私の1950年版では0-8-0ですから、別の版でしょうか。ブロンズ・ダイキャストのスモーク・ボックスは、煙室扉のことだと思います。テンダーの台車側枠もブロンズ・キャストだそうです。
 ともあれ、インポーター自体がプロトタイプを明示していないことに訝ります。2011-09-12

Imp_ho_pacific

【追記4】カワイNYCパシフィックの模型図面を発見しました。記事本文でも言及した「模型とラジオ」1964年増刊号の、その3年前に出た1961年4月号別冊付録です。こちらの写真は正しい姿で、値段は若干安価です。2013-02-14

Nyc462kawai

【追記5】アールクラフトの井指店主より以下のメールを頂きました。読者の皆さんには判り易いように一部加除してお目に掛けます。これらを概観すれば、形式名は単に順番に付けたとしか思えませんね。2009-06-21
 何時も楽しく拝読させて戴いております。「それにしても両鉄道がパシに"K"を割り振った理由はなんなんでしょうか」と記してありましたが、当方でわかる範囲で、PRRに関してですが、軸配置を記号で表しておりました。
A 0-4-0
B 0-6-0 B-1:電機
C 0-8-0 CC-1,CC-2:マレー
D 4-4-0 DD-1,DD-2:電機
E 4-4-2
F 2-6-0 FF-1,FF-2:電機
G 4-6-0 GG-1:電機
H 2-8-0 HC-1,HH-1:マレー
I  2-10-0
J  2-10-4 (当初は2-6-2)
K 4-6-2
L 2-8-2 L-5,L-6:電機
M 4-8-2
N 2-10-2
O 4-4-4 O-1:電機
P 4-6-4 P-5:電機
Q 4-6-4-4 Q-1、4-4-6-4 Q-2:デュプレックス
R 4-8-4 R-1:電機
S 6-4-4-6 S-1:有名な流線形
  6-8-6 S-2:6200 class 蒸気タービン
T 4-4-4-4 T-1:こちらはシャークノーズ
 以上のような振り分けで、パシフィックはKに相当します。NYCの方は確認しておりません。O、Pなどは電気機関車特有の配置と思われます。アーキュレィテッド蒸機などは組み合わせになり、2-8-0+0-8-2でHHという表示ですが、2-8-0+0-8-0はHCとなり、少々戸惑います。
 電気機関車も同様で、ロッド式で武骨さで名が知れていると思われるDD-1はD(4-4-0)を背中合わせにした4-4-0+0-4-4になります。同様に有名な流線形のGG-1もG(4-6-0)を背中合わせにした軸配列のためGGです。
 なお E2b、E2c、E3b、E44など他社から移ってきた車輌を含め、一部の電機は上記の記号には属しません。以上、わかる範囲です。
 このようなアルファベットの振り分けが、いつどのような規約でつけたのかはわかりません。

 

New York Central System Pacific アドビ・システム

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コメント

ご無沙汰しております。カワイのNYCの件、興味深く拝見しました。
ところでモアレの除去ですが、仕事上で、初期のデジタル複写機で良く出ました。その時は顧客に原稿の向きを変えて下さい、とアドバイスしました。メーカーから画像のパターンに読み取りのCCDが反応してモアレになる、というようなことを聞きました。お試し下さい。

>>当方ではこのところアメリカ型の登場がご無沙汰で……。PRRの有名なパシがK-4ですから、私は一時、NYCとPRRは共通の通し型式を付けていたのかと誤解していた時期もありました。それにしても両鉄道がパシに"K"を割り振った理由はなんなんでしょうか。
モアレの件、ご助言ありがとうございます。今度やってみます。【ワークスK】

投稿: 林 信之 | 2009/06/20 21:27

パシフィックの形式名に各鉄道が"P"を用いるのは判るとして、なぜNYCもPRRも揃って"K"なのでしょうか。PRRの体系を眺めれば単なる順番と思うのですけれど、調べてみると、"K"の鉄道が異様に多いのです。両鉄道以外では、CN, CP, C&NW, CGW, CI&L, Erie, L&N, LV, M&StL, Dixie, NKP, Rutland, MWと十指に余ります。これに対して"P"は、ACL, B&O, B&LE, CofG, RI, Clinchfield, D&H, D&RGW, DM&IR, MoPac, SAL, SP, SR, T&P, UP, VGNと、数の上で両者は拮抗しています。もちろん、車輪配置を現していない場合もあります。会社名に"Pacific"を謳っている鉄道は……。

投稿: ワークスK | 2009/06/22 12:46

拙いレストアの模様を紹介して下さりありがとうございます。完成までこぎつけましたので、お時間のある時にでもご覧ください。アドレスはここです。

>>ええっ! もう完成ですか! それに美しい仕上がり! 参りました!【ワークスK】

投稿: odakker | 2011/09/15 13:51

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