デラウェア&ハドソンはエーボン・ブルー
Two models of the D&H Railway painted in Avon Blue, a GE U23B by Atlas O and a Jordan Spreader by MTH Trains.
たぶん、この本だと思うのです。
だいぶ昔に東京出張の折、洋書店で目にして、その表紙写真の美しさに見とれた記憶があるのです。石積みのアーチ橋をブルーのディーゼル機がくぐっています。Hal Reiser著"Bridge Line Blues, Delaware & Hudson 1976-1986"ですね。
ただし、値札を見て目が飛び出ました。今は古書サイトで見掛けるものの、それだけで手を出せるような対価ではありません。
そうです。モデラーなら本よりも模型で持ちたい……というわけで、イメージに沿うUボート、GEのU23Bを入手しました。アトラスOで、2008年の発売です。
そして当然、カブースが欲しくなるのですけれど、問題はD&Hのそれが、どれもレッドで、機関車とはミスマッチだということです。そんな中で、1本の列車に仕立てられる格好のモデルを見つけました。【画像はクリックで拡大します】
Jordan Spreader、ジョルダン式広幅雪掻き車です。
3線式のMTH製品ということもあって、最初はフェイクだと思いました。こんな手の掛かる塗り分けを事業用車に採用するはずはなくて、案の定、ネット上の写真はどれも赤や黄色の一色塗りです。ところが1枚だけ、見付けたのです。番号も同じ35054です。この鮮やかなスキームで、線の太い玩具臭さが消し飛んでいます。
サンダーライトニング・ストライプの形から考えると、ジョーダン車のエアータンク側に機関車のロングフードを連結するのが絵になりそうです。
ジョルダン車のウィングは手で拡げることができ、開閉の両ポジションで小気味よく止まります。
2線式へのコンバートは、車輪と連結器の交換です。ヘッドライトの点灯は、面倒なので省略し、集電ローラーを0.5mmの銅線を巻いて殺しました。
なお、BNだったらカスケード・グリーン、UPはアーマー・イエロー、PRRはタスカン・レッドなどと、カラーには固有の名前が付けられています。では、この青色を何と呼ぶのかとウォルサーズ・カタログを紐解くと、フロッキルのページに"Avon Blue"と出ていました。
さらに"Avon"を研究社新英和大辞典で引くと見出し語が2つ出ていて、1つは「エイボン、アメリカの化粧品メーカー」で、もう1つが「エーボン、イングランド中部の川……」でした。由来はたぶん後者ですね。
ネットを検索しても、これ以上は判りません。
ところで、このエーボンブルーの機関車がBN線上を走ったことがあります。
元々D&Hは、1967年にAT&SFから4両のPA-2を譲り受け、ウォーボンネットの塗り分けの、赤をブルーに置き換えて旅客列車に使っていたのですが、これを1975年、アイダホ州ボイジーのモリソン・ヌードセン社に送ってPA-4にグレードアップしました。
そして帰路は、アムトラックの営業列車に1両ずつ組み込んで回送しました。なんと、2両をサンフランシスコ・ゼファーの先頭に連結したのです。
"Burlington Northern 1975-76 Annual"が記すところに拠れば、No.16とNo.19がデンバーからシカゴまで、SDP40F重連の前に繋がれました。ちなみに他の2両は機関車と客車の間で、No.17がエンパイアー・ビルダーで、No.18がノースコースト・ハイアワッサだったとのことです。PA-4の写真はLocoPhotos.comをご覧ください。
もちろん私は、これをHOで再現すべく密かに狙っています(笑)
日本の雑誌で"とれいん"誌を探すと、松本謙一氏が連載した「50州あるふぁべっと 模型で綴る黄金時代の米国の汽車」で、1988年10月号ニューヨーク州にGE U30C(OMI/Ajin)、1990年1月号ペンシルベニア州(3)にAlco C628(Oriental/Samhongsa)が見つかりました。ここでは鉄道についての解説が欠けているものの、幸いウィキペディア日本語版に英語版からの翻訳が掲載されています。意外な点は、デラウェア州には路線が無いことです。鉄道は元来、デラウェア川とハドソン川を結んだ運河会社の経営だったのだそうです。
蒸気機関車では40両にも及ぶ4-6-6-4と、貨客両用のデフ付4-8-4で知られていますが、古くは2-8-0を愛用したことでも有名で、その最終のE-7、4両は聞きしに勝る変形機です。
これのスクラッチ・ビルト・モデルが、古い"とれいん"誌1975年6月号に掲載されています。名古屋模型鉄道クラブの伊井正敏さんという方のHOゲージ作品です。手持ちのブラス製品リストにこの型式の記載が無いので、ことによると地上で唯一のモデルという可能性もありです。
このとき、PRRのS-2と、UPの9000も紹介され、後者はTMS誌別冊1998年10月NMRCスペシャルp102に再登場しています。
冒頭に示した写真集の表紙は、元エリー(イリー)鉄道のスタラッカ高架橋Starrucca_Viaductですね。その上を行く列車はコンレール、現在のノーフォーク・サザンです。橋の下のD&H機は3軸台車ですから、U30CかU33Cの辺りです。
Googleマップで検索すれば、高架橋上を行く線路は残っているものの、地上にはレールが見当たりません。アメリカでも「消えた轍」などという類の本が発売されているのでしょうか。
当方の「Oゲージの玉手箱」にU23Bとジョルダン車の写真を幾ばくか追加しておきます。HO scale scrach build steam locomotive デラウエア・アンド・ハドソン鉄道
【追記】arx_ph.Dさんのブログ"Boxcar Red Collection"で、D&Hの概要が語られると共に、キットバッシュされたボックスカーを披露されています。ブルーではありませんが、ヘラルドが大変に魅力的です。2011-05-04
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