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2011/01/29

京阪グリーンを作った頃(3)

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 レイルNo.77の記事でお伝えしたように、1955年前後に京阪は、車両の色彩を内外共にガラリと変えました。
 もちろん塗料の進歩とか、時代の波という面があったでしょうが、車内については、照明の蛍光灯化が大きな要因だったと思います。

 京阪で最初に蛍光灯となった車両は、1953年の新造車1801-02編成です。そして、この車内色にピンクが採用されました。
 それまでの電球色に比較して“青白い”という点を心配したに違いありません。
 なおレイルNo.74のp58にある、1700系2次車新造時から蛍光灯との記述は、錯誤です。【画像はクリックで拡大します】

 調べてみると、1300型も1956年に蛍光灯に改造されています。なんと最初は直流式です。今はインバータ技術が進んで、バッテリーといえども蛍光管は交流で光っていますが、このときは、正真正銘の直流点灯です。

 架線電圧が600Vだから、直列抵抗で降圧した特殊回路だったはずだ、とは元同僚の宮崎文夫氏の弁です。
 点灯開始のキック電圧をリレーのオンで与える方式で、毎日検査(後に3日毎の列車検査)時にプラス・マイナスを切り替えて電極の消耗を両極均等にしていた。500型、600型と1000型等もそうだった、とのことです。また、同時に国立科学博物館のページも御教示いただきました。

 1700型は新造時より電動発電機MGを搭載していたので、蛍光灯化は簡単です。
 1500Vの鉄道は絶縁の関係で、最初からMGではないでしょうか。なお宮崎氏によれば、昔々のMGはDC→DC変換で、単に電圧変換だけとのことです。

 ところで、600Vの京阪が旧型車にMGを導入した切っ掛けは、蛍光灯化のためというよりも、ATSの新設など、安全面だったといいます。これらは直流回路で電源は蓄電池ですけれど、安定的な充電を意図したのでしょう。ただし出力は120Hzで、これは蛍光灯に最適だったのだと思います。
 2000系の2次車以降が400Hzだったのは、主電動機制御用磁気増幅器の軽量化が目的で、このため蛍光灯が寒冷期に点灯し難くなって苦労したそうです。

 商用周波数と同じ60Hzとなったのは、クーラー用の大出力が求められた1960年代後半からです。関東は50Hzですけれど、電車は効率的に有利な60Hzのはずです。

 そういえば、日本で最初に蛍光灯を電車に載せたのは南海で、潜水艦用だったと、どこかで読んだ記憶があるものの、今、その資料が出てきません。勘違いかも‥‥(笑)
 ネット上の知識に拠れば、1938年にアメリカのGEが市販しはじめ、日本での最初は1940年に法隆寺壁画を模写する際の照明だそうです。
 鉄道では1944年に門司駅で、さらに1946年のジュラ電が鉄道車両での国鉄(日本?)初とあります。1953年の京阪は遅れていたかもしれません。
 そして、そろそろ車内灯にもLED照明が普及しだして、カメラのホワイト・バランスも対応を迫られる時代となっています。

 なお以前、8000系の特急用赤黄色を僅かに明るくした話「京阪はカーマインレッドの心」でも書きましたが、人間の目は順応性があって、差は微妙ということの様です。

 宮崎氏からいただいたメールを転載します。

 思い出した事を書いておきます。
 白熱灯時代のグローブ(灯具)はガラス製でした。子ども時代、近鉄1400型乗車時、丸い乳白のグローブを覚えています。
 京阪入社時、客室車内灯は全て蛍光灯で、白熱灯のグローブは1000型の片持灯と乗務員室灯ぐらいでした。

180102a そんな中で、1800系だけは蛍光灯のグローブがガラス製でした。それも乳白色ではなくて、内面に凹凸のある透明の型ガラス(豪華)で、点検時、重たかった事と汚れが取れにくかった事を覚えています。【モノクロ写真は豊田隆氏提供のもののアップ。1810とは中間帯のある点が変わっている】
 1900旧(1810系)は、大きさは1800と同じ大形でしたが、アクリル製でした。新造時からかは判りません。

 蛍光灯のグローブについては保守上の問題から廃止要望が度々出ました。大津線は無くせたものの、京阪線は“品格を重んじて”廃止できませんでした。
 10000系は新しい火災対策をクリアできる材質の樹脂が間に合わず、やむなくグローブレスになりました。
 新3000系はこの問題を解決してグローブが復活し、半間接照明?となりました。(宮崎文夫)

 歴史的な車両についてはレイルNo.74に竣工時の車内写真が網羅されていますから、それらをご覧いただくとして、稼働中のものを撮影してきました。

 まず、冒頭に示した2724号車で、2000系から2200系、2400系に採用されたものです。両側に抜きヒンジが3個ずつ付いています。
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 次は、5000系から2630番台までや冷房改造工事で採用されたタイプです。端部が接着剤で取り付けられています。たぶん、アクリル板のヒート・プレスだと思います。
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 6000系からは端部を含めて一体となりました。射出成型だと思います。防虫対策のアイデアに感心した記憶があります。
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 グローブの無い10000系です。
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 半間接照明の新3000系(3056号車)です。材質が明らかに異なります。Adsc01091

 これ以外に旧3000系とか8000系、さらにDD車のバリエーションがあります。8000系は第2次改装で灯具も変更になっていますから、古い姿を早めに撮影しておかなければなりませんね。

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