ウォルサーズHOカタログの10年-2段式オートキャリアー
Do you know about difference between three Walthers auto rack models?
明日は大晦日で、激動の2009年がやっと終わります。
と同時に00年代、21世紀の最初の10年、第1ディケイド1st decadeが終了することになるのですけれど、この「00年代」は一体、なんと読むのでしょうか。「1980年代」とか、「90年代」だったらそのままですが、「00年代」は困ります。
そんな話題がアメリカでも沸き起こっていると、28日の朝日新聞朝刊にありました。記述方法自体は、「1980's」や「90's」ですから「00's」のはずです。
そういえばちょうど10年前、1999年の12月31日は、例の2000年問題で徹夜をしました。何か大昔のような感じがしますね。そして、この趣味の世界も大幅に変わってきたような気がします。
2010年版のウォルサーズHOカタログを入手しましたので、10年前の2000年版も引っ張り出してきました。【画像はクリックで拡大します】
左の表を作って、両書のページ数をカテゴリー別に較べてみたのですけれど、いかがでしょうか。
ざっと見渡すと、増えたものは、客車、シーナリー、人形、DCC辺りです。
減ったものは、貨車、デカール、台車・連結器、それにパーツです。全体では+64ページの微増といったところです。
この中で機関車は、+2ページと変わっていないように見えますが、内容は大所のアサーンが抜けるという大変化が起こっています。その代わりにウォルサーズ社の発売となったプロト2000が1ページに1形式ずつという贅沢さで掲載されています。
以前は、定番商品の在庫を維持して恒常的に販売していくというスタイルだったものが、一回の生産数は直ぐに捌ける少量として、その都度売り切っていくという形になっているようにも思います。同じF7でも、最初はUPとPRRで、次回はATSFとNYCという具合でしょうか。
ということは、このウォルサーズ・カタログが用をなさないということなんですね。在庫確認と発注がオンラインでできる様になってからは、私もわざわざ欲しいとは思わなくなりました。まあ将来、新製品として発売された年を調べるのに使うという目的です。
たぶん発行部数は落ちていると思います。月刊のWalthers Flyer Online!なる通販メールとサイトをこの11月に始めたのは、そのためだと思います。
次は、古い2000年版にあるアサーンのページです。ジェネシス・ブランドが登場したのが1999年版で、アサーン自体がホライズン傘下となり、ウォルサーズ・カタログから抜けたのは2005年版だったでしょうか。そしてこの10月16日に、ブルーボックスのキット・シリーズを販売終了するとアナウンスがありました。
なお、各年版が発行されるのは、その前年の11月前後ですから、そのつもりで判断しなければなりません。
客車については、+20ページと大幅に増えた上に貨車よりも順番が先になるという出世を遂げています。10年前はショーティとか、"雰囲気"セットばかりだったものが、2010年版ではUPシティ・シリーズ、スーパーチーフ、エンパイア・ビルダー、カリフォルニア・ゼファーと、特定の列車名が目白押しなわけですから、まさに様変わりです。
次は2010年版のウォルサーズ製品で、NYCの20世紀特急と、ミルウォーキー鉄道ハヤワッサ客車です。
DCCは、2000年版ではMRCなどを「電源等」に含んでいたものが、2010年版では完全に独り立ちをしました。ここが一番大きな変化です。
接着剤やペイント、工具、素材は変化がありません。
それに対して、デカールの△6ページはモロにウォルサーズのラインナップ縮小です。スーパーディテーリング・パーツも△16ページと大幅減で、アサーンとカスタム・フィニッシングが抜け、ディテール・アソシエーツは写真を止めました。
紙質や製本の具合、カラー写真の割合等は、10年前と差を見付けるのが難しいレベルです。
ところで、この紙面を見ているだけでも大幅な様変わりを感じるところですが、現実の製品はさらに大きく変わっています。2000年版は、一部の貨車に組立済が出てきたものの、多くはキット形式で、ディテールも手すりは一体モールドが普通だったのに、2010年版は金属線の別付け、それも取付済がほとんどとなりました。
値段は貨車で5割増から2倍ほどでしょうか。適切なウェイトに、金属車輪、ケーディー・コンパチブル・カプラー付のレディーツーラン、組立済というのですから、割高感はなくて、安くなったという印象です。
機関車は、DCCやサウンドが付かなければ100ドル前後ですけれど、ダイキャストの動力は、どれもかつてのカトードライブのようにスムーズで、かつインジェクション・モールドの車体は、昔では考えられなかった精度とリアルさを備えています。
もう一つ大きな変化は、新製品の発売されるピッチです。大手のウォルサーズ、BLI、アトラス、アサーンなどは毎月のように、それも予告通り、数種類の新形式、新スキームをリリースし続けています。 これらは、設計と金型製造にコンピューターを導入している効果でしょうか。CADとCAMですね。フェーズや鉄道毎の僅かな違いも作り分けられることが多くなってきました。
すなわち、かつては我々が欠かすことの出来なかった、走行関係に手を入れるという作業が不要になった上に、スケールに忠実なグレードの高い製品や自分好みのスキームは、しばらく待っていれば、いつかは発売されるということです。
正直に言えば、楽しみだったキットの叩き直し、すなわちキットバッシュという趣味が、無くなってしまったといえます。カタログでもこれを反映して、スーパーディテーリング・パーツのページが減っているわけです。
写真でお見せするオートキャリアー、自動車運搬車はウォルサーズ社の製品です。
トライ・レベル、3段式の方が2000年版で19.98ドル(現行29.98ドル)の新製品、バイ・レベル、2段式の方は2010年版が初登場の34.98および39.98ドルです。いずれも中国製の組立済ですが、細部を見ていただければ両者の間には、歴然とした飛躍があることがお判りいただけることでしょう。2000年版の製品は、単に1993年版バイ・レベル、アメリカ製品のコピーで、2010年版は現車の特徴を的確に捉えた完全なスケールモデルになっていると思います。
この車体構成には唸らされます。
中国への生産拠点の移転という変化自体は1990年代の中頃から始まって、2000年頃にはアトラス、アサーン、ウォルサーズといった大手は体制を整え終わっていたと思います。これが、前半の5年で一気に全体に及び、後半には新しいメーカーも加わって競争が激化し、製品のレベル自体がアップしてきたということでしょうか。
オートキャリアーといえば、とれいん誌97年7月号に紹介の、新宮琢哉氏がパネルに1両当たり10,198個の孔を空けられた3両のモデルを思い出しますが、そういう楽しみ方、武勇伝が昔日のものとなりつつあります。
そうなのです。
じゃあ、それを理想とした、それを目指した私は、これから、どうしたらいいのか、です。
なお、朝日新聞の「00年代」に関する記事は、ほぼそのままトレースしているブログがあります。
【追記】このモデル自体は、当方のBNコレクションである"Cascade Green Horever!"に展示しております。2013-01-11
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コメント
ほんとうに、あらゆるプロトタイプの超精密スケールモデルが製品化される現在、そしてこれからは実物鉄道車輛のミュージアムモデルを最終目的とするタイプの楽しみ方をする鉄道模型趣味の世界では、キットバッシュ、ディテールアップもそしてスクラッチでさえも工作という行動そのものが意味をなさなくなってきているのかもしれませんね。
ただ、オモチャを楽しむ、というか、自分でデザインした鉄道?車輛を創作するという楽しみ方、工作する事自体を楽しむという世界では、キットバッシュもスクラッチビルドもずっと趣味として健在だろうと信じたいのですが、素材となるパーツやキットが手に入りにくくなってくると、そういう世界も下火になっていくのではないかとさびしくなりますね。
ただ、プラホビーの世界、特にSFロボット関係の世界では、市販のプラモから部品を自由自在にピックアップして創作するタイプの楽しみ方も市民権を得ているようで、今後は鉄道模型関係もこのような楽しみ方がひろがってくれれば、とはおもうのですが、鉄道模型趣味って、リベットカウンターなどという言葉が象徴するように、どちらかというと、鉄道趣味を基本として実物のミニチュアを手元に所有したいという願望から発展している場合がおおいから、なかなか難しいのかもしれません。
>>実物に忠実なスケールモデルが絶対か? といえば決してそうではなくて、出現の時期や状況から判断しても劣る実物は数知れず、実物に拘りすぎると御発言の前半の状況に陥りやすいと思います。楽しみ方は人それぞれですが、今まで、ん十年も付き合ってきたのですから、これからも悩みながら立ち向かっていくしかありませんね。【ワークスK】
投稿: skt48 | 2009/12/31 15:05
日本のNゲージも最近は少ない製造ラインを少量生産のローテーションで回しているようです。
人気のある車種は発売と同時に売り切れ、一度品切れになってしまうと再生産されるのは数ヶ月後~数年後になってしまいます。
メーカーのサイトでは再生産のスケジュールが発表されています。
>>直ぐに他社が競合製品をぶつけてくることも多く、購入するのが難しい時代になりましたね。私は買っても箱に入れたままとすることばかりですから新品に手を出さず、後日、必要になったときに値が下がった中古品をネットオークションで調達! と考えているのですが、そう巧く問屋が降ろすものでも……(^_-)【ワークスK】
投稿: YUUNO | 2010/01/01 00:45