ダブルスリップのポイントマシン
この開通ルートは、確かに感覚的には判り難いところがあります。私も悩んだ一人ですが、何とか整理できましたので、それを披露してみたいと存じます。ベテランの皆さんには何でもないことだと思います。なお、ポイントの写真は、鉄道ホビダスに示されているシノハラ製品のそれを使わせていただきました。
1.両渡り線の場合
まず、両渡り線(ダブル・クロッシング)を見てください。こちらの方が理解し易い構造です。
4方向から来た線路を、それぞれ2方向に分岐させるという機能ですから、ダブルスリップと同一のはずです。
これを動かすポイントマシンは、この画だと4つです。
ところが、よく考えると、ルートのケースは、2線が共に並行の場合と、互いに渡りの場合の、2つしかないことが判ります。
すなわち、この4つのポイントは、1つのマシンで動かせることになります。片渡り線(シングル・クロッシング)では明白ですが、両渡り線でも同じです。もちろん、マシン自体に十分な力と、リンク機構が必要です。例えば、次のようなものです。
2.ダブルスリップの場合
これに対して市販のダブルスリップは、ポイントマシンを2つ付けるようになっています。
まず次の図で、右のマシンを緑矢印の方向に動かしたとします。左のマシンは一先ず無視します。
先端軌条(トングレール)も同じ方向に動いて、赤い線で示したルートが可能となります。右上と右下から左下へのルートです。
さらに、マシンを反対方向に動かすと、こんどは右上と右下から左上へのルートができます。
これは、右のマシンを動作させると、左寄のルートが決まる、ということで、ここが"ミソ"です。
よって、この2つのマシンの組み合わせで、1つだけのルートができます。2×2ですから、全部で4つのルートです。
以上のことからダブルスリップは、2つのY分岐を突き合わせたものと等価ということができます。異なる点は、Yだと、分岐の方向とマシンの位置関係が同じであるのに、ダブルスリップでは反対側のマシンが対応するというところです。
ここが一番、理解し難いところだと思います。
続いて湧き上がる疑問は、どうして、両渡り線がマシンを1つにできて、ダブルスリップには2つ必要なのか?です。
その答えは、片側の先端軌条2組が近接していて、同一方向に動かさざるをえないことです。
裏技は、先端軌条をスプリング式として、背行による割り出しを可能とすることですが、ちょっと怖いですね。
Y分岐の突合せで考えていただくと、理解していただき易いと思います。次は2つを逆方向のポジションで描いていますが、同一方向のポジションでもOKです。
なお、ダブルスリップには、先端軌条の位置がフロッグの外となるタイプがあって、これは先端軌条2組を逆方向に動かす構造となりますから、マシン1つが可能となります。いずれにしろ、まあ、理屈の上の話です。
3.ダブルスリップが隣接の場合
ところで、小菅氏のレイアウトでは冒頭の写真のように、2つのダブルスリップが隣接しています。
ここに合計で4個のポイントマシンが使われていますが、これは3個にできます。
ルートのケースを洗い出してみたのが、右の図です。8つしかありません。8は2の3乗ですから、マシンの数は原理的に3個で十分です。片渡り線ではポイントを1個にできることで、理解していただけると思います。
ただ、小菅氏の場合では連動させる2組の先端軌条が位置的に離れているので、リンク構造は複雑になります。マシンを4個として、スイッチだけは2個を共用して、3個とする方法はあります。
古いソレノイド式のポイントマシンだったら、軌道ボードでは左のようにタッチボタンを配置します。2個の緑印は並列です。
モーター式の場合は、逆回転させるために2極双投スイッチとしますから、込み入って配線が大変です。また、開通ルートを示すレバーの向きも、倒れる角度が僅かだし、実態から乖離する場合もあるので、判り辛いことになります。
ここでは水色のスイッチが省略できますが、操作には慣れが必要でしょうね。
私自身には昔の僅かな経験しかありません。さらに、ギャップやフィーダーの付け方などに難しい面があるはずで、その辺りも是非、御教示いただきたいと存じます。
併せて、「ダブルスリップの思い出」と、「ダブルスリップの魅力」、それに実物については「ダブルスリップのあれこれ」もご覧ください。
【追記】コメントを頂いたように、ヤマさんから分岐器動作図表案を送っていただきました。何か実物の連動図表を読むような凄い内容です。やはり、判りやすい操作性を得るためには十分な検討が必要ですね。単純な作用の組み合わせなので、一つ一つを順番に考えれば難しくはないとは思います。
なお、小菅氏のポイントマシンはフルグレックス/レマコ製のモータ式で、転換方法は極性転換ではなくて、交流電源を用い、1極双投スイッチの両端端子にダイオードを接続し、半波整流で極性を変えているとのことです。ダイオードの値段さえ気にしなければ、配線が単純となり接点の寿命を延ばせることになりますか。2011-04-10
【追記2】northerns484さんから次のメールを頂戴しました。2011-04-10
ダブルスリップの記事、興味深く読ませていただきました。
わかりやすい図解が良いですね。また、「Yだと、分岐の方向とマシンの位置関係が同じであるのに、ダブルスリップでは反対側のマシンが対応する」というのに妙に納得しました。
silicon valley linesにも、ダブルスリップが1箇所あって、私のいた時はまだ手動で操作していました。「こっちでいいはずだ」と思って動かしても実は反対で、列車を脱線させるというのを何回かやりました。斜め上から見ていたせいかもしれませんが、ダブルスリップは、視覚的にみても、どっちを向いているのかわかりにくい、という印象がありました。
さて、以下はこのダブルスリップが現在も残っている、という仮定のもとで話を進めますが、Tortoiseを使って動かすようになったようです。
私の記憶が正しければ、次の写真【リンク切れ2011-08-03確認】の下のところだと思います。
少しデフォルメして下記に示します。
●が分岐を選択するスイッチ、
◎がどちらを向いているかの2色のLEDで、本来あるべき方向に分岐しているときは緑に、反対側の方向に分岐しているときは黄色が光るようになっていたと思います。
分岐の方向は、専門用語があったと思いますが、あいにく覚えていません。すいません。
パネルの白の線が本来あるべき方向、だったはずです。
黄色が反対側の方向だったと思います。
青い線がありますが、これは支線(Branch Line)なので、
また別の意味があります。念のため。
このパネルの操作ですが、
●に①、②、③、④という番号を振ると
左上から右下に行くときは、①と④とを押す、
左下から右上に行くときは、③と②とを押す、
ということを行います。
これを見ると、ダブルスリップが2つのY分岐に
等価だということがわかります。
更に①は、その先にある分岐も制御しています。
①を押すと、左上からダブルスリップにへ入ることができるようになっているだけでなく、左下から回り込んでいる白いMainlineから、ダブルスリップのSidingへの分岐が連動するようになっています。
このパネル、慣れるのに少し時間を要したのですが、一旦慣れるととても使いやすく、よく考えられているなぁと思った記憶があります。
なにかご参考になる点があれば、幸いです。
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コメント
ダブルスリップの解析ありがとうございます。
実は小菅氏からフログ部の無電区間を短くするため、△部への給電方法を考えてほしいという依頼を受けていました。小菅氏はポイント単体で4方向の制御を考えておられたようで、結局個別のスイッチをつけられたようです。進路制御とした場合、進行できない組み合わせもできてしまうので、できれば連動を組んでほしかったのですが、今のところ本線との渡り部分のみになっています。
私の提案したものは別便で送らせていただきます。
投稿: ヤマ | 2011/04/09 22:25