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2010/04/24

京阪ロマンスカーの謎

A History of Keihan Electrailway's equipments called Romance Cars

 とうとうRail No.73の「京阪ロマンスカー史(上)」が出ました。
 掲示板(発言番号1410)でも話題としましたが、聞きしに勝るすごい本です……と、今回は“お先棒をカツぐ”ことにしましょう。【画像はクリックで拡大】

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 目玉は先輩、澤村達也氏のテキストです。同氏は、鉄道ピクトリアル2009年8月臨時増刊号で自身が関われた複巻電動機制御を解説された専門家(掲示板発言番号1011以下で話題)ですから、今までのアマチュアの手になるものとは全く異なる視点となっていて、インタアーバン系の技術進歩に関心のある向きには必読の書といえます。モデラーも「デッカーシステム」ぐらいは知っていなければなりません。

Romanscar1_2

 もちろん、この本で嬉しいのは模型の参考になる資料を満載していることです。聞くところによると、図面は下巻で集中的に掲載されるとのことで、この上巻では写真ですね。特に、川側=電気側の床下で制御装置が判るものが貴重です。

 以前にも説明したとおり、この路線の鴨川-淀川サイドは北側となって、感度の低い昔のフィルムでは難しい条件でした。線路が全くの東西配置だった守口車庫での公式写真は、すべて南の山側=空気側です。
 で、川側の撮れる場所は七条・三条間の鴨川沿いか、木津川・宇治川鉄橋間ぐらいで、この本では、ちゃんとそこで撮影されています。
 なお、七三間(「しちさんかん」と読みます)は現在、地下線となってしまいましたが、時代はデジタルとなって感度が桁違いに向上しています。

 それと、元貴賓車16号が1000形に挟まれて3連で走る姿とか、ピンカーンとした太陽の下を“びわこ”号が木津川鉄橋を渡る風景、天満橋・野田橋間の併用区間を行く600、700、1100形に大八車やポストといった当時の生活感が絡む情景、1900新が側窓カーテンを膨らませて爆走するシーンなど、模型ゴコロを刺激する写真が目白押しです。

 ところで、このロマンスカーの歴史には幾つか不思議なところがあります。
 その際たるものが600形から700形への設計変更です。登場は前者が1927年(昭和2年)で後者が1928年(昭和3年)と1年しか違わないのに、車体長を1,240mmも伸ばして、片運から両運、室内配置を変え、台車も違います。到底、同じ会社の電車とは思えません。

 「んっ! 同じ会社?」ということで、当時は本当に一心同体だった新京阪線のデイ100の新造時期を調べると、1927年と29年です。600形-700形の時期と重なるんですね!
 で、こちらは前後2グループの間に基本的な変更は無いのです。

 全くの想像ですけれど、デイ100と700形が同じ担当者という説はどうでしょうか。
 一つの鉄道に車両の判る技術者がたくさんいるとは思えません。それにしてもデイ100のアウトラインは手馴れています。

 京阪線で修行した若手が、新京阪線建設に当たり転属させられてデイ100を手掛けた。そしてデイ100が終わったので京阪線に呼び戻された。ちょうど車両課長が欧米視察の長期出張に出たので、鬼のいぬ間に基本スペックを変更してしまった……という妄想です。なお、課長出張の話はウィキペディアの「びわこ号」の項に出てきます。
 ことによると、デイ100を転換クロスシート、すなわちロマンスカーにする案があったかもしれません。

Keihan707g

Keihan700d
 700形の外観と車内は一度披露したものです。今回はフォトショップ・エレメンツ7を使って台形変形と明度調整をしてみました。転換クロスシートが一人ずつの分割となっていることが判ります。窓の外に写っているものを知りたかったのですが……。

【追記】とれいん誌編集部による「モデラー日々」に、前里孝さんがこの本についてのウンチクを書かれていました。「大阪砲兵工廠と京阪電車(2010-05-15)」です。2010-05-16

【追記2】京阪ロマンスカー史(下)」の表紙です。

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目次

9.カラーテレビと冷房の時代
10.誉れの1日
11.京都市内地下化と鴨東線開業
12.8000系 そして 次代へ
京阪ロマンスカー 番外編 藤本哲男
    異端のロマンスシート車800型
    波乱万丈の人生を歩んだ普通車近代化の先駆け1650型
カラーアルバム
    最後の京阪木造車 800型 大阪-大津直用連節車 60型
京阪ロマンスカーの周辺あれこれ   澤村達也
1.DICK KEER SYSTEM
2.貴賓車
3.60型“びわこ号”
4.電車の向きと車番/ 5.画期的な台車のテスト
6.“系”という表現/7.大京橋対策/8.特急の枚方停車と9000系

京阪ロマンスカー図面集
京阪ロマンスカーインテリアと形式写真
京阪ロマンスカー車輛表

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コメント

入手してきました。これまであまり発表されてない写真も多いですね。ハトマークをつけた1000型の特急がよいです。車番の位置と重なっているのが残念ですが。

>>あれっ! この鉄道では角板や円板で車番が隠れても良いことに……(笑) ところで、デイ100の竣功写真を見たら、700形と同じ感じですね。ということは、写真屋は一緒ですか。【ワークスK】

投稿: ヤマ | 2010/05/06 00:04

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