寺澤和雄氏のMRコンテスト第2位入賞記念に
そういえば昨年秋に、この寺澤和雄氏から頼まれてMM誌をスキャンして送付したことがありました。1999年6月号に載っていたKCS鉄道の同様の方式のサンドタワーの記事です。聞けば、コンクール応募票を書くために各部の呼び名が知りたかったという話です。
これは何か、お祝いをしなければ‥‥ということで、記念のデカールを作ることとしました。
図案は、MR誌のエンブレムを拝借して、文字色もマルーンで統一すれば、記事のイメージをそのまま写し取れます。
ただし、これだと、常用しているアルプス電気のドライ・プリンターは、色再現性の面で不適です。ならば、インクジェット用デカール用紙を使えばどうでしょう。まあ、一度やってみたかった! というのが本音ですね。
ドライ・プリンターの方の中間色表現は、"JAM 2000"記念車をご覧ください。
さて、インクジェット用のデカール・フィルムには透明と白があります。インクに隠蔽力が無くて透けるので、前者でも下地を白とする必要があり、また黄変も怖いので、今回は後者の白フィルムを用いました。
すなわち貼付する側面が白でサマになり、凸凹の少ない車両といえば、プラグドア式のインシュレイテッド(断熱式)ボックスカーです。
それで、5月18日にお伝えしたアサーンの"50' Small Plug Door Boxcar"を持ち出してきたというわけです。もちろん、アンデコ=未塗装の手持ちが都合よくあるわけが無くて、塗装済の中から文字の少ない、レディング鉄道の1両をピックアップしました。
また、側面は白でも、屋根と妻の3面を濃い色とした方がアメリカ型的な感じが出ます。レタリングに近い色ということで、タミヤのダルレッド(品番TS-33)に白羽の矢を立てました。
デカールの図案作成ソフトは、ウィンドウズ添付の「ペイント」です。コツは保存ファイル形式にPNGを選ぶことで、JPEG形式のような、保存によるデータの劣化が無いので、安心して作図作業を中断できます。
大きさや色はトライ・アンド・エラーです。細かな標記は一応、タネ車に合わせたものの、年代設定などは、いい加減です。紙に印刷し、切って置いて検討しました。
この画像が、印刷したファイルそのものです。大きさは印刷時に調整しています。たぶん、Oゲージでも十分な精細度だと思います。
使ったデカール用紙は、ケイトレーディング社の「ミラクル・デカール ホワイトKT-002WH」です。
印刷前に、指定の「デカールベーススプレー KT-101BS」を吹くと「インクのにじみを強力に抑える」とのことで、それに従いました。
プリントは、写真モードで行っています。
その後、クリア塗料を“数回”、オーバーコートします。ここが肝心です。私は、A4判の大きさ1枚に、写真に示すグリーンマックスの缶スプレーを1本、使い切りました。
あとは市販デカールと同じように切り出して、水貼りします。
このときの留意点は、プリンターのインクが水に溶けることです。水に触れないようにしなければなりません。ここが弱点です。
ですから、切り口が印刷部分に掛からないように切り出す。水で濡らすのは台紙だけ。凹凸に密着させるときに膜を破らない。柔軟剤はクリア塗料の上を撫でる程度で、などという細心の注意が要ります。
この辺りの苦心談を披露されている山下満さんという方のサイト【2012-08-11リンク切れ確認】をご一読ください。とれいん誌2008年8月号p50に掲載された「西武鉄道ラッピング恐竜電車」の顛末が詳細に語られています。
妻面上部の車番は白抜き文字です。印刷インク部分を切らざるを得ないので、失敗に備えて余分に印刷しています。コツは、台紙だけを湿らせて30秒ほど経ったらフィルムを剥がし、所定の場所に移すことです。白フィルムの切り口は目立たず、美しい白文字が現れます。
塗料とインクのカラーマッチングは、この程度なら合格でしょう。プリンターによって色調が異なる可能性はあります。私はエプソンのEP-802Aです。
書き忘れましたが、オーバーコート・スプレーが台紙の裏面に回り込むと、台紙が水を弾いてしまいます。万一そうなった場合は、一部か切り口に水を浸み込ませて、僅かでも剥がします。そして、フィルムと台紙が分かれるその隙間に一滴ずつ垂らせば、ユックリと剥がしていくことができます。
【追記:デカール・ベース・スプレーが裏面に回り込んだ結果、印刷のとき、プリンターの給紙ローラーが滑ってしまい、用紙を送れない現象が起こりました。少し湿ったティッシュでサッと拭って事なきを得ました。2012-10-06】
また、気泡が入ったときは、そっとメクって、GSIクレオスの「スライドマーク軟化・接着剤、Mr.マークセッター」をさっと塗り、ジワっと指先でフィルムを押し付けます。
この技は、貼り間違えたときや、貼付面を指で触って糊が落ちたときにも使えます。フィルム自体は比較的厚くて丈夫です。
ということで、このデカールは初めてだったにもかかわらず、1か所も無駄にしないで仕上げることができました。
最後は、全体をオーバーコートします。
写真を拡大して見ていただくと、フィルムの厚さが目立つところがあります。「ホワイト KT-002WH」ではなくて、「クリア KT-001CL」だと“マシ”でしょうか。効果のほどは知れませんが、オーバーコートに「UVカット」を謳っているものもあります。
なお、キットのカプラーや床下周りの改造については、前述の「アサーン青箱の50’ボックスカー・キットを組む」という記事をご覧ください。
もし、興味をお持ちの方がおられましたら、送料だけ御負担いただくということで、デカール1両分をお分けします。私のプロフィール・ページからメールを御送信願います(配布は終了しました)。
また、デカールの添付位置はHOガラクタボックスに真横写真を用意しました。
【追記1】このデカールの見事な使用例を新宮琢哉さんに御披露いただきました。ここです。2012-08-11
【追記2】残してあったデカール単体の表面層にヒビ割れが発生していました。その上にさらにオーバーコートを掛けて、自分用の分を作ってみました。こちら です。2015-05-12
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