現代!「アメリカ鉄道大全」
7月末に発売とのことで、ずっと通勤途上の書店を探していて、やっと入手しました。松尾よしたか、佐々木也寸志共著「アメリカ鉄道大全-アメリカ本土48州鉄道完全ガイド」です。
奥付には「2010年8月10日初版第1刷発行」です。
著者のお二人は"とれいん"誌をはじめとした専門誌で永く御活躍中ですから、内容は折り紙付きというか、集大成とも言うべき、255頁の大冊です。
類書にありがちな翻訳の稚拙さや、不適切な用語などは微塵もありません。全ての写真とテキストがオリジナルで、しかも安心感を持って読める、日本のファンがアメリカの鉄道を楽しむときの“スタンダード”と断言してもよい本です。【画像はクリックで拡大】
内容は、著者たちのこれまでの活躍を知っている我々には自明ですから、私がクドクドと説明するより、出版社のサイトを訪問いただけば全てが済んでしまいます。
佐々木也寸志氏がディーゼル機を中心とした現代の鉄道で、松尾彦孝氏が動態保存蒸機や博物館を受け持つという役割分担の、アメリカの鉄道に関することなら全て、丸ごと、死角無しという体裁となっています。
最新ハイテク機のGE、ES44ACと、EMD、SD70ACeの比較は、私のような交流機に縁の無かった者にも興味を喚起させる内容ですし、中国製の蒸機が6両も走っているとは知りませんでした。
中でも全米の保存鉄道や博物館、テハチャピなどの名所の位置を示した地図が白眉でしょう。
ほんと、この地図を眺めていると、ウズウズしてきます。
もちろん本書では、アムトラックの乗り方とか、レンタカーやタクシーの利用にまで言及されています。しかし、そうはいうものの、言葉に自信のない身には辛いところです。
アムトラック中心の一般人向けではなくて、博物館と模型店を中心に巡るツアーがあればよいのですがね。
ところで一番の心配は、この本が売れるのか?という点です。
アムトラックの路線図とか蒸機車輪配置の解説など、馴染みのない方々向けにもサービスをなされてはいますが、オートマックスだの、SP&Sの700だのと如何せんマニアックです。
まあ、昨今の鉄道ブームですから出版社もその気になったのでしょうが、それは「国粋主義の現れ」という、私が打ち立てた仮説に基づけば、こちらは米英鬼畜の類ですから(笑)
なお、カラーのカバーをめくると、バルカンとかボールドウィンのメーカーズ・プレートが印刷されている辺りは、渋い演出です。
出版社のサイトと、編集者のブログ、さらに佐々木さんの主催されるTrainwave、松尾さんのサイト、掲示板でのやり取りも併せてご覧ください。
【追記】鎌倉淳さんという方の「今日も起きたら旅だった」に本書が取り上げられていました。感想は「乗るための情報が少なすぎる」とのこと。確かにその通りで、主眼は「撮り鉄」ですから‥‥。いうなれば、全くのマイナー分野ですね。2010-08-28
【追記2】本書が2015年2月に電子書籍化されていました(紀伊国屋書店)。値段が1,210円(本体1,100円)は紙版の半値以下ですから、紙版は電子化された頃に売り切れたのでしょう。古書サイトやメルカリを巡ると、1,000~1,600円程度。風雅松本亭の書評はここ。万人向けとは言い難いのですけれど、必要とされる方は確実に存在します。2025-01-02
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