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2011/03/25

ブラス・インポーターのLMBモデルズ

The LMB Models, a brass model importer, and the owner, Leonard M. Blum (rewrote on April 29, 2018)

Lmb_logo1 LMBというのは1960年代に日本からブラス・モデルを輸入したオハイオ州クリーブランドのインポーターです。delphinusさんのブログ「真鍮細工鉄道」で、「Vulcan 0-4-2 tankのメーカーはLMBだけど、箱には"Leonard M. Blum"と表示」と知って調べたところ、面白いことが分かってきました。ここにまとめておきます。【RMC誌2011年4月号を伝える記事からLMB関係を分離かつ再構成しました(2018-04-29)。画像はクリックで拡大します】

[1]全製品リスト

 Ladd出版の"チェックリスト・シリーズ"がほぼ全容を網羅している様です。

Brass Locomotive Checklist 1949-1975 ©1977
a list of LMB Models products

Illustrated Brass Locomotive Checklist 1970-1975 ©1975
Illustrated1975.jpg

Illustrated HO Brass Caboose Checklist 1960-1973, ©1973
HO_Caboose_list.jpg

Traction Checklist ©1970
Traction_list2.jpg

Narrow Gauge Checklist ©1969
Narrow_list1969.jpg

 後年のブラスモデル解説書は最新の"Brass Model Trains, Price & Data Guide, Volume 2 2009 edition"を含めて、すべて並べ順が鉄道名か車輪配置によっています。その意味で、ブランドで集計したこのリストは役に立ちます。なお同プライス&データ・ガイドは、"LMB Models"を、"L.M. Blum Models"と呼び、略称を"LMBLUM"としています。
 RMC誌2011年4月号の記事にはKey Systemの連接車なども列挙されていますが、Ken Kidderと混同しているようです。
 カタログはHOseeker.NETをご覧ください。

 

[2]雑誌掲載リスト

 私が1999年頃に入力したデータですから、抜け落ちがあると思います。

2-8-2 H10a NYC Train 78.02 49 Tetsudo
2-8-2 O1a CB&Q Train 79.06 71 KMT
2-10-4 E6 DM&IR Train 87.10 41 KMT
2-10-4 E7 DM&IR Train 80.08 101 KMT
2-8-8-8-2 T. Kubota Erie TMS 75.05 70 KTM
2-8-8-8-2   Erie TMS 74.11 43 KTM
2-8-8-8-2   Erie Train 76.12 61 KTM
2-8-8-8-2 P1 Erie Train 77.09 50 KTM
4-6-2 S2a CB&Q Train 87.02 70 KMT
4-6-4 J3a-20th C. NYC Train 82.08 79 Tetsudo
4-6-4 J3a-20th C. NYC Train 83.04 84 Tetsudo
4-8-0 M N&W Train 89.03 66 KMT
4-8-2 L4b NYC Train 83.04 85 KTM
4-8-4 S1b NYC Train 83.04 88 KTM
Caboose NE 7 CB&Q Train 82.05 72 KMT
2-6-2T O gauge   RMC 63.07 20 KK/Japan

 次は、とれいん誌1982年8月号の流線型特集に登場するNYCのドレイファス・ハドソン。D&GRNコレクションの1両です。

Lmbtetsudonyc20

 

[3]歴史

 MR誌をたどってみます。
 最初は1935年12月号p344で、"Leonard M. Blum"という名でスタンダードゲージの線路を売るコメントが出ています。1943年5月号(p249)からは独立した広告となりました。

Mr194305p249

 1949年4月号から"The Hobby House Inc."を併記して徐々にこちらの文字が大きくなっていき、同年12月号はなんと裏表紙裏1頁大です。
MR1949-12p99.jpg

 自社発売のブラスモデルは1959年7月号p8が最初です。ここにバルカン0-4-2Tが登場します。そして同年11月号p67に"LMB Models"の名が現われます。
MR1959-11p67.jpg

 20年後の1981年2月号p4には訃報です。前年の10月、弁護士(practicing attorney)だった。クリーブランドの模型店"Blum's Hobby House"を経営し、"LMB Models"の名で日本からブラスモデルを輸入。そして"Hobby Industry Association of America"の設立に助力とのことです。

 その後、散発的に1990年3月号(p175)までLMBの広告が出ます。在庫一掃か、遺産整理なのでしょう。1991年3月号p13には、同店で働いた経験のあるKenneth D. Stroup氏が亡くなったと出ています。

 なお、RMC誌に1頁または2頁見開きでLMBと模型店が広告を出し続けたようです。全冊を保有していないので今のところ全容をつかめていません。2018-12-30

 

[4]バルカン0-4-2Tのこと

 同社最初期に発売されたこのタンク機が難物です。アブノーマルな機種にもかかわらず、1959-1960年頃に、ブラスが2ブランドと、プラスチックが1ブランドの、合計3種が次々と発売されたのです。

 まず、LMB(Hobby House)です。MR誌1960年1月号p12
LMB Models Vulcan 0-4-2 tank engine ad 1960-01p12

 次はGem/Olympiaです。MR誌1960年3月号p13
Mr196003p13a

 アサーンは1960年12月号p5が初出です。Tony Cook氏の画像は1961年3月号p53でしょう。

Athearn Little Monster
Page 5 of the MR Dec. 1960 issue

Athearn_vulcan_042t
Page 105-106 of the Standard Guide to Athearn Model Trains

  広告の時期と値段は、LMBが1959年4月号-1961年4月号(19.95ドル)で、Gem/Orympiaが1959年6月号(19.95ドル)-1970年7月号(32.95ドル)です。キャブのナンバー下のレタリングがわずかに異なるものの、画像とスペックを見比べて、両者は同じブツとみて間違いはないと考えます。えっ! "hand-lettered"!
 アサーンも1960-1964年(4.95-6.95ドル)ですから、時期が完全に重なります。不思議です。

 次の問題はレタリングの"North-West"と、"N-W R.R."です。
 これについて探すと、1963年1月号p33のコラム"At the Throttle"にリンH.ウエスコット編集長が書いていました。「何年か前、まだ図面を上手に描画してくれる人物を見いだせなかった頃、私がMR誌用にいくつかの図面を描いた。そして、バルカン0-4-2Tには私が所有する模型鉄道のヘラルドを付け加えた。それが今、アサーンと日本人がこの機関車をそのまま製品化してくれた」てな調子です。
 この文章自体はレイアウトの鉄道名にまつわる話題で、ジョン・アレンの"Gorre & Daphetid"はシャレだけれど多くの読者は気付いていないそうです。どなたかわかりますか?

 タンク機の図面は元々1937年2月号p48に掲載されました。扇形の中の文字はNとWです。
MR1937-02p48.png

 これが図面集"The Model Railroader Cycropedia, The Book of Plans"(1950年 第6版ではp81)に収録されてメーカーの目にとまったと推測されます。ただ、このレタリング、1937年ならいざ知らず、1950年刊の図面集には何らかの断りを付すべきですよね。

 Lenahan's Locomotive Lexicon (3rd edition Vol.2 p51)は次で、以上の状況と合致します。アサーンには肝心の北西を示すマーキングがありません。
Lenahanslexicon31p51

 ちなみに似たようなプロトタイプを1950年代初め(1948年?)にGreat Western Model LocomotivesというメーカーがOスケールでブラス製品化しています(RMC誌1966年11月号p33)。この図に依ったかは疑問です。
RMC1966-11p33b.jpg

 次はヤフオク!に出品された本モデルと思しきジャンク品。車輪は片絶で、動輪径 約27.8㎜、従輪径 約17.2㎜という。2022-07-05
Iimg1198x8981656814501idkluk15-2
Mr194805p366b
MR誌1948年5月号p366

【追記1】Leonard M. Blum氏の写真を発見しました。RMC誌の社主だったHarald H. Carstens氏が1999年に書いた"150 Years of Model Trains"というハードカバーの138頁です。2020-03-01
img712.jpg

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コメント

こんにちは。多大なご苦労をおかけしてしまったようで申し訳ありません。おかげで、
LMBの歴史、0-4-2タンクの正体、N-W R.R.は何だったのかといった謎が一気に氷解いたしました。当時の一次史料(ここではMR誌)にあたるのは、学問の基礎ですね。本当にありがとうございました。篤く御礼申し上げます。

「Gorre & Daphetid"はシャレだけれど」の意味ですが、私は、何となく「本当の意味はgory & defeated(グロ&誘惑への敗北)との意味なんだ」と思っていました。当たり前すぎる解釈でしょうか。

>>やはり“元箱”は大事ですね。ホント、かさ張って捨てたくなるのですけれど……(笑) これからも生の情報をお願いいたします【ワークスK】

投稿: delphinus | 2018/04/28 19:02

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