京阪グリーンを作った頃(4)
一つは、貨車の設計です。大津線への資材運搬用に台枠と屋根だけの車両を、配属されたばかりの藤田(治英、後に車両部長)さんと共に担当したとのことです。京阪50年史で確認すれば「3022号車」だそうです。同車は122号車に改番の後、大津線の600V終焉まで活躍したことは皆さん、よく御存知の通りです。画像は同史のそれです。
ただし、3022/122号がこの新車体となった年月を知りたいと、1991年刊「鉄道車両発達史シリーズ1」やピクトリアル誌の各号を調べたのですが、不思議なことに書いてありません。
人名録によれば、藤田さんの入社が昭和26/1951年ですから、この年か翌年ということなのでしょう。
もう一つは、台車バネの改良です。流線形の1000型と1100型は、600型や700型に較べて乗り心地が悪かったそうです。それで御自身が担当して、前者のバネを後者に倣う改造を行ったとのことです。
氏の設計係在籍が1951-56年ですから、この間です。
さらに、モノクロ・フィルムを1本、お譲りいただきました。
レイルNo.77に当時のメモを追加していただいた沖中忠順氏から、前里氏を通じて豊田氏に“返却”されてきたもので、旧600型の解体風景です。同じスリーブに御息女の画像があるので、自分の撮影だと判断できるが、撮影したことも、お貸ししたことも全く覚えていないとのことでした。
例のビネガーシンドロームの脅威がありますから、早めに然るべき処理をして、また然るべき部署での保管してもらうことを考えなければなりません。
そのフィルムの中から見繕っていくつかをご覧に入れます。冒頭もこの中の一枚です。
車番は623と読み取れます。レイルNo.74のp67に拠れば、同車の車体更新が昭和36/1961年4月4日ですから、解体作業はこの時分ということになります。
周囲に見える貨車とか、当時の守口車庫風景を伝えていて貴重な写真だと思います。
なお、豊田氏はこの頃、写真に凝っていて、キヤノンを使っていたと申されていました。
【追記】早速、貨車122号車の履歴を西野信一氏に御教示いただきました。車番の引継は2004→2002→3022→122で、これを見る限り新車体への載せ替えは昭和30/1955年ということになります。藤田氏の設計係配属が入社直後ではなかったのかもしれません。2011-01-31
S09/1934-02-09 | 車番変更2004→2002 |
S09/1934-02-21 | 設計認可 |
S09/1934-11-?? | 竣工 |
S20/1945-06-07 | 天満橋駅にて空襲で全焼 |
S21/1946-11-05 | 定検、艤装工事復活 |
S30/1955-11-30 | 車体改造2002台車流用、3012台枠流用、旧車体は廃車 |
S30/1955-12-03 | 大津線へ移籍 |
S34/1959-02-01 | 車番変更2002→3022 |
S45/1970-11-30 | 車番変更3022→122 |
H09/1997-10-12 | 廃車 |
【追記2】M氏にご教示いただいたところによれば、貨車122号については"とれいん"誌1993年9月号に特集記事があって、この電車台帳の内容が公開されているとのことでした。確認するとその通りで、形式図や細部写真まであり、モデラーには至れり尽くせりの内容となっています。2011-02-06
【追記3】600型の解体写真で一つ、書き忘れました。それは、屋根や側板という上回りを全て取り除いた状態で、残った台枠がピシっと真っ直ぐなことです。全鋼製といえども車体の全重量を台枠で負担する設計になっていることが如実に判ります。
これに対して1300型は、台枠単独では撓んだ記憶があります。昭和58/1983年の昇圧に伴う廃車解体作業を見ていたら、側構え(側構造)を取り去ると同時に台枠が弓なりに曲がりました。残念ながら写真は撮っていません。
すなわち、1300型では側構えも車体重量を支える強度部材だったということです。それで、フラットカー151号への車体転用では、魚腹形の補強を行いました。
この600と1300という2つの型式の間で新造された60、700、1000、1200型の中で、どれがターニングポイントだったのか知りたいものです。2011-02-20
【追記4】日本国有鉄道編纂1958年刊「鉄道辞典」下巻p1016に、昭和4年(1929年)に20m車を採用したときから側構造に垂直荷重を引き受けさせた、という記述を見つけました。
京阪600型の製造が昭和2年(1927年)、ですから、符合しますね。さらに700型が昭和3年(1928年)、60型びわこ号が昭和4年(1929年)で、境目はこの間でしょうか。2013-04-18
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