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2010/02/06

EB58、阪神、上田丸子、天賞堂……

カツミEB5834

 林信之さんのメールマガジン、「私の16番ゲージ鉄道模型ライフ247号」を拝見しました。
 とれいん誌2010年2月号のEB58は快挙ですね。これだけ大きな写真で扱われて、さぞやモデルも本望だろうと思います。写真撮影が筆者自身というのもビックリで、ブラスの色がよく出ています。モノクロのコントラストもなかなかです。一つだけ難を言わせてもらえば、潤滑剤についての記載が欠けていたことです。
 また次に期待させていただきたいと存じます。

 ところで、メールマガジンの同じ号にあった、模型店で他人が買おうとしている品物を、訳知り顔でケナす人の話ですが、確かに、こちらの価値観を否定しているわけですから、気分を害するのは当たり前です。【画像はクリックで拡大します】

 私には逆の経験があります。
 ある場所で、貴重なビンテージ物を見つけたのです。幸い売り手は、そのことを知らず、安い値を付けています。しめた!と思ったものの生憎手持ちが少なくてホゾを噛みながら眺めていたら、ある方が近づいてきて「よくご存知ですね」とばかりに、それの講釈を始めました。内心、「止めてくれ!」と思いましたが、後の祭りです。次に行ったときにはキッチリ相場通りの値札が付いていました。
 定価のない品物を売る店先では、こういう話をしないのがエチケットなのかも知れません。

 そんなわけで、要は考え方の問題だと思います。
 誉める人が多ければ、価値が出てくるわけですから値段が上がります。
 反対に、ケチを付ける声が大きくなれば評判が落ち、手放される数が増えて、中古価格も安くなります。すなわち、そのモデルを容易に入手できるようになるわけです。

 本当の価値を見分ける審美眼を持っている者にとって、御指摘の状況は本来、コタえられないはずです。欠点を列挙してくださる方には感謝し、内心ほくそ笑みこそすれ、腹を立てることではありません。

 カツミのEB58は、この記事によって元来備わっていた価値が見直され、傍らに置きたい方が続出して、相場価格が上がるはずです。すなわち、以前から可愛い姿に惚れ込んで保有していた皆さん、もっと言うなら、それを最初に公の記事にしてしまった執筆者の勝利です。

 何に価値を見出して、どこまで深く追い求めるかは、我々の根元的な問題だと思います。もちろん、自分自身を世の中に評価して欲しい、あるいは世情一般の価値に依存したいのなら、その物差しを世間に求める必要があります。
 しかし、そうでないなら話は別なのです。

 大昔、阪神タイガースが極めて弱かった頃、その強烈なファンという関西の漫才師、上岡龍太郎の次のような意味の発言が強く印象に残っています。
 「阪神は負け続けろ。トラブルも起こせ。ファンも逃げろ。そうすれば阪神はオレ"だけ"のもの」
 その後、阪神が強くなって常時優勝戦線に顔を出す頃には、彼は近鉄バッファローズの贔屓になっていたと思います。この例は一寸極端すぎますか。

Train8304_2 私自身も、全身全霊を傾けていた上田丸子電鉄に対して興味を失った主原因は、それが"メジャー"となってしまったことですね。
 とれいん誌の1983年4月号通巻第100号で17頁に渡って特集されたときに感じたものは、"嬉しさ"ではなくて、"ショック"でした。子どもが宝物を取り上げられたときのような寂しい気分になったものです。
 丸窓電車や凸電が有名になり、キットはHOに加えてOJモデルまでが発売され、近年はNゲージの完成品まで出回っています。

 ですから、私が知識をほんの少しの持っていて、腕前も平均といったところで、人生の大事な時間を費やして他人と同じことをする必然はない、と……。まあ、みんなと同じ土俵で相撲をとったのでは勝ち目がない、という考えもあるのかも知れませんが、私に"勝ち"とか、"成功"とかの意識は余りありません。ただヒタスラ、私自身の生きている価値を見付けたいとの一心です。

 そして、とれいん誌ブログ「モデラーな日々」でも、天賞堂のGN物にゾッコンの、なんこう編集長が申されています。「要らないという方はご一報ください。状態が良ければ、私が引き取りましょう。捨て値より若干良い価格で……」と。

前回も書きましたが、メールマガジン「トラパシ鉄道模型通信」で当方のブログや掲示板、コレクションなどの詳細な情報をお伝えしていこうと思います。これからもよろしくお願いします。

【追記】カツミのEB58が新発売されたときの広告を、TMS誌旧号に再発見しました。1960年4月号の裏表紙です。

Tms196004p190

 さらに翌5月号p209では、丸々1ページを費やして製品の紹介が組まれていました。
 驚くのは、カプラーがNMRAホーンフック型でシノハラ製というところ。牽引する客車や貨車を心配してしまいます。
 また正面の飾り帯とナンバーが転写マーク、というのはデカールで、「日本向けキットに入ったのは、これが最初」とのことです。
 ライトの前後切替にはセレンではなくて、車軸の回転で接点を切り換える方式が採用されています。これは、植田修伍という方が同誌1955年8月号p327に発表されていたもので、中尾豊氏、赤松輝雄氏なども取り入れられていますから、当時のセレンは使い難かったのでしょう。

Tms195508p327

 判らないのが車体の塗装で、紹介記事には言及が無くて、モノクロ写真は黄銅地に見えます。広告は台車共々塗装されているものの色が不明です。

KTM_EB58

 この最初のキット製品が、手付かずのオリジナルボックス、組立説明書付だったら、大変に貴重なお宝といえます。ただ、真鍮厚板の一体絞りだという車体が割れずに残っているかが問題です。林信之氏所有の初期製品はこれでしょうか。

 ついでに、模型とラジオ誌の別冊から、科学教材社での通信販売価格を記録しておきます。
 まず、1961年版では、写真ではなくて、図面で示されているところが模型少年の心をクスグります。まあ、出版的には写真製版よりイラストの方が安上がりだったのだと勘ぐっておきましょう。

Mora1961

 キットが1,000円と、カツミの広告よりも195円安くなっている点が興味を惹きます。カプラーをベーカーに替えた効果でしょうか。完成品が1,500円で、送料が100円です。
 このときの3線式OゲージのEB58は、キット1,050円、完成品1,250円、送料100円です。

Mora1964 3年後の1964年版では大幅に値上がりです。
 HOがキット(モーター付)で未塗装1,295円、塗装済1,450円、完成品は1,700円、送料150円と、送料まで上がっています。
 Oゲージはキット1,160円、完成品1,250円、送料250円です。

 この値段を見比べて、HOにしようか、Oにしようか、悩んだ子どもや親御さんも多かったことでしょうね。

 OゲージのEB58については、Oゲージの玉手箱をご覧ください。2014-09-08

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