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2011/05/03

遊園地の汽車の100年の物語

A 100-year story of an amusement park train in Venice, Calif.

Venice Miniature Railway

 前回、京都の古い絵葉書を紹介しましたが、実は一緒にもう一枚、購入していました。こちらは、どう見ても遊園地の汽車です。
 消印が1917年ということは大正6年、煙が如何にも描き加えている風だから、機関車の動力は内燃機関か電気モーターだろうか。まさか蒸気ということは‥‥というくらいの軽い気持ちで、アメリカの鉄道趣味掲示板であるトレインオーダーズ・コムへ質問してみたのです。

 で、すかさず付いた回答に「今でも走っている」とあって、驚かないわけはありません。【一部の画像はクリックで拡大します】

 絵葉書に示されているカリフォルニア州のヴェニスは、ロサンゼルス西部の観光スポットで、ウィキペディア日本語版を開けば、1905年にイタリアのヴェニスを模して「ヴェニス・オブ・アメリカ」がオープンし、ミニチュアの鉄道などを用意したとあって、ここまでは納得していたことです。

 コメントに曰く、今でもカリフォルニア州のロスガトス(Los Gatos, サンフランシスコの南50マイル)で走っている。Billy Jonesという人物がサンフランシスコのスクラップ置き場から救い出して買い取り、農場に線路を敷いて走らせていた。
 Billy Jonesの機関車がポストカードの機関車だ。ただし、テンダーが替えられている‥‥ということで、案内されたサイトに行ってみました。

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 その名は"Billy Jones Wildcat Railroad"で、確かにこの機関車です。2010年には11万5千人が乗車した施設で、世界的に知られているのだそうです。詳細はサイトをご覧いただくとして、ここでは経緯をザッと読み解いてみます。

 この機関車は1905年、ロサンゼルスのJohnson Macine WorksでVenice Miniature Railwayの2号機として製造された。サザン・パシフィック鉄道の土木技師、John J. Coitの設計になり、2-6-2のプレーリーで重量約4トン、縮尺1/3の18インチ(457㎜)ゲージでワルシャート式のバルブギアを備えていた。

 一方、Billy Jonesは1884年の生まれで、13歳でSPに未熟練労働者として就職し、17歳で火夫、21歳で機関士となり、1950年のリタイアまでその職にあった。

 その間の1939年に、この機関車をサンフランシスコで見付けて買い取った。日本向けの屑鉄として船に積み込まれようとしていた数時間前だった。
 そして1943年に2人の息子を兵役で失い、その傷心を癒すため、勤務の合間に同僚の助けを借りて鉄道を建設し始めた。線路はそれほど長くはなく、1本の線路を往復するだけのものだった。

 1950年に退職してからは地域活動に貢献していたこともあって、1956年3月22日の火災で施設や機関車が大きなダメージを受けたものの、地元の子どもたちの寄付やSPからの部品提供などを受けて、1か月という短期間で再開に漕ぎつけることができた。

 1968年に彼が83歳で亡くなった後、ロスガトス市議会への働きかけにより、非営利団体が結成されて遺産が買い取られ、Oak Meadow Parkの一角にボランティア活動による新たな鉄道が建設され、1970年6月26日には新生なったビリー・ジョーンズ・ワイルドキャット鉄道が運行を開始した。

 ということで、Google Mapを覗くと、ターンテーブルとエンドレス、リバース・カーブなどを確認することができます。線路はこの写真から東側、すなわち右側へ伸びています。
 たった一人の思いがこれほどまでの地域活動に発展するとは素晴らしいことですね。


大きな地図で見る

 またヴェニス・ミニチュア鉄道の他の機関車についてもトレインオーダーズ・コムに情報がありました。7年前のログです。

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 1号機はDon McCoyが1930年代に入手して修理し、カリフォルニア州ピコリベラ(ピコリビエラPico Rivera)のStreamLand Parkで1960年代まで展示運行した。1972年から78年まではWhittier Narrows Recreational AreaのLegg Lakeで、1マイルの周回軌道上を走らせた(写真)。その後はMcCoyの一族がEl Monteで保管している。2001年ごろにワイルドキャット鉄道とウォルト・ディズニー会社から打診があったが、そのままとなっているはず。
 なお同じJohn Coitが設計した2-6-0、1903号機はEastlake Park Scenic Railwayで活躍し、現在はワイルドキャット鉄道が保有している‥‥という状況だと思います。

 ところで、絵葉書の裏面を読み解こうとしたのですけれど、“達筆”すぎますね。徳島市の中村某氏を"Goerge"と呼んで、「貴方が喜びそうなカードを送る」てな調子でしょうか。

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【追記】アメリカから取り寄せた古書、Frederic Shaw著"Little Railways of the World"1958年刊に、この機関車についての記述を見つけました。従台車を外して2-6-0となった姿の写真もあります。58年といえば未だBilly Jones氏が存命中のことで、結構、知られていた様です。2011-11-30

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【追記】YouTube動画「1890‐1900年代の素敵なニューヨークのカラー」に次の彩色写真を見つけました。郊外電車で出かける遊園地として有名なコニーアイランドです.2024-08-07

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コメント

Los Gatosですか。San Joseの隣なので行き易いところなのですが、知りませんでした。今度は是非…。

2-6-2という車輪配置は意外と少ないのですね。大型機にはないので、支線、ナロウゲージにしかないですね。私が見たのはEBTくらいのものです。

Steam Locomotive dot Comにもこの機関車のことは出ていませんが、15インチのRedwood Valley RRの機関車のことは出ています。これもOaklandの近くですから行き易そうなところです。

>>ご興味を惹かれたようで何よりです。電気や内燃機関が不自由だった時代の遊園地の汽車は当然「蒸気」のはずで、「NYC鉄道スリーナイン"999"」に出てきたように、アメリカのみならず南アフリカやタイにまで存在したというのですけれど、それほど残っていないということは使い捨てだったのでしょうか。ディズニーランドは2'6"ナローですし‥‥【ワークスK】

投稿: dda40x | 2011/05/07 20:21

米国西海岸には他にSwanton Pacific Railroad(19in.ゲージ)なる遊園地汽車もあるらしいです。
1915年のサンフランシスコ博覧会で使った19in.ゲージの4-6-2を遊園地に持ってきたのが半端なゲージの始まりらしいです。
(Billy Jones Wildcatは標準的な18in.ゲージ)
(資料は"Live Steam",2000年5,6月合併号)

英国では実物機関車からOOゲージ機関車にまで携わったHenry Greenly技師(1947没)が、企業として遊園地機関車を作りました。英国のみならず外国にも輸出されたはず。
GreenlyはRavenglass and Eskadale鉄道やRomney Hythe鉄道の大規模豆機関車(?)にも携わってます。
Ravenglass鉄道の機関車は実物を含めて英国最初のポペット弁機関車と言われてます。

>>情報をありがとうございます。検索するとここですね。ロムニー鉄道にしろ、下手な軽便鉄道より馬力が大きいような‥‥【ワークスK】

投稿: 鈴木光太郎 | 2011/05/08 05:33

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