ブルースター・パシフィックRRを訪ねて
ネットに公開されているこの小山田美術館のサイトに拠れば、もともとは地区の市民センターだった建物を医療法人が譲り受けたもので、地域の芸術振興を目指し、入場無料とのことです。昔懐かしい木造の保育園のような雰囲気といったら判っていただけるでしょうか。床は木目の出た板張りです。(三重県内の博物館紹介ページ)
受付の女性に来意を告げると、自由に運転してくださいとのことで、ちょっと面食らいました。写真撮影も快諾です。
見学者は私一人でしたので、ゆっくりと見物させてもらいました。
雑誌で拝見している印象そのままに、平面周回式のレイアウトは一目で見渡せ、壁には鉄道の古い写真や絵画が懸かっています。窓際で陽光を浴びていますから、カメラには逆光です。
6分割して運び込んだというベースの継ぎ目は、それほど目立ちません。エンドレス4本のうち、取り敢えず外側2本だけが整備してあるようです。
最も内側の線から一番外側の線まで、2線を跨ぐ高架線が設けられていますが、このブリッジが直線角折れとなっているところは、「判っているなあ」という感じです。
線路の上にはリバロッシのE8と、アサーンのPAです。後者は中日新聞に登場していた機関車ですが、台車が外れていました。たぶんこれがMR誌に話題を提供されたパワートラック装備の3軸台車だと思います。付随軸に荷重をかける工夫が見て取れます。
こういう形で走らす車両は、残されているモデルに拘らずに、やはり最新式の製品を当てる方が確実だとは思います。
電源は自作のトランジスタ・コントローラーと、アメリカ製と思しきサウンド装置付きです。初めて弄る方にはちょっと無理かもしれません。
一般の方に運転してもらうためには、やはり耐久性や操作性など、色々と考える必要があるはずですが、先立つものなど問題も山積みです。
コレクションの方はガラスケース3つに収まっています。1980年代までの製品で蒸気機関車、客車など、ざっと120両でしょうか。他に欧州型が1ケースです。
親しい方に形見分けをしたとのことで、有名なOゲージのタルゴ(TMS誌1955年3月号に発表)や、HOゲージでも4-4-0は抜けています。また、陳列も並べて置いてあるだけで、丁寧に塗装されているところを拝見できずに残念でした。実物や製品の詳しい解説を読めたら、さぞや面白いことでしょう。
次はレイアウト上にあったモデルです。塗装してデカールを貼り込んだNYCハドソン(PFM?)と木製インタアーバン(ラベル社?)、イギリス型2軸貨車を切り継いだボックスカー、スケール長さに伸ばしたドーム客車など、先生お得意の作品です。
車両や架線、建造物、さらにターンテーブルなどに欧州モノが流用されているのは、当時の製品事情ですね。
全体を見渡すと、よくぞここまで漕ぎ着けられたものだと思います。分割して運び込むのは大変だったはずです。
さらにこれからが問題で、根本の作りが個人用なわけですから、毎日ハードに扱っていれば直ぐに壊れて動かなくなってしまいます。また埃もたまってきます。
お金も必要ですが、それだけではどうしようもなくて、これはもう地元ファンの皆さんの更なる御尽力に期待せざるをえないのではないでしょうか。
アメリカ型ファンとしては、例えば年に一度集うとか、ここが同好者の憧れの地、メッカにしていただけると、うれしいですね。
次の画像は本人執筆になるモデル・レールローダー誌の記事です。1974年11月号ということで、日本人として初めてだったはずです。
また、TMS誌1992年9月号に9頁の詳細な解説を書かれています。
とれいん誌では1976年1月号に編集部による6頁の訪問記があり、1980年10月号p36にタルゴが登場します。
dda40x氏の思い出話(6回連載)や、2009年12月19日付の中日新聞記事、アメリカ型鉄道模型大辞典も併せてご覧ください。
【追記1】次の写真が良く知られたOゲージのタルゴ列車です。鉄道模型趣味誌1955年3月号掲載。2014008-11
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コメント
行ってみたいのですが、期待との落差が怖くて、まだ行っていません。
4-4-0 が無いのは画龍点睛を欠いていますね。おそらく日本で唯一の完全な4-4-0のコレクションでした。無いものはなかったはずです。形見分けと称してばらしてしまったのでは意味がないですね。
タルゴの消息については、ご子息に尋ねてみましょう。無事であることを祈ります。
>>映画「大平原」に憧れて、1850~1960年代のUPの代表的な列車を根幹に、それ以外の歴史的なものを網羅するという方針のコレクションで、それが走って可笑しくないレイアウトを目指されたのだと思いますが……【ワークスK】
投稿: dda40x | 2010/01/20 17:38