ブラス・インポーターのLMBモデルズ
The LMB Models, a brass model importer, and the owner, Leonard M. Blum (rewrote on April 29, 2018)
LMBというのは1960年代に日本からブラス・モデルを輸入したオハイオ州クリーブランドのインポーターです。delphinusさんのブログ「真鍮細工鉄道」で、「Vulcan 0-4-2 tankのメーカーはLMBだけど、箱には"Leonard M. Blum"と表示」と知って調べたところ、面白いことが分かってきました。ここにまとめておきます。【RMC誌2011年4月号を伝える記事からLMB関係を分離かつ再構成しました(2018-04-29)。画像はクリックで拡大します】
[1]全製品リスト
Ladd出版の"チェックリスト・シリーズ"がほぼ全容を網羅している様です。
Brass Locomotive Checklist 1949-1975 ©1977
Illustrated Brass Locomotive Checklist 1970-1975 ©1975
Illustrated HO Brass Caboose Checklist 1960-1973, ©1973
後年のブラスモデル解説書は最新の"Brass Model Trains, Price & Data Guide, Volume 2 2009 edition"を含めて、すべて並べ順が鉄道名か車輪配置によっています。その意味で、ブランドで集計したこのリストは役に立ちます。なお同プライス&データ・ガイドは、"LMB Models"を、"L.M. Blum Models"と呼び、略称を"LMBLUM"としています。
RMC誌2011年4月号の記事にはKey Systemの連接車なども列挙されていますが、Ken Kidderと混同しているようです。
カタログはHOseeker.NETをご覧ください。
[2]雑誌掲載リスト
私が1999年頃に入力したデータですから、抜け落ちがあると思います。
2-8-2 | H10a | NYC | Train | 78.02 | 49 | Tetsudo |
2-8-2 | O1a | CB&Q | Train | 79.06 | 71 | KMT |
2-10-4 | E6 | DM&IR | Train | 87.10 | 41 | KMT |
2-10-4 | E7 | DM&IR | Train | 80.08 | 101 | KMT |
2-8-8-8-2 | T. Kubota | Erie | TMS | 75.05 | 70 | KTM |
2-8-8-8-2 | Erie | TMS | 74.11 | 43 | KTM | |
2-8-8-8-2 | Erie | Train | 76.12 | 61 | KTM | |
2-8-8-8-2 | P1 | Erie | Train | 77.09 | 50 | KTM |
4-6-2 | S2a | CB&Q | Train | 87.02 | 70 | KMT |
4-6-4 | J3a-20th C. | NYC | Train | 82.08 | 79 | Tetsudo |
4-6-4 | J3a-20th C. | NYC | Train | 83.04 | 84 | Tetsudo |
4-8-0 | M | N&W | Train | 89.03 | 66 | KMT |
4-8-2 | L4b | NYC | Train | 83.04 | 85 | KTM |
4-8-4 | S1b | NYC | Train | 83.04 | 88 | KTM |
Caboose | NE 7 | CB&Q | Train | 82.05 | 72 | KMT |
2-6-2T | O gauge | RMC | 63.07 | 20 | KK/Japan |
次は、とれいん誌1982年8月号の流線型特集に登場するNYCのドレイファス・ハドソン。D&GRNコレクションの1両です。
[3]歴史
MR誌をたどってみます。
最初は1935年12月号p344で、"Leonard M. Blum"という名でスタンダードゲージの線路を売るコメントが出ています。1943年5月号(p249)からは独立した広告となりました。
1949年4月号から"The Hobby House Inc."を併記して徐々にこちらの文字が大きくなっていき、同年12月号はなんと裏表紙裏1頁大です。
自社発売のブラスモデルは1959年7月号p8が最初です。ここにバルカン0-4-2Tが登場します。そして同年11月号p67に"LMB Models"の名が現われます。
20年後の1981年2月号p4には訃報です。前年の10月、弁護士(practicing attorney)だった。クリーブランドの模型店"Blum's Hobby House"を経営し、"LMB Models"の名で日本からブラスモデルを輸入。そして"Hobby Industry Association of America"の設立に助力とのことです。
その後、散発的に1990年3月号(p175)までLMBの広告が出ます。在庫一掃か、遺産整理なのでしょう。1991年3月号p13には、同店で働いた経験のあるKenneth D. Stroup氏が亡くなったと出ています。
なお、RMC誌に1頁または2頁見開きでLMBと模型店が広告を出し続けたようです。全冊を保有していないので今のところ全容をつかめていません。2018-12-30
[4]バルカン0-4-2Tのこと
同社最初期に発売されたこのタンク機が難物です。アブノーマルな機種にもかかわらず、1959-1960年頃に、ブラスが2ブランドと、プラスチックが1ブランドの、合計3種が次々と発売されたのです。
まず、LMB(Hobby House)です。MR誌1960年1月号p12
次はGem/Olympiaです。MR誌1960年3月号p13
アサーンは1960年12月号p5が初出です。Tony Cook氏の画像は1961年3月号p53でしょう。
Page 5 of the MR Dec. 1960 issue
Page 105-106 of the Standard Guide to Athearn Model Trains
広告の時期と値段は、LMBが1959年4月号-1961年4月号(19.95ドル)で、Gem/Orympiaが1959年6月号(19.95ドル)-1970年7月号(32.95ドル)です。キャブのナンバー下のレタリングがわずかに異なるものの、画像とスペックを見比べて、両者は同じブツとみて間違いはないと考えます。えっ! "hand-lettered"!
アサーンも1960-1964年(4.95-6.95ドル)ですから、時期が完全に重なります。不思議です。
次の問題はレタリングの"North-West"と、"N-W R.R."です。
これについて探すと、1963年1月号p33のコラム"At the Throttle"にリンH.ウエスコット編集長が書いていました。「何年か前、まだ図面を上手に描画してくれる人物を見いだせなかった頃、私がMR誌用にいくつかの図面を描いた。そして、バルカン0-4-2Tには私が所有する模型鉄道のヘラルドを付け加えた。それが今、アサーンと日本人がこの機関車をそのまま製品化してくれた」てな調子です。
この文章自体はレイアウトの鉄道名にまつわる話題で、ジョン・アレンの"Gorre & Daphetid"はシャレだけれど多くの読者は気付いていないそうです。どなたかわかりますか?
タンク機の図面は元々1937年2月号p48に掲載されました。扇形の中の文字はNとWです。
これが図面集"The Model Railroader Cycropedia, The Book of Plans"(1950年 第6版ではp81)に収録されてメーカーの目にとまったと推測されます。ただ、このレタリング、1937年ならいざ知らず、1950年刊の図面集には何らかの断りを付すべきですよね。
Lenahan's Locomotive Lexicon (3rd edition Vol.2 p51)は次で、以上の状況と合致します。アサーンには肝心の北西を示すマーキングがありません。
ちなみに似たようなプロトタイプを1950年代初め(1948年?)にGreat Western Model LocomotivesというメーカーがOスケールでブラス製品化しています(RMC誌1966年11月号p33)。この図に依ったかは疑問です。
【追記1】Leonard M. Blum氏の写真を発見しました。RMC誌の社主だったHarald H. Carstens氏が1999年に書いた"150 Years of Model Trains"というハードカバーの138頁です。2020-03-01
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コメント
こんにちは。多大なご苦労をおかけしてしまったようで申し訳ありません。おかげで、
LMBの歴史、0-4-2タンクの正体、N-W R.R.は何だったのかといった謎が一気に氷解いたしました。当時の一次史料(ここではMR誌)にあたるのは、学問の基礎ですね。本当にありがとうございました。篤く御礼申し上げます。
「Gorre & Daphetid"はシャレだけれど」の意味ですが、私は、何となく「本当の意味はgory & defeated(グロ&誘惑への敗北)との意味なんだ」と思っていました。当たり前すぎる解釈でしょうか。
>>やはり“元箱”は大事ですね。ホント、かさ張って捨てたくなるのですけれど……(笑) これからも生の情報をお願いいたします【ワークスK】
投稿: delphinus | 2018/04/28 19:02