金属車輪は何を買えばよいのか?
Which manufacture do we select for 33" metal wheel replacements for HO cars?
前列は金属で、左から、さかつう、アトラス、プロト2000、ケーディー、インターマウンテン、エグザクト製品。後列はプラスチックで、左から、アサーン、MDC、ウォルサーズ製品
彼の地の巨大掲示板であるトレインオーダーズ・コムに質問が載りました。
「HOゲージのプラスチック車輪を金属製に取り換えたい。どこの製品を選べばよいか?」というのです。貨車や客車の車輪は近年、すべからく金属となりましたが、少し前まではアサーンでもMDC=ラウンドハウス、ウォルサーズでも、軒並みプラスチック製だったのです。当方も、たった今、精力的に交換の真っ最中でしたので、連中の話を興味深く読ませてもらいました。【画像はクリックで拡大します】
応答を総合すると、インターマウンテンが一番人気です。
インターマウンテン製は、軸も金属で、また徳用セットがあって安価。リボックスReboxx製品と製造所が一緒ということのようです。
プロト2000やケーディーは、軸がプラスチックだけれども不都合はない。ケーディーの踏面は塗装されていてレールを汚すが、一皮剥ければ問題はない。
アトラスは軸長が短すぎる。
‥‥てな辺りでしょうか。
実は、私の思いはちょいと違うのです。
以下、交換需要の大きな33インチ≒9.5㎜径について、述べてみたいと思います。36インチ=10.5㎜径は略同ですが、ちょっとだけ異なります。
まず、次の表をご覧ください。
これは手許にある製品を測ったものです。測定値は4軸分の平均で、「直径」はトレッド=踏面の中央で測っています。「フランジ高」は、フランジ部直径と車輪直径の差を2分した値です。「定価」は、数の入った徳用パックの値段で、インターマウンテンは100本入りを示し、1,200本入りだと0.65ドル=52円となります。
さて、ここで問題は、軸長です。
アサーンとMDCは、元が26.0mmなのですから、その前後を選ぶのがまずは順当といえます。
わが国の"さかつう"発売の長軸は、アサーン純正品よりも僅かに長いことを謳っていました。これは、純正品では台車に装着したときに軸方向のアソビが若干存在することに着目して、これを少なくするという効能があります。
装着して指で回すと、ほんとうに滑らかに美しく回転し続けます。
難点は、値段と入手難でしょうか。サイトには徳用パックも追加されて近日再発売と出ています。
私は幾ばくかの在庫を持っていて、"これは!"というモデルに装備しています。
それに対して、インターマウンテンは短めの25.7mmです。ですから、軸受の中で少しオドリます。ただ、それが"コロガリ"に影響するのか?というと、何とも言えません。
10数年前でしたか、シアトル近郊にあったエクスプレス・ステーションという模型店が売り出した車輪が、この25.7㎜でした。
この寸法のメリットは、ウォルサーズにも使えることです。同社は軸長25.7㎜を採用していて、26.0㎜グループでは底付きしてしまうことがあるのです。
エクスプレス・ステーションの徳用パックを買い込み、つい1年ほど前に払底した私の経験では、問題は無しです。ただ、車体高さが若干低めになるような気がします。
基本的な方針は、アサーンとMDCは26.0㎜グループとし、短いものが必要なときは、既に装着したエクスプレス・ステーション品と振り返ることとしています。
プロト2000(P2K)とケーディーは、ピボット軸端がプラスチックという点が気になります。熱伝導率が低いので焼き付きし易いはずではあるものの、そんな話を耳にしたことが無いので、モデルでの使用程度なら大丈夫なのでしょう。
特にケーディーは、ウォルサーズの通販で廉売されていますから、釣られて多用しています。目立たない色合いも気に入っています。
なお、車輪背面の形状に「リブド」と「フラット」があります。前者はチル車輪(アメリカ型鉄道模型大辞典を参照)を模していて、台車がベッテンドルフ型までの古い車に適合します。
また、この2社の車輪はダイキャスト製という鋳物で、表面が旋盤仕上げほどには滑らかではありません。私は気にならないものの、走行音に影響があるかもしれません。ケーディーはCODE 88が新発売となりました。
アトラスが、トレインオーダーズ・コムに「軸長が短い」と書かれてしまった理由は、2種類あるうちの短い方だけに注目されたためです。
実は、アトラスの33インチ車輪には2種類があります。「貨車用」と「カブース用」という名称で、それぞれ軸長は0.945インチ=24.0㎜と、1.02インチ=25.9mmです。
こんな大事なことが同社やウォルサーズのサイトには表示されていない点が問題ですが、私は台車から車輪を外して気が付きました。図面は徳用パックの裏に描かれていたものです。
測定値との差0.1mmは誤差でしょう。今、とりあえずこの100本入りを3つ買い込んでいます。
エグザクトの軸長25.5㎜は、アサーンに使うには短すぎると考えます。ただし、何かの役に立つこともありますから、確保しています。
なお、種別で「ファイン」の意味は、車輪の厚さ=タイヤ幅です。NMRA推奨規格でCODE 88、0.088インチ=2.24mmですね。
それに対して「スタンダード」はCODE 110、0.110インチ=2.79mmです。
一方、フランジ高さFlange Depthがそれぞれ0.023インチ=0.58mmと、0.025インチ=0.64mmとなるはずですが、こちらは高めに設定しているようです。
さかつうの車輪は、その間のCODE 93、0.093インチ=2.36㎜ということなのでしょう。
図と表は同推奨規格RP25からの引用です。
ここで、薄い車輪だとレールとレールの間に落ちてしまうことはないのか、と心配になります。手持ちのシノハラやカトーのカーブや分岐器を通したところでは、大丈夫でした。規格的にも軌間の関係はOKです。昔の木製道床はハンド・レイド(スパイク)ですから不具合の出る可能性はあります。ただし、分岐器のフログ欠線部で若干落ち込み代が増えます。これは承知の上ということの様です。【一部、誤解が無いように書き換えました。アメリカ型鉄道模型大辞典の「セミ・スケール車輪」の項をご参照ください。213-03-03】
私は、模型は模型、実物は実物、という立場で、脱線しない限りはタイヤ幅やフランジ高にそれほどの拘りを持っていません。
実物の車輪を調べると、幅が5.7188インチ=145mmです。0.066インチ=1.67㎜、すなわちCODE 66辺りがスケール通りということで、CODE 88を各社は「セミ・スケール」と呼んでいます。
次の図は、Car & Locomotive Cyclopedia 1997年版に掲載されている貨車用車輪です。旅客車や機関車とは異なります。
実は今回、これらをネタにして徹底的に論評するつもりをしていました。
どうしてプラスチック車輪を金属製に取り換えるのか、とか、脱線し易さとは何か、といった辺りですね。ところが、模型の車輪コンターが上手く写し取れないのです。
もちろん、写真に撮ったらいいわけですが、これが難物です。肝心のフランジの輪郭が出てきません。光の当て加減に何か工夫が必要なのでしょうね。
7年前に書いた「プラスチック車輪の功罪」という記事に、ネットから探し出した図を追加しておきました。
【追記1】右はヤマさんのコメントに追記したリボックス社の転がりテスト台です。
同社のサイトでは、この上で台車を転がして、行ったり来たりした回数を一つの目安として性能の良さをアピールしています。値段も40ドルとお手頃ですよ(笑) 2011-07-30
【追記2】MR誌のフォーラムでもPlastic to metal wheelsetsということで、議論が始まりましたね。アサーン・ブルーボックスの台車は、インターマウンテン製かプロト製への交換が定番ともいえる流れの中で、意外な点は、マイクロマークのトラックチューナー(左写真)で軸孔をサラうというファンが多いことです。そういう必要があるのでしょうか。2012-10-02
【追記3】パーツ箱の中からバウザー社の金属車輪が出てきました。入手は1995年頃だと思います。品番#40198、20個セットで定価19.95ドルです。注目の軸長は26.0mm、タイヤ幅は2.8mmですから、お勧めできます。ただし残念ながら、メーカーでもウォルサーズでも品切れです。アトラス・カブース用もこの記事を書いた少し後に品切れとなってしまい、残るは"さかつう"だけ。もう、こういう需要は無いのでしょうか。2015-11-18
【追記4】"さかつう"も33インチが完売となりました。なお、とれいん誌での製品紹介は1980年8月号p83で、4軸450円とあります。2017-04-01
【追記5】アサーン自体が別売している品番ATH90501"HO 33" Metal Wheelset, Long Axle (8)"が、ブルーボックスに最適の様です。8本セットの定価が9.98ドルと高めな点が難ですけれど、朗報です。リストにある"Announced July 2004"が正しいとしたら、不明を恥じなければなりません。「アサーンRTRの新40フィート・ボックスカー」をご覧ください。
我が国の模型店トレインデポの「常備を心がける駆動系パーツ」の中に、これが入っています。2017-05-01
【追記6】アトラスの予約カタログ2020年8-9月号に、久しぶりに車輪が登場しました。品番9190100が33インチ・カブース用で134.95ドル、品番9195100が36インチで146.95ドルです。実売価格はどうなるでしょうか。予約締切は10月14日です。2020-08-20
【追記7】バックマンの36”を購入した。12本で売価14.75ドル(別途送料)、1本1.23ドル=135円。軸長は25.6ミリ。Bachmann 42903 HO Scale Flat Back Wheel Sets 36" (12) 2021-05-30
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コメント
このRP25の表はおかしいと思いませんか。
code145と175では、(D'-P)≧R2の為、両者とも変曲点での接線の傾きが右肩上がり、あるいは垂直になります。
そう、code145ではフランジ角は90度になるでしょう。
code126では(D'-P)<R2になっているのでHOの方は気が付かないのでしょう。私が昔作ったRP25はこのcode126から拡大して作りました。
間違いが放置されるというのは、誰も見ていないからでしょう。もうすでに半分ゴミ箱の中に入ってしまったような推奨規格なのです。
>>たぶん、実際に製造された車輪ではR1とR2の間に直線が介在します。それにつけても、モデルのコンターを正確に描画してみたいものです。【ワークスK】
投稿: dda40x | 2011/07/28 09:26
こんにちは。インターマウンテンの車輪はさかつうに比べると軸端や踏面の仕上げが劣る感じです。八幡運転会でのオーバートン客車はさかつう車輪です。
インターマウンテンのキットを見たところ、添付のプラ車輪(軸もプラ)は軸長25.1mmのようです。先日六甲で買ったインターマウンテンの金属車輪は軸長25.5mmです。たくさんは測ってないですが。インターマウンテン貨車キットの台車はACCURAILブランド品で、インターマウンテン金属車輪に交換しても左右のガタがあります。さかつう車輪をはずしてACCURAIL台車にはめてみましたが、ガタなしでピッタりはまります。回転も抜群です。さかつう車輪予約しようかな・・・。
>>そう、"さかつう"は尖り具合も最高ですね。で、軸長に拘りたいならReboxxもお勧めです。33”車輪だけで0.950"=24.1mmから1.075"=27.3㎜まで、26段階も揃えています。値段も67円/軸で、おまけに転がりテスト台まで売っています【ワークスK】
投稿: ヤマ | 2011/07/30 15:25
こんばんは、
アトラスの #191000 Friction Bearing Caboose Trucks (33インチ)を1組買いまして、早速軸長を測ってみたら以下でした。
25.25 1軸
25.35 2軸
25.40 1軸
買ったままの台車に組み込んだ状態でも若干遊びがありますし、アサーンの台車ではガタガタでした。
アトラスの直販で買ったのですが、最近のが短くなってしまったのかもしれません。
以上お知らせします。
>>う~む。なかなか難しいものですね。尖がっていますから寸法を出し難いのは判るとして、バラツキにしては大きい数字かとも思います。この辺りが軸長を公表できない理由なのでしょうか。当方が紹介したものとは別の品番という可能性があります。寸法からすると“カブース用”とは言えないかも【ワークスK】
投稿: Brass_solder | 2011/09/21 21:11
去年まで中古車を買う事が多かったので、追記2に掲載されたトラックチューナーは必需品でした。金属車輪化しない時も、取り敢えずさらう事にしました。
最近のアサーンやウオルサーズの完成品の台車でも、彫刻機のクセか型の甘さのせいか、軸穴4カ所中1カ所は薄皮または削りカスがでます。
5両セットの貨車を3セットくらい買って、トラックチューナーでさらう前と後で、走行抵抗のようなのが測れると有効かどうかハッキリしたかもしれません。
唯一、新品のカトーの台車はさらう必要が無かったです。
>>皆さん、お持ちなのでびっくりしています。“年代物”を弄るには必需品といえるのでしょうか【ワークスK】
投稿: とやま | 2012/11/16 22:20